録音は高橋健太郎氏が担当
3本のマイクでハイレゾ録音、音はどう変わる? 中村月子のフリー音源をDLして確かめよう
滋賀、京都、東京で活躍するシンガーソングライター、中村月子。ギターと美しい歌声で音楽ファンを魅了する彼女が、配信限定のハイレゾシングル『Experience』(500円/OTOTOYで配信)をリリースする。
これにあわせて、中村月子『そのとき世界が』の弾き語りを、エンジニア高橋健太郎がKORGのMR-2000Sを用いてDSDで録音するイベントが開かれた。
今回の録音は、RCAの44B、ノイマンのU67、そしてゼンハイザーのMH416という3本のマイクを使って行われた。今回、各マイクのみのトラックがダウンロードできるURLを、当サイトのメールマガジン購読者に6月24日配信分から7月1日配信分まで、1週間掲載する。
マイクの違いでどのような音の違いが出るのか、ぜひメルマガ登録し、記載されたURLからダウンロードして体験してみてほしい。
以下、中村月子と高橋健太郎へのインタビューをお届けする。
──ハイレゾフェスでのライブはいかがでしたか。
中村月子(以下、月子) : 恐ろしいくらい緊張しました。長く演奏している気分になって途中で飛んじゃったり、お客さんの顔も見えてたから「あれ? 飽きられてる?」って恐怖心に襲われだしたりして。こじんまりとした雰囲気だったのも、逆に緊張しちゃって。
──今回、異なる3本のマイクでのレコーディングを行いましたが、そもそもこの企画はどのようにして生まれたのでしょう?
高橋 : あの部屋で録音しようって話が上がったときに、一番面白いことは何かを考えたんです。あそこはスタジオではなくて、空調の音も入るような普通な部屋なので、一発でクオリティと緊張感のあるものが録るにするには、マイクを普通に立てるんじゃなくて、一本でその場の音を全部録ってしまうのはどうかなと。ただ、それだけだと面白くないから、年代や作り方の違うマイクを使ってそれぞれ違いが出るようにしたら面白いかなって。
──そのマイクについて教えて頂けますか。
高橋 : 一つはRCAの44Bという1940年代のリボンマイク。ビリー・ホリデイなどのジャズ歌手が使っていたもので、この中では1番古くて大きいマイクですね。
それからノイマンのU67という真空管式のマイク。1960年代のものだけど、今も有名な人たちはこれを使うことが多いんじゃないかな。スタジオで女性シンガーとかによく使われています。
それとゼンハイザーのMH416。これはガンマイクといって、周りの音をほとんど拾わないんです。例えば外で使ったときに、小鳥の声を録ったりできます。基本はその3本で、少しだけ下の方に立てて、左右の音を拾うようにしたAKGの414ULSと遠くに立てたアンビエンス用のゼンハイザーのMD421Nをミックスの時にまぜています。
──このガンマイクで歌を録るなんてことはあるんですか?
高橋 : あんまりないですね。
ーーこれってテレビ局の人とかが使うやつですよね?
高橋 : そうそう。テレビ局の人が上からかざすマイクです。なんでそんなマイクでやってみようと思ったのかというと、NPRのタイニー・デスク・コンサートってあるじゃないですか。あれ、オフィスで録っていて、マイクどうしてるんだろう?と、よくよくみてたら、下の方にガンマイクが一本出てるんですよ。オフィスって向こうでは空調が回っていて、こっちではPCの音が鳴っていても、ノイズだらけでしょ。でも、ガンマイクならあんまりその音を拾わないから、弾き語りの人に割と遠くから向けているだけでも大丈夫なんだな、これは面白そうと思って、入れてみました。
──実際に録ってみていかがでしたか?
高橋 : どれがいいっていうより、それぞれ違う雰囲気で録れて面白かったです。月子さんはどうでした?
