【岩井喬のA&Vフェスタ レポート(1)】ビクター/ソニー/TADラボのオーディオ展示を聴いた
大盛況の後に幕を閉じた「A&Vフェスタ2008」。今回はライターの岩井喬氏が会場を訪問し、注目した製品・展示のいくつかをお届けしたいと思う。
■ビクター〜新スピーカー&アンプシステム〜
今回の『A&Vフェスタ』一番の注目デモがビクターの新スピーカーとアンプであろう。昨今“ウッド・コーン”スピーカーで独自のスピーカー作りを確立した感のある同社であるが、それと同時に取り組んできている振動板技術がある。それが“オブリコーンと金属製振動板の融合”というテーマであるが、これまで、メタルコーンの素材として同社が選んできたのはアルミ素材であった。しかし今回採用したのは、現在のメタル素材で一番人気のマグネシウムである。トゥイーターもマグネシウム・ドーム型ユニットを用いているが、成型・大口径化が難しいマグネシウム素材によるオブリコーン・ウーファーの採用は英断といえる。そのサウンドは非常に滑らか、かつナチュラルな傾向。定在波発生を抑えた台形スタイルのキャビネットや、振動発生をとことん抑えたユニット保持構造など、トータルでの音響調整効果によるものであると思われるが、ウッドコーン・スピーカーとは違うベクトルの瑞々しいサウンドは大変魅力的なものであると感じた。
同時に発表された新型・デジタルアンプ試作機は、キャビネットこそまだ通常のアルミケースに収められたものであるのだが、歪みの低減、ノイズの除去、スピーカー駆動力の向上、及び大電力電源の搭載という、基本中の基本ではあるが、敢えてその課題に正面からぶつかっていったのだという。同社の掲げる“原音探求”というキーワードを実現するべく、「昨今縮小気味であったピュアオーディオ部門でも再び“音のビクター”を復活させようという心意気で臨んでいる」と、設計者である渡邊健司氏は語る。ゼロクロス付近のリニアリティもA級アンプ並みに優れたものにしたという今回のデジタルアンプ。高域に向け非常に伸び伸びと澄み切って、デジタルっぽい硬さを一切感じない、透明感溢れるサウンドであった。
■ソニー〜ピュアオーディオ・ルーム
ソニーのリスニングルームはビジュアル系とオーディオ系に分かれていたのだが、本レポートではオーディオ系試聴室について細かく見ていきたいと思う。まずメインの出展となるのは、前回の『A&Vフェスタ2006』では試作機の展示だけだった「SS-AR1」が、今回はDRシリーズのアンプ/SACDプレーヤーとの組み合わせによる同社最高峰のサウンドが味わえるリスニング・セッションである。「AR1」のナチュラルで豊かな響きは非常に有機的であるのに対し、DRシリーズは対象的に理知的に作り上げられた、アルミボディによる精悍で無機質なイメージを受ける。しかしこの二つの流れが融合したサウンドはとても心地良いもので、非常にバランスの取れた音質である。今までのモニター系にも通じるソニーサウンドとは違った、新しい魅力に溢れるものと感じる。なお「SS-AR1」を購入された方にはフロントバッフルをくりぬいた特性オーナメントもプレゼントされるということで、同時に展示もされていた。塗装処理やソニーロゴの加工も全て実機と同様に施された、手の込んだものである。オーナメント背面には「SS-AR1」の開発にあたった、メイン設計者・加来氏のサインも記されている。同スペース内には参考出品として、キャビネットの美しい木目がはっきりと分かるナチュラル仕上げの「SS-AR1」もお披露目されていた。
参考出品の新提案スピーカーシステムとして、円柱状のポールスタイル・無指向性スピーカーの出展も行われていた。クリアーチューブの頂点部に高域ユニット、チューブと本体の接合部付近に中域ユニット、ベースの底辺部に低域ユニットが配置されているという。本機は昨年イタリアで開催された、“デザイン家具のパリ・コレ”ともいえる「ミラノ・サローネ」に出展されていたものだ。非常に自然な音場感で、リラックスして音楽を聴きたい時には最適な鳴り方をするスピーカーであると感じた。
