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ソンビへの熱い愛を語る一幕も

和氣あず未さん史上最もナチュラル! 『アイアムアヒーロー』はいつもと違う“普通”の声に注目!

公開日 2022/12/16 11:50 編集部:松永達矢
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音声が付いた電子コミック、「ボイスコミック」作品として、『アイアムアヒーロー』の配信が決定した。数々の漫画賞にランクインし、実写映画化もされた人気作品だが、ボイスコミック化は今回が初となる。

ボイスコミック版『アイアムアヒーロー』配信に際して、ファイルウェブでは、原作者の花沢健吾さんと、主人公の鈴木英雄を演じる関智一さんによる対談の模様と、主人公・英雄の彼女、黒川徹子(てっこ)を演じる今井麻美さんのインタビューをお届けしたが、今回はキーキャラクターの一人である、早狩比呂美を演じる和氣あず未さんインタビューの模様をお届け!

これまで演じてきた多くの役柄のなかでも珍しい “普通の” 女子高生を演じる上でのポイントや、「ゾンビ物」というジャンルに感じる溢れんばかりのこだわりなど、ボイスコミック版『アイアムアヒーロー』にまつわる様々なことを伺ってみた。



漫画ならではの表現技法と声あての難しさ。『アイアムアヒーロー』アフレコ秘話



───本日はよろしくお願いします! 今回のボイスコミックはパラパラ漫画のように動画化したものではなく、実際に漫画として読み進めるという作りになっていますが、こういったメディアにはこれまで仕事として触れる機会はございましたか?

和氣あず未さん(以下:和氣) 漫画に声をつけた動画コンテンツは何度か録らせていただきましたが、「漫画にそのまま声がのる」という形は初めてだったので、収録する前に「いつものとは違うんだ!」って驚いちゃいました(笑)。

───では、いつものアニメへのアフレコなどと比べて難しく感じたポイントがあれば教えていただけますか?

和氣 難しいところと、やりやすいと思ったポイントの両方ありました! 先にやりやすかった部分として、絵が完成する前のアニメのアフレコのときは、棒人間に向かって声をあてていまして、表情とかもすごく簡単な走り書きのこともあるんですが、今回の収録では完成した漫画を台本として読んでいく形式だったので、キャラクターの感情も掴みやすかったです。

例えば、原作のあるアニメ化作品の場合、同じシーンでも原作とアニメでキャラクターの表情が違っていて、「どちらに合わせたらいいんだろう?」みたいな悩みがあるんです。でも今回は原作漫画そのままなので、「この顔!」って決まっていて、お芝居をする上でも感情を乗せやすかったですね。

難しかったところでいうと、漫画だからこそ「動きがない」という部分です。アニメだとキャラが話しながら座ったり移動したりという動きの経過がわかりますが、漫画だと、さっきまで立っていたのに次に登場したコマでは座っているみたいな感じで、「この子はこのセリフのどこの瞬間で座ったのかな?」みたいな解釈を自分の中で探していく必要がありました。

───立っているときと座っているときでは、やはり演技に違いがあるということでしょうか?

和氣 誰かと喋っているときに同じ目線で喋るのか、ちょっと上を向いて喋るのか、とかで発声が変わってくるんですよね。アニメだと映像として絵が連続しているので「今この子は上を向いて喋ってるな」ってわかるじゃないですか? 漫画だと絵がなくて吹き出しだけで出演しているコマなんかもあったりしますよね。

そのときに「このキャラクターはどこを向いて喋っているんだろう?」と思われちゃうのも嫌なので、わかりやすく1mくらい離れている人に話しかけているとか、後ろの人に話しているとか、そういう距離感と動きをお芝居に乗せるっていうのが、漫画ならではの難しさだったと思います。

───まさに演じ手ならではの観点ですね…ありがとうございます。ちなみに今井麻美さんへのインタビューの際に、今回は台本として文字起こしされたものと、漫画そのままのものの両方が用意されていると伺いましたが、今回は漫画の方を台本に使用されたということですか?

和氣 はい、漫画の方を読んでいます! キャラクターが喋っているときはそのセリフを喋りましたが、喋っていない顔だけのシーンとか、他のキャラクターが話しているのを聞いている時のコマにも、入れられるところは全部入れてしまおうと思ったので、カットされているかもしれませんけど、表情が見えるところは全部声を入れました!