月子 : 普段は1本しかないから、すごい緊張しましたね。
──各音源を聴き比べてみましょうか。
(〜試聴タイム〜)
月子 : 私はMH416で録れた音が好きですね。生音っぽい感じがします。
──僕は温かみのある44Bで録れた音が好きでした。
高橋 : 44Bで録れた音は、今CDとかで聞かない感じの音だよね。
月子 : 声がくぐもった感じで、昔のジャズの雰囲気があっていいと思いました。
──聴き比べてみると違いがはっきりしていますね。
高橋 : ガンマイク(MH416)は他の音が入ってこないから、歌っている人は自分の感じに1番近いのかもしれないですね。
月子 : 確かに。
高橋 : 44Bで録れた音は録音したものを聴いているというより、少し離れたところで聴いているような感じ。U67で録れた音は一番CDに近いかもしれない。どのマイクが一番合うのかは環境に応じて調べないと分からないものなんですが、今回は3本全部良かったですね。U67はこの中では一番高いマイクで、ウチのスタジオでも皆一番使いたがるんです。
月子 : そうなんですか。
高橋 : 合わない人は合わないけど、合う人にはものすごく合う。ガンマイクで録ったのは初めてだったけど、面白いものが録れたし、44Bは思った通りの感じに録れた。
──変わったレコーディング方法でしたが、録音はスムーズにいきましたか。
高橋 : ストロークの曲はギターの音が大きくなって歌とギターが混ざるのと、曲の中でもそのバランスが変わるので、ワンマイクで録るのは少し難しかったですね。本当は曲ごとに少し位置を変えたりしたかった。「その時世界が」はアルペジオなので、どのマイクでもバランスが取れていて、音や声の違いが一番わかりやすいと思います。
──曲についても伺いたいんですが、「エンジェル」はとてもいい曲!
月子 : これは父が私に贈ってくれた曲なんです。最近になって父と頻繁に連絡をとるようになって、そのときに父がこの曲を歌っていたことを思い出しました。「できるだけ一緒の時間を過ごそう」って歌詞が好きで、最近歌い始めたんです。
高橋 : お父さんもシンガーソングライターなんですか?
月子 : バンドマンで弾き語りもやっています。滋賀のバンドで、地元でフェスとかをやったりしていて、渋くてめちゃかっこいいお父さんなんです。
高橋 : 一回、お父さんの歌も聴いてみたいなあ。
月子 : 父から譲り受けた曲なので大事にしています。
──「その時世界が」はどういった曲ですか?
月子 : 自分が何のために歌っているのかを考えていて、部屋で一人「この人のために歌えたら十分だな」と思ったときに書きました。2ヶ月くらい前にできた曲なんですけど、最近は雰囲気を変えてやっています。「夜を越えて」も同じくらいの時期に作って、吹っ切れた瞬間にできた曲です。
──何に吹っ切れたんですか?
月子 : くすぶっていたんですよね。2年前に上京して、レコーディングをしたりもしていたんですけど、頓挫してしまったことがあって。でもこの1年くらいひたすら曲作りとライヴを繰り返していく中で、気持ちがシンプルになっていって、初心に戻ったというか。見失っていた自分と久しぶり会えたという感じです。
高橋 : もともとどうして曲を作り始めたの?
中村 : ジミヘンが凄い好きだったんです。
──え? ジミヘンですか?
月子 : 小学生の時に衝撃を受けたんですよね。揺さぶられる瞬間があった。
高橋 : お父さんもジミヘンが好きなんですか。
月子 : もちろんジミヘンも好きだとは思うんですけど、お父さんは清志郎とかが凄い好きで。レコードをいっぱい聴かせてもらってて、トム・ウェイツとかもあって、そのうちにジミヘンを聴かせてもらったんです。そこで「かっこいい!私ブルース・ギターをやりたいわ」と思ったんです。それで滋賀県で有名なブルースのおっさんがいるんです。知ってますよね?
──知りませんよ(笑)。
月子 : マジで有名なんですよ(笑)。その尊敬するブルースのおっさんにリフや曲を教えてもらって、それに日本語で歌詞をつけてみたんです。それが凄い面白くて、そこで味をしめて「自分の気持ちをのせてみたらどうなるんだろう?」と思って、それこそ小学生なので「運動会だ!」とか「テストだ!」とかそういう簡単なことから曲にしていきました。
──小学生の頃から曲を作っていたんですか?