このブースでもう一つのメインといえる催し物が、先頃発売された小型リニアPCMレコーダー「PCM-D50」を使った生録体験コーナーである。アコギとバイオリンをその場で録音し、収録した音をその場でDR/ARの最高峰システムで再生するという試みだ。生演奏を聞いた直後だけに、「PCM-D50」で収録された音の決め細やかで写実的なサウンドに、会場に居た来場者の誰もが感心していた様子であった。このセッションの最後には、数台用意された「PCM-D50」を来場者に操作体感してもらうというコーナーもあり、興味深げに「PCM-D50」を操作する姿が印象的であった。
そして個人的にブース内展示で気になったのが参考出品となっていた「USB接続対応レコードプレーヤー」である。これまで、海外メーカーから数機種発売されているに留まる「USB-DAC」付きのレコードプレーヤー。国内第一号といえる本機がソニーから登場したのには驚いた。説明員の方の話では、気になっている来場者も多かったとのこと。これまでのUSB付きプレーヤーはPCでの音声取り込みにフリーソフトを用いる場合が多く、動作不安定なこともある。その点、ソフトウェア技術を持っている同社であれば、編集取り込みに最適なソフトで楽しむことができる可能性が高いので、製品化が大変に待ち遠しい。
■TADラボ〜モノラルパワーアンプのお披露目
好評のハイエンドスピーカー「ReferenceOne」と、CESで初披露された、TADラボ第一号製品となるモノラルパワーアンプがリスニングブースで試聴できるということで、各回の整理券は午前中からなくなってしまうほど人気があった。
同社の最上級なハイエンド・サウンドは雄大であり、また繊細な空間表現とダイナミックレンジが十分に取れた重厚な音楽再生力はただひたすらに圧巻であった。デジタルソースは96/24のハイサンプリング収録のDATも用意され鮮度の良い音を楽しめた。また往年の名機「EXCLUSIVE P-3」によるアナログ再生も披露され、同社がこれまで歩んできたピュアオーディオ最高峰の音を堪能することができた。
(岩井喬)
■ビクター〜新スピーカー&アンプシステム〜
今回の『A&Vフェスタ』一番の注目デモがビクターの新スピーカーとアンプであろう。昨今“ウッド・コーン”スピーカーで独自のスピーカー作りを確立した感のある同社であるが、それと同時に取り組んできている振動板技術がある。それが“オブリコーンと金属製振動板の融合”というテーマであるが、これまで、メタルコーンの素材として同社が選んできたのはアルミ素材であった。しかし今回採用したのは、現在のメタル素材で一番人気のマグネシウムである。トゥイーターもマグネシウム・ドーム型ユニットを用いているが、成型・大口径化が難しいマグネシウム素材によるオブリコーン・ウーファーの採用は英断といえる。そのサウンドは非常に滑らか、かつナチュラルな傾向。定在波発生を抑えた台形スタイルのキャビネットや、振動発生をとことん抑えたユニット保持構造など、トータルでの音響調整効果によるものであると思われるが、ウッドコーン・スピーカーとは違うベクトルの瑞々しいサウンドは大変魅力的なものであると感じた。
同時に発表された新型・デジタルアンプ試作機は、キャビネットこそまだ通常のアルミケースに収められたものであるのだが、歪みの低減、ノイズの除去、スピーカー駆動力の向上、及び大電力電源の搭載という、基本中の基本ではあるが、敢えてその課題に正面からぶつかっていったのだという。同社の掲げる“原音探求”というキーワードを実現するべく、「昨今縮小気味であったピュアオーディオ部門でも再び“音のビクター”を復活させようという心意気で臨んでいる」と、設計者である渡邊健司氏は語る。ゼロクロス付近のリニアリティもA級アンプ並みに優れたものにしたという今回のデジタルアンプ。高域に向け非常に伸び伸びと澄み切って、デジタルっぽい硬さを一切感じない、透明感溢れるサウンドであった。
■ソニー〜ピュアオーディオ・ルーム
