「Hugo」をベースに大きな進化を果たした注目機

英CHORD「Hugo TT」の開発背景に迫る! CEO ジョン・フランクス氏インタビュー

公開日 2015/05/01 11:03 山本 敦
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■USB再生の音質改善も図った

ほかにもHugoから積極的に音質改善に取り組んだ箇所が幾つかある。フランクス氏は説明を続ける。

「一部のユーザーからHugoのUSB接続で音楽を聴くと、スマホなどモバイル機器とPCの場合とで音質に差が表れるという声がありました。そこでロブ(ワッツ氏)と私はいくつもの検証を行いました。USB端子にガルバニック絶縁(アイソレーター)を装着してデータを計測してみると、いくつかのPCと組み合わせた場合に、USB経由でPCからグランドノイズや電磁波ノイズ(RFノイズ)が伝わってくるケースがあることがわかりました。ノイズフロアが上がると、人間の脳は低域の音を知覚しづらくなります。結果としてサウンドの一部がマスキングされてしまい、リスニング体験を損なうことがあります」。

USB端子に外付けのアイソレーターを装着することもできたが、フランクス氏とワッツ氏は、それでは根本的な解決にならないと判断した。そしてHugo TTではUSB経由のノイズが混入しないよう、筐体内部のDACチップの手前に新開発のガルバニックアイソレーター(電気的絶縁装置)を組み込むことで音質劣化の課題をクリアした。モバイル端末の場合はPCほどノイズを発生しないため問題はないのだが、Hugo TTの場合はPC接続によるリスニングがメインになると判断して機能強化に踏み切った。

こちらがHugo TTの内部基板。USB接続時にノイズが混入しないようアイソレーターを搭載したほか、パルスアレイDACへの電源供給も見直されている

ほかにもディスクリート構成のパルスアレイDACは、それぞれにピュアな電源を供給できるようワッツ氏が回路設計を組み直している。結果としてトータルで4dBのS/N改善が図られた。その効果のほどについて、フランクス氏は「高感度のカスタムイヤーモニターで聴いてもノイズが分からないほど」とアピールする。

■アナログセクションは極めてシンプルに構成されている

Hugoでは極めて複雑で高精度なデジタル信号処理を行っている。初段ではまず、デジタル入力信号にフィルターをかけて丁寧にノイズを取り除き、続いて2,048倍のオーバーサンプリングをかけてジッターを除去する。次段、104MHz駆動の高周波クロックによって整えられた信号は、ディスクリート構成のパルスアレイDACに送り込まれる。プログラムを設計したワッツ氏は以前、インタビューで「シンプルだが、とても複雑な処理。一般的なDACチップで同じことをやるとすれば巨大なフィルターが必要なほど」と強調していた。デジタル信号処理の段階で徹底したノイズ対策を行ってピュアな信号を生成するため、可聴帯域のはるか上方までフィルターをかける必要のない回路設計をとっていることも特徴だ。フランクス氏は説明を加える。

コードの代名詞となるパルスアレイDAC。極めて高度かつ複雑なプロセスを担うデジタル技術だが、そのおかげもありアナログ部は極めてシンプルな構成とすることを可能とした

「アナログ部の設計では、各コンポーネントがひとつの時間軸で密接に連携していることを理解しながら音をつくる必要があります。だから信号経路は極力シンプルである方がベターです。私がアンプをデザインする際には、スイッチング電源回路も細部まで全てシンプルに連携させることを重視しています。電源回路のデザインがアンプを安定してドライブするための決め手になり、最終的には音質の向上につながります」。

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