月子 : 作っていました。だから昔は滋賀県の期待の星だったんですけどね(笑)。
高橋 : その頃から人前に立っていたんですか?
月子 : 小学4年生の夏に初めてステージで演奏しました。お父さんのフェスでジミヘンの「リトル・ウィング」を。
──小4で「リトル・ウィング」(笑)。ご自身の曲はどのくらいあるんですか?
月子 : 昔のものも含めたら80曲くらい。愛のことばかり歌いたいと思っています。色んな曲がありますけど、結局は私の曲は愛の歌ですね。
──そこに行き着くのは何故なのでしょうか?
月子 : 愛を信じていたいから。私、人を凄い好きになるんですよ。どんな人でもめっちゃ愛しちゃう。ただその分感情の起伏は大きいので、自分の中に渦巻くものと戦いながら曲を書いてます。感情が動いたときに曲が書けるんですよね。
──なるほど。でもそれくらいな人の方が、人を惹き付ける曲をかけると思います。
月子 : そうだと良いんですけど。頑張ります。
高橋 : いやいや、月子さんは、歌も曲もぜんぜん凄くて、超期待の新星だと思いますよ。
<本記事のインタビュー部はOTOTOY制作記事を転載したものです>
これにあわせて、中村月子『そのとき世界が』の弾き語りを、エンジニア高橋健太郎がKORGのMR-2000Sを用いてDSDで録音するイベントが開かれた。
今回の録音は、RCAの44B、ノイマンのU67、そしてゼンハイザーのMH416という3本のマイクを使って行われた。今回、各マイクのみのトラックがダウンロードできるURLを、当サイトのメールマガジン購読者に6月24日配信分から7月1日配信分まで、1週間掲載する。
マイクの違いでどのような音の違いが出るのか、ぜひメルマガ登録し、記載されたURLからダウンロードして体験してみてほしい。
以下、中村月子と高橋健太郎へのインタビューをお届けする。
──ハイレゾフェスでのライブはいかがでしたか。
中村月子(以下、月子) : 恐ろしいくらい緊張しました。長く演奏している気分になって途中で飛んじゃったり、お客さんの顔も見えてたから「あれ? 飽きられてる?」って恐怖心に襲われだしたりして。こじんまりとした雰囲気だったのも、逆に緊張しちゃって。
──今回、異なる3本のマイクでのレコーディングを行いましたが、そもそもこの企画はどのようにして生まれたのでしょう?
高橋 : あの部屋で録音しようって話が上がったときに、一番面白いことは何かを考えたんです。あそこはスタジオではなくて、空調の音も入るような普通な部屋なので、一発でクオリティと緊張感のあるものが録るにするには、マイクを普通に立てるんじゃなくて、一本でその場の音を全部録ってしまうのはどうかなと。ただ、それだけだと面白くないから、年代や作り方の違うマイクを使ってそれぞれ違いが出るようにしたら面白いかなって。
──そのマイクについて教えて頂けますか。
高橋 : 一つはRCAの44Bという1940年代のリボンマイク。ビリー・ホリデイなどのジャズ歌手が使っていたもので、この中では1番古くて大きいマイクですね。
それからノイマンのU67という真空管式のマイク。1960年代のものだけど、今も有名な人たちはこれを使うことが多いんじゃないかな。スタジオで女性シンガーとかによく使われています。
それとゼンハイザーのMH416。これはガンマイクといって、周りの音をほとんど拾わないんです。例えば外で使ったときに、小鳥の声を録ったりできます。基本はその3本で、少しだけ下の方に立てて、左右の音を拾うようにしたAKGの414ULSと遠くに立てたアンビエンス用のゼンハイザーのMD421Nをミックスの時にまぜています。
──このガンマイクで歌を録るなんてことはあるんですか?
高橋 : あんまりないですね。
ーーこれってテレビ局の人とかが使うやつですよね?
