<岩井喬のハイエンドショウレポート(1)>2007年春・注目のハイエンドオーディオを聴く
「ハイエンドショウトウキョウ2007スプリング」が東京・有楽町にて11日に開幕した。今回はオーディオライターの岩井喬氏が、ショウで発見した注目製品のサウンドの魅力をレポートする。
■東志:サーウィンベガ「VE-15」で聴くロックサウンド
先頃販売が開始された米サーウィンベガ社のスピーカー試聴が行われていた。航空科学エンジニアであるジーン・サーウィンスキー氏が興したメーカーであるが、70年代ローリングストーンズやデビッド・ボウイのPAサプライヤーとしても活躍していた。黒いエンクロージャーにレッドシールウーファーの赤いエッジ部が強い主張を放つ。
トップモデルである「VE-15」をトライオード「TRV-35SE」でドライブし、ロック・ポップス中心のソフトを用いた試聴を行っていた。最近では少ない38・ウーファーを搭載した3ウェイモデルであり、スケール感の大きい、押し出し感の強いロックサウンドが本機の一番の魅力であろう。能率も95dBと高いので、今回試聴で用いていた管球アンプとの組み合わせであっても何の心配もなくその実力を発揮できるのではないか。大型スピーカーとしては価格も1本144,900円(税込)ということでリーズナブルに抑えられているところもユーザーライクである。
■ヘビームーン:PMC「EB1」のサウンドがこだわりの再生環境で楽しめる
ヘビームーンのブースでは既報でもお伝えしたPMC「EB1」の出展が目を惹く。スタジオユースの「IB1」をホームユース用にリファイン。突き板仕上げのフロアスタンド型としたモデルである。
試聴にはCDトランスポートをエソテリック「P-0」とし、同社で扱っているdcs「974」でPCM信号をDSD信号にアップコンバート、続いて192kHz/24bitDACである「955」でアナログ変換するというこだわった環境を構築している。そしてマスタークロックには「995」が用いらていた。試聴にはロック・ポップス盤中心に行われ、「アイディア・オブ・ノース」ではクッキリ空間に浮き立つ女性ボーカル表現と量感溢れるベースが融合したサウンドが特に素晴らしく感じた。スタジオモデルらしく、声の帯域である中域にウェイトを持たせた高解像度なサウンド傾向。ロックサウンドでも難なくこなす印象だ。
またハイランドのスピーカーのニューモデルも試聴できたのだが、特にラインナップ中一番小型である、「SEIS1201」のサウンドには驚いた。その小さなサイズからは想像できないほど充実した表現力を持っており、その実力には目をみはるばかりだ。おそらくサラウンド用途にも最適といえるが、本機を主軸にした小型かつスタイリッシュなピュアオーディオのシステム作りも魅力的に感じる。鮮度の高いギターサウンドはとても好感が持てた。
■バラッド:アルテック・ランシングの流れを組む「604H-II」
バラッドのブースでは今回初めて出展された「604H-II」が一番の目玉となるだろう。アルテック・ランシングの名ユニットであった38cm同軸ユニット604をGreat Plains Audio(以下GPA)社が復刻。このGPA社とは、アルテック・ランシング社のスピーカーデザイナーとして活躍してきたBill Hanuschak氏が中心となって立ち上げた新進メーカーである。この「604H-II」をはじめ、新たに過去の名ユニットの復刻を計画しているそうだ。
アルテックの大型ユニットのシステムは幅もあり、ホーム用としては敷居の高い印象もあったが、本機は60リットルという大容量を持たせつつも、横幅を抑えたフィンランドバーチによるキャビネットを採用している。試聴では管球アンプでドライブしていたが、いかにも耳なじみの良い親和性の高いサウンドで、ゆったりとした気分で聴くことができた。ふくよかな中低域と、同軸ならではの定位感良いボーカル表現は魅力が高く、小田和正の曲が試聴でかかった時には、その艶やかなサウンドに足を止める来場者も多く見受けられた。
■DYNAUDIO:パワードモニター「MC 15」の登場に期待が高まる
DYNAUDIOのブースではPCと組み合わせてデスクトップでも使えるように設計されたパワードモニター、「MC 15」の試聴を行っていた。15cmウーファーと2.8cmトゥイーターによる2ウェイで50W×2のアンプを内蔵したモデルだが、PCサイドにおいて使うだけではもったいないほど、しっかりとしたサウンドを提供してくれる。サイズ以上に量感ある低域と、的確な音色表現はモニタースピーカーの方向性に近い。ひとつの提案としてiPodと接続したパターンでも試聴を行っていたが、安定したバランスの良いサウンドは、どんなソースであってもその良い部分を引き出してくれるような印象を持った。実際の販売はもう少し先となるようであるが、PCを用いた音楽制作の現場や省スペースでのオーディオライクな環境を作る上ではもってこいのスピーカーであると感じた。