ソニーのリスニングルームはビジュアル系とオーディオ系に分かれていたのだが、本レポートではオーディオ系試聴室について細かく見ていきたいと思う。まずメインの出展となるのは、前回の『A&Vフェスタ2006』では試作機の展示だけだった「SS-AR1」が、今回はDRシリーズのアンプ/SACDプレーヤーとの組み合わせによる同社最高峰のサウンドが味わえるリスニング・セッションである。「AR1」のナチュラルで豊かな響きは非常に有機的であるのに対し、DRシリーズは対象的に理知的に作り上げられた、アルミボディによる精悍で無機質なイメージを受ける。しかしこの二つの流れが融合したサウンドはとても心地良いもので、非常にバランスの取れた音質である。今までのモニター系にも通じるソニーサウンドとは違った、新しい魅力に溢れるものと感じる。なお「SS-AR1」を購入された方にはフロントバッフルをくりぬいた特性オーナメントもプレゼントされるということで、同時に展示もされていた。塗装処理やソニーロゴの加工も全て実機と同様に施された、手の込んだものである。オーナメント背面には「SS-AR1」の開発にあたった、メイン設計者・加来氏のサインも記されている。同スペース内には参考出品として、キャビネットの美しい木目がはっきりと分かるナチュラル仕上げの「SS-AR1」もお披露目されていた。
参考出品の新提案スピーカーシステムとして、円柱状のポールスタイル・無指向性スピーカーの出展も行われていた。クリアーチューブの頂点部に高域ユニット、チューブと本体の接合部付近に中域ユニット、ベースの底辺部に低域ユニットが配置されているという。本機は昨年イタリアで開催された、“デザイン家具のパリ・コレ”ともいえる「ミラノ・サローネ」に出展されていたものだ。非常に自然な音場感で、リラックスして音楽を聴きたい時には最適な鳴り方をするスピーカーであると感じた。
このブースでもう一つのメインといえる催し物が、先頃発売された小型リニアPCMレコーダー「PCM-D50」を使った生録体験コーナーである。アコギとバイオリンをその場で録音し、収録した音をその場でDR/ARの最高峰システムで再生するという試みだ。生演奏を聞いた直後だけに、「PCM-D50」で収録された音の決め細やかで写実的なサウンドに、会場に居た来場者の誰もが感心していた様子であった。このセッションの最後には、数台用意された「PCM-D50」を来場者に操作体感してもらうというコーナーもあり、興味深げに「PCM-D50」を操作する姿が印象的であった。
そして個人的にブース内展示で気になったのが参考出品となっていた「USB接続対応レコードプレーヤー」である。これまで、海外メーカーから数機種発売されているに留まる「USB-DAC」付きのレコードプレーヤー。国内第一号といえる本機がソニーから登場したのには驚いた。説明員の方の話では、気になっている来場者も多かったとのこと。これまでのUSB付きプレーヤーはPCでの音声取り込みにフリーソフトを用いる場合が多く、動作不安定なこともある。その点、ソフトウェア技術を持っている同社であれば、編集取り込みに最適なソフトで楽しむことができる可能性が高いので、製品化が大変に待ち遠しい。
■TADラボ〜モノラルパワーアンプのお披露目
好評のハイエンドスピーカー「ReferenceOne」と、CESで初披露された、TADラボ第一号製品となるモノラルパワーアンプがリスニングブースで試聴できるということで、各回の整理券は午前中からなくなってしまうほど人気があった。
同社の最上級なハイエンド・サウンドは雄大であり、また繊細な空間表現とダイナミックレンジが十分に取れた重厚な音楽再生力はただひたすらに圧巻であった。デジタルソースは96/24のハイサンプリング収録のDATも用意され鮮度の良い音を楽しめた。また往年の名機「EXCLUSIVE P-3」によるアナログ再生も披露され、同社がこれまで歩んできたピュアオーディオ最高峰の音を堪能することができた。
(岩井喬)
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