デジタルカメラグランプリ2021受賞インタビュー
お客様との距離を一気に縮め、飛躍を期す渾身の一作「LUMIX S5」。市場創造への意気込みをパナソニック山根氏に聞く
■進化する世界と生き方の変化に感じる大きな可能性
―― 昨年4月に「LUMIX GINZA TOKYO」を開設され、大変話題を集めましたが、現在はコロナ禍で、イベント開催も中止、延期が相次ぐなど、お客様がカメラに直に触れることができる機会が減っています。
山根 通常、ハイエンドのカメラはタッチ&トライコーナーをしっかりつくって体験いただき、「これいいよね」とお客様も購入意欲がだんだんと膨らんでいくものです。LUMIX GINZA TOKYOもそうした役割を担うスペースですが、コロナの影響で一時休館を余儀なくされ、ようやく再開したところです。
しかし、ニューノーマルの時代に、皆が触れるものにはあまり触れたくない心理も強く、ギャラリーにどのような役割を持たせられるか検討してきた結果、「LUMIXアカデミー」と命名した動画・静止画撮影教室を、10月からオンラインで開始しました。作品は事前にオンライン上でいただき、プロがコメントを返してくれるような新しいスクールのやり方にトライしていますが、たくさんの応募をいただき好評です。また、映像制作の工房用に使えないかとも考えており、お客様との双方向のコミュニケーションを新しいアイデアのもとに密にしていきたいと思います。
また、映像制作の自由度を高めるボックススタイルのミラーレス一眼「BGH1」を11月に発売しました。優れた動画性能とボックススタイルによるカスタマイズ性を備えた新しいコンセプトの商品で、BtoBを中心にした大きな可能性が期待されます。企業の中にはスタジオを自ら設け、そこからメッセージを発信するところも増えるなど、コロナ前から企画して進めてきた商品ですが、いいタイミングで提供することができました。特徴的なフォルムから私は“サイコロカメラ”と呼んでいますが、まさにどう転んでも目(芽)が出るに違いありません(笑)。
この商品もLUMIX GINZA TOKYOに展示して、いろいろな用途や可能性があるぞというところをお見せしていきます。静止画だけでなく、動画を含めてLUMIXがお役立ちできる領域を広げながら、皆様の期待にお応えしていく。そのメッセージを伝えていくこともLUMIX GINZA TOKYOの重要な役割のひとつ。お客様にいろいろな価値を提案していく空間にしていきます。
イメージングの世界はいろいろな技術が常に進化し、また、お客様も変化しています。これまでと同じひとつの面で見れば、カメラ業界は縮小するネガティブな印象を受けます。しかし、急速に進化する世界と人の生き方の変化に、私は大きな可能性を感じずにはいられません。LUMIX GINZA TOKYOでは将来へ目を向け、そうした可能性を試す実験工房的な要素も入れていきます。情報発信基地として新しいことにどんどんトライしていきます。ギャラリーの在り方そのものも時間とともにどんどん見直されていくのではないかと思います。
―― 年末商戦、そして、2021年へ向けての意気込みをお願いします。
山根 パナソニックはビデオカメラの事業を手掛けていますが、その前身がビデオで、ビデオの派生としてビデオカメラがあり、そのビデオカメラはまた民生用と業務用に分かれます。その後、デジタルカメラ、ビデオカメラ、放送系カムコーダーの部隊が一緒になりましたが、それぞれが有する技術やノウハウが融合されることで、他社にはない価値が生まれてくると確信しました。そのような風土が私たちにあり、パナソニックに息づくDNAがS5の商品化へとつながっています。
S5をはじめ、各社からも魅力あふれる新商品の発売が相次いでいますが、依然、厳しい市場環境にあります。市況が低迷し、コロナ禍に見舞われていますが、苦しい状況にあるからこそ見えてくるものを大事にして次につなげていくことが重要なのです。
私たちはカメラ業界では新参者がゆえに、変わることへの恐怖や抵抗感はもっとも小さいと思います。そこを強みにして、いろいろなことにチャレンジしながら、座して死ぬのではなく、変わって生き残っていきます。そのために必要なフットワークの軽さには自信があります。
カメラ市場活性化へお役立ちするべく、動画も静止画もしっかりと撮れる、フォルムや操作性を含めたLUMIXのアイデンティティをしっかりと確立し、2021年もお客様に認めていただける、驚きをもって迎えられる商品を提供して参りますので、ぜひ、ご期待ください。