【独HighEnd】LINDEMANN、DSDの魅力をアピールするデモ/PentaToneレーベルがDSD配信をスタート
ミュンヘンのHighEnd2014では今年もネットワークオーディオ関連の展示が目立って増え、デモンストレーションで使用する音源のなかでも多数を占めていた。ただしその多くはFLACやWAVなどのPCM音源で、DSD音源を使って試聴イベントを行う例は数えるほど。日本ではUSB-DACやネットワークプレーヤーのDSD対応が進んでいるが、ドイツではまだそれほど関心が高まっている様子はない。
そんななかで異彩を放っていたのがLINDEMANN。昨年導入したコンパクトなMusicBookシリーズを使ってDSD音源を再生し、PCM音源との違いを積極的にアピールしていたのだ。会期2日目の5月16日に同社ブースで講演を行ったPentaToneレーベルの著名な録音エンジニアJean-Marie Geijsen氏は、「クラシック録音の展望」と題して録音のエピソードに触れながらDSD音源のメリットを紹介、来場者にDSDならではの生々しい臨場感を印象付けた。
Geijsen氏が再生したのは自ら手がけたDSD音源で、そのすべてがPentaToneレーベルからSACDで発売されている。ドヴォルザークの弦楽五重奏曲(ベルリンフィル弦楽五重奏団)、シューベルトのピアノ五重奏曲《ます》(ヘルムヘン他)などの室内楽曲からモーツァルトのアリア集(ルイテン&コンセルトヘボウ室内管弦楽団)までの多様な音源に共通するのが、その場に居合わせたかのようなリアルな空気感と演奏から伝わる表情の豊かさだ。
DSD録音は音色の微妙な変化や微細な情報を聴き取れることにも特徴がある。教会の録音ではマイクや録音機材がその場の空気になじむまでの音の変化がわかり、ピアノ録音では鍵盤に爪が当たる音が演奏の一部として自然に聴き取れるという。後者はPCM録音で聴くとノイズのように聴こえてしまうことがあり、その原因はサンプリング周波数によって決まる時間軸方向の分解能にあるというのが、Geijsen氏の主張だ。
人間の耳の時間分解能は非常に優れていて、たとえ上位フォーマットでもPCMではとらえきれない音があり、それが音楽的に重要な情報の場合、DSDとPCMの違いは思いがけず大きくなるという。両者の音の違いについての説明として、かなり説得力があるように思う。
PentaToneレーベルは自社サイトで4月からDSD音源の配信をスタートさせた。Geijsen氏によると、現在DSDで入手できる音源は約180タイトルあり、いずれもISO形式のディスクイメージファイルを圧縮して配信しているという。
そのニュースを聞いて筆者も実際にダウンロードしてみたが、アラベラ・シュタインバッハが独奏を弾いたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲の場合、ダウンロードしたデータ量は約4.4GBに及び、価格は26.5ユーロ、ダウンロード時間は約40分ほどかかった。
圧縮ファイルの解凍後、ISO形式のファイルからdffファイルを取り出す方法について同レーベルのFAQではフリーウェアまたはシェアウェアのソフトを使うことを推奨しているが、Geijsen氏によるとAudirvanaPlusやJriver media centerはISOファイルから自動的にdffデータを抽出して再生ができるという。
Mac上のAudirvanaPlusで実際に試してみると、DSD(2.8MHz)のステレオ音源を問題なく再生することができた。DLNA再生を行う場合は前述の解凍ソフトを使う必要があるが、パソコンを利用するならハードルはそれほど高くないと感じた。
PentaToneのような規模のレーベルがDSD音源の配信を始めたことにも大きな意味があるが、それに加えて今回はISO形式での配信に踏み切ったことにも注目したい。ISOファイルの場合、ディスク単位でマスターと同等のデータをまるごと入手できるため、ステレオ音源に加えてマルチチャンネル音源も購入できる。展開したフォルダの中身を見ると、ブックレットやMP3のデータまで用意されていた。MP3はともかく、マルチチャンネルのDSD音源まで入手できるのは画期的なことだ。
ISO形式での配信を選んだことについてGeijsen氏は2つの理由を挙げて説明してくれた。まずはデータのサイズを少しでも小さくすることにより、ダウンロードの手間を少なくできること。そして、もう一つの理由は曲間でのノイズの発生を回避し、スムーズなギャップレス再生を実現することにあるという。再生方法がまだ限られているとはいえ、音源不足の解消という意味で、今回のPentaToneの参入は注目に値する。