でも、これもすごく難しかったです。漫画でアップの顔をたくさんいただいているので表現をつけたいという思いと、息遣い一つでも「同じ息になってしまったらつまらない」というのが自分の中にありました。“息アドリブ” で全部違う表現になるようにちょっとずつ変えていくことを意識しましたが、息だけのシーンが多くって(笑)。

───アフレコ時に息を入れる、入れないという判断は和氣さんに委ねられていたのでしょうか?

和氣 そうですね、特に何も言われなかったので「間違ってなかったらいいなあ」と思いつつ、そこは任せていただきました。頑張って入れられるだけ入れたので、もしかしたらカットされている部分もあるかもしれませんけど、完成が楽しみなところでもありますね!

生々しさこそ作品のポイント。関さん、今井さんの演技に驚き



───この取材時点では、和氣さんはご自身の出演パートの収録を終えたばかりとなりますが、実際にボイスコミックを聴いてみての感想を教えていただけますでしょうか?

和氣 第1巻を聴かせていただいたんですが、やっぱり英雄を演じる関さんのお芝居が面白いなあって(笑)。事前に関さんが演じられることは知っていたんですけど、私の知っている関さんはさわやかなお声が得意なイメージがあって、何となく自分の頭の中で「こういう感じなのかな〜」というイメージがありましたが、英雄は本当にダメそうな感じでしたね(笑)。

ただ、関さんが演じられた「思ったよりダメそう」なお芝居が本当に上手で、お芝居のニュアンスも原作の絵とマッチしたナチュラルな表現で、漫画のコマを見ていても、耳で聴いていても世界観にのめり込めそうな感じがしました。あとは、英雄と掛け合いをする、今井さん演じるてっこさんと英雄との絡みが生々しかったです(笑)。


でもその生々しさっていうのは、綺麗すぎないナチュラルなお芝居に通じるところだなって。聴いていてこちらが思わず「おお〜!」となってしまうくらいがちょうど良いと思います。お二人の掛け合いは私からもぜひ聴いていただきたいポイントの一つです。本当に素晴らしいです!

あとコンテンツとしては自動ページ送りもできますけど、実際の漫画のように自分の指でページを捲るのにあわせて声が聴こえてくるっていうのは、すごく新鮮で面白かったです。

アニメなどが好きな人なら、自分の頭の中で漫画を読んでいるときに好きな声優さんで脳内再生されるってあると思うんですけど、そういう感覚で読んでみても、耳で聴いてみても楽しんでいただける作品になったんじゃないかなって思います。

自分史上最ナチュラル。「普通の女子高生」を演じる難しさ



───『アイアムアヒーロー』という作品には、今回のボイスコミックで初めて触れたのでしょうか?

和氣 漫画は収録にあたって初めて読んだんですけど、大泉洋さんが主演された映画は以前に見ていました。 私自身ゾンビ系の作品が好きなので、すごく面白かったです! でも今回はあくまで漫画作品のボイスコミック化なので、映画版のことは一旦置いておいて、漫画のことだけを考えて臨ませていただきました。

───和氣さんが『アイアムアヒーロー』で演じられた早狩比呂美は、原作3巻までの描写ですと「どこにでも居るような女子高生」といったイメージですが、演じる上で意識したことがあれば教えてください。

和氣 学校でもグループから仲間外れにされていたり、いじめっぽいことに遭っていたり…という背景があるので大人しめで、それでもちゃんと自分の意見も言えるような、本当に普通の女子高生というのを意識しながらお芝居しました。

主人公の英雄は癖の多いキャラですが、現場に行って関さんの声が当てられたボイスコミックを聴いて、「こんなナチュラルなお芝居で来るんだ」って思ったので、私もナチュラル寄りのお芝居で臨みました。

ただ「癖がない」というところは難しく感じましたね。どちらかといえばこれまでは癖のある、アニメ寄りのお芝居が多く、ナチュラルな演技をするキャラクターが珍しかったんです。練習しすぎるとどうしてもアニメ寄りのお芝居になってしまうので、あえて作りすぎないように、練習もしすぎないようにして収録しました。

だから比呂美ちゃんの声は、私の普段のお仕事とは発声からもう全然違う気がします。そういったところも、ぜひ注目してもらいたいですね!

───その作りすぎないように意識した箇所について、特にここというところを教えていただけますか?

