アナログマスターテープから独自にハイレゾ化

HQM STORE、チューリップの70年代ライブ盤 3作品を7月19日より独占ハイレゾ配信

公開日 2016/05/26 18:06 編集部:小澤貴信
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クリプトンは、同社が運営するハイレゾ配信サイト「HQM STORE」にて、チューリップのライブアルバム3作品を7月19日より独占配信する。

今回ハイレゾ化された「LIVE!! ACT TULIP」のLP

7月19日より配信されるライブアルバム3作品の詳細

<配信予定タイトル>
・『LIVE!! ACT TULIP
・『LIVE!! ACT TULIP VOL-2
・『LIVE!! ACT TULIP VOL-3

■配信フォーマットおよび価格
 FLAC 192kHz/24bit 2,980円(税込)
 DSD 2.8MHz 2,980円(税込)
 ALAC 48kHz/24bit 1,980円(税込)

『LIVE!! ACT TULIP』は、「心の旅」の大ヒットで一躍スーパーバンドとなったチューリップが、1973年9月23日に渋谷公会堂で行った初の単独ライブの模様を収録。本ライブは渋谷公会堂の動員記録を塗り替え、収録後2ヶ月でレコードが発売された。また、このアルバムは今日では一般的になった「LIVE」という言葉を、日本で初めてアルバムタイトルに用いた作品としても知られているとのこと(当時は「リサイタル」や「コンサート」という言葉が一般的だった)。

『LIVE!! ACT TULIP VOL-2』は、1976年8月1日の札幌・真駒内アイスアリーナ、および同年8月28日の福岡・九電記念体育館にて収録されたライブ作品。「心の旅〜メドレー」「青春の影」などヒット曲が並び、ファンの間でも傑作として評価されているという。『LIVE!! ACT TULIP VOL-3』は、1978年に鈴蘭高原、および田園コロシアムで行われた2つの野外ライブで構成され、「サボテンの花」も収録されている。

今回のハイレゾ配信にあたっては、原盤権を所有するシンコーミュージックが貴重なマスターテープを提供。デジタル化およびマスタリングについては、中央林間のJVC KENWOODマスタリングセンターにて、杉本一家氏の手によって行われた。

本日開催された発表会には、チューリップのプロデュースを担当した新田和長氏が登場。当時のエピソードや今回のハイレゾ化された音源の印象について語った。

新田和長氏

新田氏は東芝音楽工業(後の東芝EMI)へ1969年に入社。1972年にデビューしたチューリップの作品を一貫してプロデュースしたのをはじめ、錚々たるアーティストの代表曲にディレクター/プロデューサーなどの立場で関わってきた。その中には、長渕剛「乾杯」、寺尾聡「ルビーの指輪」、小田和正「ラブストーリーは突然に」など日本の音楽史を代表する曲も含まれている。

新田氏がディレクター/プロデューサーとして関わった名曲の数々

新田氏の経歴

発表会では、3作品のうち『LIVE!! ACT TULIP』のCD、192kHz/24bit FLAC、2.8MHz DSDを聴き比べながら、新田氏がそのサウンドの印象について話してくれた。

「ライブ盤の音作りには2種類あって、1つはスタジオ録音的にセパレーションを確保していくもの、もう1つはライブ会場の雰囲気を重視してミックスするものです。本作は後者なのですが、LPのときは良い音をしていました。しかしCDになったとき、薄い音というか、空気の入ってない、奥行きのない音になってしまいました」(新田氏)。

しかし、今回マスターテープからハイレゾ化を行った結果、CDでは失われていた情報が復活して、当時の会場の音により近い音が実現できたという。「マスタリングを手がけた杉本さんは、チューリップのファンで、当時このライブを会場で聴いていたそうです。実際に杉本さんのマスタリングを聴いて、これは“義理でやっている仕事ではない”と思いました(笑)」(新田氏)。

それではDSDとPCM、どちらが当時のライブの雰囲気を忠実に再現しているのだろうか。新田氏は「PCMとDSD、それぞれに良さがある」と語る。PCMのハイレゾについては「CDにおける周波数特性の変なピークがなくなって、よりナチュラルになりました。スネアがやキックが聞こえてきて、コーラスにも厚みがでた。空気感が再現されている印象です」と紹介。

それでもより当時の印象に近いのはDSDだったとのこと。「渋谷公会堂で当時聴いた音により近いのはDSDですね。例えば、当時のベーシストの吉田彰さんの弾くベースの音色がしっかり再現されいて、彼の表情まで見えてくるようです。どちらが良いかは別として、どちらがライブの音に近いかと問われれば、DSDでしょう」と紹介していた。

マスターテープを手に、当時のエピソードを語る新田氏

また、新田氏はチューリップのデビュー当時の様子を回想。「まだアマチュアだった財津和夫さんが、私のところに『魔法の黄色い靴』ただ1曲だけを持ってやってきました。それを聴いてすぐに、一緒にやりたいと思ったのです。私はレコード会社の人間だったので、まずはプロダクションを探しました。ただ、チューリップのような音楽性を持つバンドは当時の日本のシーンには見当たらず、GSともフォークともちがっていた。このような新しい音楽を理解してくれるのはシンコーミュージックしかないと思い、当時社長だった草野昌一さんにマネージメントをお願いしました。」

「草野さんは当初、我々は音楽出版社であってアーティストのプロダクションではないという立場だったのですが、私は勇気を振り絞って「これからはアーティストのマネージメントをしないと著作権ビジネスもできない」と直談判しました。すると、欧米の音楽事情に通じていた草野さんはすぐに理解してくれて、その後一緒に、チューリップの地元の九州にコンサートを見に行ったのです」(新田氏)。

また新田氏はライブ盤にも収録されている出世作「心の旅」について、「この曲はサビから始まるという当時としては斬新な曲構成を持っているのですが、これは草野 昌一さんのアイデアでした。しかも、レコーディング現場に草野さんから電話がかかってきて、『サビから始めたほうがいい』と言われたのです。これはすごいと思って取り入れたのです」と当時のエピソードを披露してくれた。

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