<山本敦のAV進化論 第205回>
待望の96kHz/24bit対応 − 最新版aptX Adaptiveの実力を体験してきた
■96kHz/24bit対応へ。aptX Adaptiveのハイレゾ再生を体験
イヤホン・ヘッドホンの周波数特性、歪率の測定には人間の耳と耳内の環境を模したイヤーシミュレーター、ダミーヘッド、およびAudio Precision社のオーディオアナライザを使用する。
例えば左右独立型完全ワイヤレスイヤホンの測定を行う場合、イヤーシミュレーターにイヤホンのノズルを挿入して、音漏れが発生しないようにギャップを完全に埋めて密閉状態にする。同社が用いているのは高域50kHzまで測定ができるハイレゾ対応のイヤーシミュレーターだ。
機器をセットした後、オーディオ機器からテストトーンを再生する。PCのモニターに表示される波形を確認すると、96kHz/24bitのaptX Adaptiveコーデックでは20kHz以上の高周波成分が欠落することなくしっかりと再現されていることがわかる。一方、比較対象としたSBCコーデックによる再生時には、グラフを見てわかるとおり20kHz以上がカットされる。
Smartphone for Snapdragon Insidersを、aptX Adaptiveの96kHz/24bit音声の受信と再生に対応するクアルコムの開発用リファレンスモデルのワイヤレスイヤホン「QCC3056 RDP」に接続して、aptX Adaptiveによるハイレゾ再生を試聴した。期待していた通り、aptX Adaptiveコーデックで接続した場合には96kHz/24bitの音源が驚くほど生々しく再現される。弦楽器の倍音成分に豊かな厚みがあり、濃厚な躍動感に触れることができた。立体感あふれる音場にダイナミックな演奏が広がる。比べながら聴いてしまうと、やはりAAC/SBCのコーデックを選択した場合のサウンドが細く貧弱なものに感じられてしまう。
Smartphone for Snapdragon Insidersの場合、Bluetoothオーディオの設定に「Qualcomm aptX Adaptive設定」のメニューがあり、96kHz再生のトグルをオンにすると96kHz/24bit以上のハイレゾ音源が高品位に再生される。トグルがオフの状態だとaptX Adaptiveコーデックによる再生は48kHz/24bit止まりになるようだ。他の端末ではどのようなインターフェースになるのか、筆者も秋以降に発売されるSnapdragon Sound、またはaptX Adaptiveの96/24対応を実現した製品をハンドリングする機会にそれぞれ試してみようと思う。
■Bluetoothオーディオによるハンズフリー通話の音質を革新するaptX Voice
aptX Adaptiveコーデックのサブセットとして提供される「aptX Voice」は、スマホのBluetoothオーディオ機器をペアリングした状態で、より明瞭度の高い音声通話を実現するBluetoothハンズフリープロファイルの新技術だ。通話音声のサンプリングレートが、従来のmSBCコーデックによるHD通話音声の約2倍となる32kHz対応になる。
Cearのラボで試験評価機を使ったaptX Voiceの通話音声デモンストレーションを聞いた。8kHz(CVSD)のナローバンド、標準的な16kHz(mSBC)のワイドバンドHD通話の音声に比べて、aptX Voiceの音声は明らかにクリアで解像度が高い。声の輪郭が鮮明に浮かび上がり、質感も滑らかさが強調される。空間の広がりも生まれるので、イヤホンやヘッドホンを装着した状態での長時間に渡る音声通話の負担も軽減される。
まるで通話相手が目の前にいるようなリアリティに富んだハンズフリー音声通話を実現するBluetoothオーディオ機器は、仕事の効率化を図るツールとして定着したオンラインビデオ通話がより快適になるアイテムとして、これから大いに注目されるのではないだろうか。
CearではクアルコムのSoCが搭載するパワフルなDSPを活用した音質向上、マイクの指向性を制御する機能の実装など音づくり全般に関わるテクニカルサポートも提供している。今後Snapdragon Soundのプラットフォームから、信頼性と個性の両側より注目すべき製品が続々と生まれることを期待したい。