和氣 森の中で独り言を言うセリフがあって、アニメではポツポツ喋って「聴かせる」ように表現することが多いように思うんですけど、今回は本当にただ女子高生が一人でボソボソ喋っているようにしてみました。漫画がベースになっているからこそ、目で追えるセリフの文字があるからこそできた表現ですね。

───ちなみに、関さん、今井さんはお二人とも、演じられたキャラクターにそれぞれ共通点があって、フラットに役に入り込めたと仰っていました。和氣さんとしても、ご自身とキャラクターに共通する部分は感じられましたか?

和氣 仕事柄「キラキラしてるんでしょ?」と思われがちですけど、私も本当に普通の人間なので、これまで普通に暮らしてきて、比呂美ちゃんみたいに疎外されたなあという経験はないですが、割と一人が好きだったりして、でもそんなに寂しくない。「この子もどこかに寂しさはあるのかな」と思いつつ、強い部分はある子なので、「一人でも行動できる」という部分は結構似ているなって思います。

あとは、死んでしまっている人を目の前にしても普通にしていられるのもこの子の強さですよね。割りと私も何かあっても冷静でいられるので、そういうところも似ているかもしれません。

「声優あるある?」日常に潜む勘違い



───原作に関連した質問ですが、作品内で比呂美が「英雄を自殺志願者と勘違いして説得する」というシーンがありますが、これまでの和氣さんの人生の中で勘違いがキッカケで話が食い違ったようなエピソードがあれば教えて下さい。

和氣 私が勘違いしたわけでは無いんですけど、宅配業者の方とのやり取りで一つありますね。お仕事柄、配送先住所の名前を別名で登録しているので、宅配業者の方が「あと何分で伺います!」みたいなお電話を入れてくれたときは、その別名でやり取りをしているんです。

でもある時、たまたま事務所から送られた荷物が「和氣あず未宛」になっていて、配送業者の方に別名を名乗っている所為で「すいません…和氣あず未さんって方と一緒に住んでいるんですか…?」と(笑)。

混乱を招かないように「私です。それ」とお返事したところ、「あっ、そうなんですね! 別名義的なものなんですね!」と反応されまして、お電話からしばらくして荷物を受け取るために業者の方と対面した時に「和氣あず未というお名前で、お店で何かされているんですか?」という風に言われちゃいまして…(笑)。自己紹介するのも恥ずかしい話なので、流れで「あっ…そうです」と言っちゃったんですけど、「あぁ〜そういう風に思われるんだなあ〜」としんみりしちゃいました(笑)。

まぁ、確かにお仕事も時間帯がバラバラですし、いつも私服ですから、配送業者の方が「何の仕事をしているんだろう?」と思われるのもわかるんですよね。きっとエリア担当とかで同じ人がお届けに来ることが多いので、ずっと勘違いされてるのかなーと思った、というお話でした。

「差し入れにイヤホン」和氣さんとオーディオの意外な接点



───我々はオーディオやビジュアル機器を中心にご紹介しているメディアなのですが、和氣さん自身はこんなイヤホンやヘッドホン、スピーカーを使っているなど、普段お使いの音響機器にこだわりなどはございますか?

和氣 今までは無かったんですけど、ソロアーティストデビューしてからは、アユートさんがイヤモニを作ってくれたり、それ以降何かあるごとにイヤホンをいただいたりしていまして。この前もライブの差し入れに「寝ながら使っても辛くならないイヤホン」をいただきました!

いまはたくさんイヤホンやヘッドホンがある状態なんですが、いただいたものがどういった物かまで完全に把握して使っているわけではないんです。ただどのモデルも「めちゃくちゃ音が良い!」って思いますね。

───「差し入れでイヤホン」という概念にいささか驚いております。

和氣 たっくさん貰いますよ!(笑) 誕生日のときには、ワイヤレススピーカーが届いたりしまして、ありがたく使わせていただいています。テレビで映画を見ていると、BGMがすごく大きく、セリフが小さく聴こえる感じになってしまって、セリフを聴き取るために音量を大きくすると突然のSEに「うおあ〜!」ってなってしまうことがあるので、スピーカーを後ろの方に置いて映画館っぽい雰囲気を楽しんでいます!