同時に出展されていた「Audience 42 SAT」は逆台形スタイルで、上部にウーファーを配置した目を惹くデザイン。コンパクトで適度な大きさの密閉型となるので、制動感の効いた音色を好むユーザーの人気を得るモデルとなるのではないかと感じた。
■コニシス研究所:同社のハイエンドラインナップに新しく加わった「TYRシリーズ」
スタジオ用のシステム開発で実績を持っている同社のハイエンドラインナップに、比較的ローコストとなる新製品TYRシリーズが加わった。1Uサイズのプリアンプ「Tyr1213」とパワーアンプ「Tyr1214」は、当初パネルデザインが多少異なるものだったそうであるが、揃えてセットするときの見映えも考慮してボリュームなどの配置を揃えることにしたという。
さらに「Tyr SIDE STONE SET」という2種類の大理石による、サイドストーンとTyrシリーズを組み合わせたセットも用意される。一台一台手作りとなるため「セットで577,500円という価格設定はギリギリなんですよ。」と小西社長は笑顔で説明してくださった。そのサウンドはDCアンプ構成によって透明度のある高解像度な音を届けてくれた。落ち着きと安定感も兼ね備え、空間の静けさや優しい表現も得意とするようで、生の音をキレイに表現したいという同社のポリシーにも通ずる、描写力の高いサウンドを体感できた。
■Sルームの高音質ソフト販売コーナー
高音質CD販売コーナーでは、xrcdや重量盤LPなど、各方面で人気の高い高音質ソフトの試聴・販売が行われている。ユキムのコーナーではおなじみのモービルフィデリティ(以下、MFSL)盤のゴールドCDやSACD、同じくリマスター・ゴールドCDレーベル、DCCで知られるマスタリングエンジニア、スティーブ・ホフマンが再び手がける高音質レーベル、オーディオフィデリティのゴールドCDも販売されていた。
ともに第一世代のマスターテープを用いた独自技術のリマスタリングが知られており、オリジナルサウンドを尊重し、安易に音圧を稼ぐような処理を行っていないところに好感を持てる。筆者も10年以上MFSL盤の愛好家だ。昨年イベント内では「メガデス」のタイトルを販売したところ、会期中に持ち込んだものは売り切れてしまったそうであるが、今回はプログレッシブ・ロックの名盤「イエス/こわれもの」が登場。音質は既発・紙ジャケ版リマスターと較べ、スティーブ・ハウのギターは粒立ち良く、ビル・ブラッフォードのドラムサウンドも豊潤である。期間限定生産盤なのでお好きな方はお早めに、とのことだ。
(レポート:岩井喬)
■東志:サーウィンベガ「VE-15」で聴くロックサウンド
先頃販売が開始された米サーウィンベガ社のスピーカー試聴が行われていた。航空科学エンジニアであるジーン・サーウィンスキー氏が興したメーカーであるが、70年代ローリングストーンズやデビッド・ボウイのPAサプライヤーとしても活躍していた。黒いエンクロージャーにレッドシールウーファーの赤いエッジ部が強い主張を放つ。
トップモデルである「VE-15」をトライオード「TRV-35SE」でドライブし、ロック・ポップス中心のソフトを用いた試聴を行っていた。最近では少ない38・ウーファーを搭載した3ウェイモデルであり、スケール感の大きい、押し出し感の強いロックサウンドが本機の一番の魅力であろう。能率も95dBと高いので、今回試聴で用いていた管球アンプとの組み合わせであっても何の心配もなくその実力を発揮できるのではないか。大型スピーカーとしては価格も1本144,900円(税込)ということでリーズナブルに抑えられているところもユーザーライクである。
■ヘビームーン:PMC「EB1」のサウンドがこだわりの再生環境で楽しめる
ヘビームーンのブースでは既報でもお伝えしたPMC「EB1」の出展が目を惹く。スタジオユースの「IB1」をホームユース用にリファイン。突き板仕上げのフロアスタンド型としたモデルである。
試聴にはCDトランスポートをエソテリック「P-0」とし、同社で扱っているdcs「974」でPCM信号をDSD信号にアップコンバート、続いて192kHz/24bitDACである「955」でアナログ変換するというこだわった環境を構築している。そしてマスタークロックには「995」が用いらていた。試聴にはロック・ポップス盤中心に行われ、「アイディア・オブ・ノース」ではクッキリ空間に浮き立つ女性ボーカル表現と量感溢れるベースが融合したサウンドが特に素晴らしく感じた。スタジオモデルらしく、声の帯域である中域にウェイトを持たせた高解像度なサウンド傾向。ロックサウンドでも難なくこなす印象だ。
またハイランドのスピーカーのニューモデルも試聴できたのだが、特にラインナップ中一番小型である、「SEIS1201」のサウンドには驚いた。その小さなサイズからは想像できないほど充実した表現力を持っており、その実力には目をみはるばかりだ。おそらくサラウンド用途にも最適といえるが、本機を主軸にした小型かつスタイリッシュなピュアオーディオのシステム作りも魅力的に感じる。鮮度の高いギターサウンドはとても好感が持てた。