LINDEMANNのMusicBookシリーズはデスクトップでも使えるほどのコンパクトなコンポーネントだが、今回のデモンストレーションではDSD音源のメリットをはっきり聴き取ることができた。コンパクトで高性能な製品はドイツの得意な分野だが、それは日本の市場にも通じるところがある。MusicBookシリーズが日本にも導入されることを期待したい。
そんななかで異彩を放っていたのがLINDEMANN。昨年導入したコンパクトなMusicBookシリーズを使ってDSD音源を再生し、PCM音源との違いを積極的にアピールしていたのだ。会期2日目の5月16日に同社ブースで講演を行ったPentaToneレーベルの著名な録音エンジニアJean-Marie Geijsen氏は、「クラシック録音の展望」と題して録音のエピソードに触れながらDSD音源のメリットを紹介、来場者にDSDならではの生々しい臨場感を印象付けた。
Geijsen氏が再生したのは自ら手がけたDSD音源で、そのすべてがPentaToneレーベルからSACDで発売されている。ドヴォルザークの弦楽五重奏曲(ベルリンフィル弦楽五重奏団)、シューベルトのピアノ五重奏曲《ます》(ヘルムヘン他)などの室内楽曲からモーツァルトのアリア集(ルイテン&コンセルトヘボウ室内管弦楽団)までの多様な音源に共通するのが、その場に居合わせたかのようなリアルな空気感と演奏から伝わる表情の豊かさだ。
DSD録音は音色の微妙な変化や微細な情報を聴き取れることにも特徴がある。教会の録音ではマイクや録音機材がその場の空気になじむまでの音の変化がわかり、ピアノ録音では鍵盤に爪が当たる音が演奏の一部として自然に聴き取れるという。後者はPCM録音で聴くとノイズのように聴こえてしまうことがあり、その原因はサンプリング周波数によって決まる時間軸方向の分解能にあるというのが、Geijsen氏の主張だ。
人間の耳の時間分解能は非常に優れていて、たとえ上位フォーマットでもPCMではとらえきれない音があり、それが音楽的に重要な情報の場合、DSDとPCMの違いは思いがけず大きくなるという。両者の音の違いについての説明として、かなり説得力があるように思う。
PentaToneレーベルは自社サイトで4月からDSD音源の配信をスタートさせた。Geijsen氏によると、現在DSDで入手できる音源は約180タイトルあり、いずれもISO形式のディスクイメージファイルを圧縮して配信しているという。
そのニュースを聞いて筆者も実際にダウンロードしてみたが、アラベラ・シュタインバッハが独奏を弾いたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲の場合、ダウンロードしたデータ量は約4.4GBに及び、価格は26.5ユーロ、ダウンロード時間は約40分ほどかかった。
圧縮ファイルの解凍後、ISO形式のファイルからdffファイルを取り出す方法について同レーベルのFAQではフリーウェアまたはシェアウェアのソフトを使うことを推奨しているが、Geijsen氏によるとAudirvanaPlusやJriver media centerはISOファイルから自動的にdffデータを抽出して再生ができるという。
Mac上のAudirvanaPlusで実際に試してみると、DSD(2.8MHz)のステレオ音源を問題なく再生することができた。DLNA再生を行う場合は前述の解凍ソフトを使う必要があるが、パソコンを利用するならハードルはそれほど高くないと感じた。
PentaToneのような規模のレーベルがDSD音源の配信を始めたことにも大きな意味があるが、それに加えて今回はISO形式での配信に踏み切ったことにも注目したい。ISOファイルの場合、ディスク単位でマスターと同等のデータをまるごと入手できるため、ステレオ音源に加えてマルチチャンネル音源も購入できる。展開したフォルダの中身を見ると、ブックレットやMP3のデータまで用意されていた。MP3はともかく、マルチチャンネルのDSD音源まで入手できるのは画期的なことだ。
ISO形式での配信を選んだことについてGeijsen氏は2つの理由を挙げて説明してくれた。まずはデータのサイズを少しでも小さくすることにより、ダウンロードの手間を少なくできること。そして、もう一つの理由は曲間でのノイズの発生を回避し、スムーズなギャップレス再生を実現することにあるという。再生方法がまだ限られているとはいえ、音源不足の解消という意味で、今回のPentaToneの参入は注目に値する。
LINDEMANNのMusicBookシリーズはデスクトップでも使えるほどのコンパクトなコンポーネントだが、今回のデモンストレーションではDSD音源のメリットをはっきり聴き取ることができた。コンパクトで高性能な製品はドイツの得意な分野だが、それは日本の市場にも通じるところがある。MusicBookシリーズが日本にも導入されることを期待したい。
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