普段遣いのイヤホンについてはコラボした縁もあって、ANIMAさんの「ANW01」(現在はアユートからピクセルに取り扱いが変更)で音楽を楽しんでいます。お仕事の音声チェックのようなときには、有線のAZLAさんのものを使わせていただいています。

「なりたいよりも倒したい!」和氣さんのゾンビに対する想い



───本作『アイアムアヒーロー』もジャンル的には “ゾンビもの” だと思うのですが、以前コラボされていたファッションアイテムもゾンビをフィーチャーしていたり、それこそシューティングマーカーの意匠もあったり、プレイされているゲームの本格度合いが窺えます。

和氣 昔から『バイオハザード』が好きで、小さい頃はお兄ちゃんがやっているのを横で「すごいな〜」って見ていて、学生のころには自分でプレイするようになって、ゾンビ系とかホラー系にハマってしまって…。あと「ゾンビが好き」というよりは「ゾンビを倒したい」という気持ちが強いですね。グロ耐性もある方だと思います。

───走る系ゾンビとゆっくり系ゾンビですとどちらがお好みですか?

和氣 ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! 映画だと走る系ゾンビですけど、ゲームだと走る系ゾンビは本当嫌ですね。アイツら本当、弾に当たってくれないんですよ! それこそ『バイオハザード』も最初はゆっくりな方々が多かったですけど、シリーズを重ねるごとに走ってきたり、ゾンビが銃使ってきたり、ちょっと強くなり過ぎてんじゃないか〜?って(笑)。でも、どんなゾンビでも私は好きです。

───ちなみに映画作品ではこんなゾンビ系作品が好きみたいなのはありますか?

和氣 近年だと韓国映画のゾンビものが強い感じがしますね! もちろん日本のゾンビ映画とか欧米のゾンビ映画も面白いですけど、韓国の役者さんのお芝居がめちゃくちゃすごくて、特にゾンビの「なんでこんな気持ち悪く動けるの」というお芝居に目を奪われてしまいます! 韓国のゾンビ作品でいうと最近は『今、私たちの学校は…』が良かったです。『新感染 ファイナル・エクスプレス』も外せないですね!

自分のナチュラルな演技を良い音で聴いて欲しい!



───先程、オーディオ機器まわりのお話を聞かせていただきましたが、このボイスコミックも、音が重要な作品だと思います。こういったコンテンツをより良い音で体験することで、どんな楽しさが生まれると思いますか?

和氣 ぜんぜん違う楽しさが生まれると思います! もちろんスマートフォンのスピーカーから出てくる音も良さがあると思いますが、イヤホンとかヘッドホンとかで楽しんだ方が、外の音もシャットアウトできて、より作品世界にのめり込めるんじゃないかな、と。 普段から作品をファンの方々に見ていただく際には、イヤホンやヘッドホンで聴いてみて欲しいと思っています!

そもそも、アニメもゲームも良い音に越したことはないですからね! 私自身もこだわりのなかった人だったんですけれど、良いイヤホンを体験したらぜんぜん違うって分かりました。それをみんなにも分かっていただいて、私の感覚を追体験してもらればなって思います!

───それでは最後に、本インタビューを読まれている方にメッセージをお願いします!

和氣 ここまで読んでくださいましてありがとうございました ! 私もゾンビものがすごく大好きなので、『アイアムアヒーロー』で比呂美ちゃんという役をいただけたのがすっごくすごく嬉しかったですし、その分収録も緊張しながらもとても楽しめました! 早く皆さんに聴いていただきたいなという気持ちでいっぱいです、ぜひよろしくお願いします!

───本日はありがとうございました!



『アイアムアヒーロー』


原作     :花沢健吾
作品形式   :ボイスコミック
声の出演   :関智一、今井麻美、和氣あず未ほか

<あらすじ>
主人公・鈴木英雄 は、35歳の漫画家アシスタント。
現実への不満や将来への不安を抱え、恋人の黒川徹子に対しても苛立ちを募らせる。
ある日、英雄が徹子のアパートを訪ねると、変わり果てた姿の彼女と対峙することに。
謎の感染症により生きる屍となった徹子は、ドアを噛み千切り、狼狽する英雄に襲い掛かる。そして、街へ飛び出した英雄の目の前には衝撃の光景が ……!
散弾銃を手に首都圏から逃れた英雄は、富士の樹海で制服姿の女子高生・ 早狩比呂美 と出会う。未曽有のパンデミックに見舞われる中、英雄はヒーローになれるのか!?

●配信先

マンガアプリ『comipo』
APP Store  https://apps.apple.com/jp/app/comipo/id1591548181
Google Play https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.vivion.comipo

WEBサービス『DLsite comipo』
https://www.dlsite.com/comic/

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