■バラッド:アルテック・ランシングの流れを組む「604H-II」
バラッドのブースでは今回初めて出展された「604H-II」が一番の目玉となるだろう。アルテック・ランシングの名ユニットであった38cm同軸ユニット604をGreat Plains Audio(以下GPA)社が復刻。このGPA社とは、アルテック・ランシング社のスピーカーデザイナーとして活躍してきたBill Hanuschak氏が中心となって立ち上げた新進メーカーである。この「604H-II」をはじめ、新たに過去の名ユニットの復刻を計画しているそうだ。
アルテックの大型ユニットのシステムは幅もあり、ホーム用としては敷居の高い印象もあったが、本機は60リットルという大容量を持たせつつも、横幅を抑えたフィンランドバーチによるキャビネットを採用している。試聴では管球アンプでドライブしていたが、いかにも耳なじみの良い親和性の高いサウンドで、ゆったりとした気分で聴くことができた。ふくよかな中低域と、同軸ならではの定位感良いボーカル表現は魅力が高く、小田和正の曲が試聴でかかった時には、その艶やかなサウンドに足を止める来場者も多く見受けられた。
■DYNAUDIO:パワードモニター「MC 15」の登場に期待が高まる
DYNAUDIOのブースではPCと組み合わせてデスクトップでも使えるように設計されたパワードモニター、「MC 15」の試聴を行っていた。15cmウーファーと2.8cmトゥイーターによる2ウェイで50W×2のアンプを内蔵したモデルだが、PCサイドにおいて使うだけではもったいないほど、しっかりとしたサウンドを提供してくれる。サイズ以上に量感ある低域と、的確な音色表現はモニタースピーカーの方向性に近い。ひとつの提案としてiPodと接続したパターンでも試聴を行っていたが、安定したバランスの良いサウンドは、どんなソースであってもその良い部分を引き出してくれるような印象を持った。実際の販売はもう少し先となるようであるが、PCを用いた音楽制作の現場や省スペースでのオーディオライクな環境を作る上ではもってこいのスピーカーであると感じた。
同時に出展されていた「Audience 42 SAT」は逆台形スタイルで、上部にウーファーを配置した目を惹くデザイン。コンパクトで適度な大きさの密閉型となるので、制動感の効いた音色を好むユーザーの人気を得るモデルとなるのではないかと感じた。
■コニシス研究所:同社のハイエンドラインナップに新しく加わった「TYRシリーズ」
スタジオ用のシステム開発で実績を持っている同社のハイエンドラインナップに、比較的ローコストとなる新製品TYRシリーズが加わった。1Uサイズのプリアンプ「Tyr1213」とパワーアンプ「Tyr1214」は、当初パネルデザインが多少異なるものだったそうであるが、揃えてセットするときの見映えも考慮してボリュームなどの配置を揃えることにしたという。
さらに「Tyr SIDE STONE SET」という2種類の大理石による、サイドストーンとTyrシリーズを組み合わせたセットも用意される。一台一台手作りとなるため「セットで577,500円という価格設定はギリギリなんですよ。」と小西社長は笑顔で説明してくださった。そのサウンドはDCアンプ構成によって透明度のある高解像度な音を届けてくれた。落ち着きと安定感も兼ね備え、空間の静けさや優しい表現も得意とするようで、生の音をキレイに表現したいという同社のポリシーにも通ずる、描写力の高いサウンドを体感できた。
■Sルームの高音質ソフト販売コーナー
高音質CD販売コーナーでは、xrcdや重量盤LPなど、各方面で人気の高い高音質ソフトの試聴・販売が行われている。ユキムのコーナーではおなじみのモービルフィデリティ(以下、MFSL)盤のゴールドCDやSACD、同じくリマスター・ゴールドCDレーベル、DCCで知られるマスタリングエンジニア、スティーブ・ホフマンが再び手がける高音質レーベル、オーディオフィデリティのゴールドCDも販売されていた。
ともに第一世代のマスターテープを用いた独自技術のリマスタリングが知られており、オリジナルサウンドを尊重し、安易に音圧を稼ぐような処理を行っていないところに好感を持てる。筆者も10年以上MFSL盤の愛好家だ。昨年イベント内では「メガデス」のタイトルを販売したところ、会期中に持ち込んだものは売り切れてしまったそうであるが、今回はプログレッシブ・ロックの名盤「イエス/こわれもの」が登場。音質は既発・紙ジャケ版リマスターと較べ、スティーブ・ハウのギターは粒立ち良く、ビル・ブラッフォードのドラムサウンドも豊潤である。期間限定生産盤なのでお好きな方はお早めに、とのことだ。
(レポート:岩井喬)
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