高橋 : そうそう。テレビ局の人が上からかざすマイクです。なんでそんなマイクでやってみようと思ったのかというと、NPRのタイニー・デスク・コンサートってあるじゃないですか。あれ、オフィスで録っていて、マイクどうしてるんだろう?と、よくよくみてたら、下の方にガンマイクが一本出てるんですよ。オフィスって向こうでは空調が回っていて、こっちではPCの音が鳴っていても、ノイズだらけでしょ。でも、ガンマイクならあんまりその音を拾わないから、弾き語りの人に割と遠くから向けているだけでも大丈夫なんだな、これは面白そうと思って、入れてみました。
──実際に録ってみていかがでしたか?
高橋 : どれがいいっていうより、それぞれ違う雰囲気で録れて面白かったです。月子さんはどうでした?
月子 : 普段は1本しかないから、すごい緊張しましたね。
──各音源を聴き比べてみましょうか。
(〜試聴タイム〜)
月子 : 私はMH416で録れた音が好きですね。生音っぽい感じがします。
──僕は温かみのある44Bで録れた音が好きでした。
高橋 : 44Bで録れた音は、今CDとかで聞かない感じの音だよね。
月子 : 声がくぐもった感じで、昔のジャズの雰囲気があっていいと思いました。
──聴き比べてみると違いがはっきりしていますね。
高橋 : ガンマイク(MH416)は他の音が入ってこないから、歌っている人は自分の感じに1番近いのかもしれないですね。
月子 : 確かに。
高橋 : 44Bで録れた音は録音したものを聴いているというより、少し離れたところで聴いているような感じ。U67で録れた音は一番CDに近いかもしれない。どのマイクが一番合うのかは環境に応じて調べないと分からないものなんですが、今回は3本全部良かったですね。U67はこの中では一番高いマイクで、ウチのスタジオでも皆一番使いたがるんです。
月子 : そうなんですか。
高橋 : 合わない人は合わないけど、合う人にはものすごく合う。ガンマイクで録ったのは初めてだったけど、面白いものが録れたし、44Bは思った通りの感じに録れた。
──変わったレコーディング方法でしたが、録音はスムーズにいきましたか。
高橋 : ストロークの曲はギターの音が大きくなって歌とギターが混ざるのと、曲の中でもそのバランスが変わるので、ワンマイクで録るのは少し難しかったですね。本当は曲ごとに少し位置を変えたりしたかった。「その時世界が」はアルペジオなので、どのマイクでもバランスが取れていて、音や声の違いが一番わかりやすいと思います。
──曲についても伺いたいんですが、「エンジェル」はとてもいい曲!
月子 : これは父が私に贈ってくれた曲なんです。最近になって父と頻繁に連絡をとるようになって、そのときに父がこの曲を歌っていたことを思い出しました。「できるだけ一緒の時間を過ごそう」って歌詞が好きで、最近歌い始めたんです。
高橋 : お父さんもシンガーソングライターなんですか?
月子 : バンドマンで弾き語りもやっています。滋賀のバンドで、地元でフェスとかをやったりしていて、渋くてめちゃかっこいいお父さんなんです。
高橋 : 一回、お父さんの歌も聴いてみたいなあ。
月子 : 父から譲り受けた曲なので大事にしています。
──「その時世界が」はどういった曲ですか?
月子 : 自分が何のために歌っているのかを考えていて、部屋で一人「この人のために歌えたら十分だな」と思ったときに書きました。2ヶ月くらい前にできた曲なんですけど、最近は雰囲気を変えてやっています。「夜を越えて」も同じくらいの時期に作って、吹っ切れた瞬間にできた曲です。
──何に吹っ切れたんですか?
月子 : くすぶっていたんですよね。2年前に上京して、レコーディングをしたりもしていたんですけど、頓挫してしまったことがあって。でもこの1年くらいひたすら曲作りとライヴを繰り返していく中で、気持ちがシンプルになっていって、初心に戻ったというか。見失っていた自分と久しぶり会えたという感じです。
高橋 : もともとどうして曲を作り始めたの?
中村 : ジミヘンが凄い好きだったんです。
──え? ジミヘンですか?
月子 : 小学生の時に衝撃を受けたんですよね。揺さぶられる瞬間があった。
高橋 : お父さんもジミヘンが好きなんですか。
月子 : もちろんジミヘンも好きだとは思うんですけど、お父さんは清志郎とかが凄い好きで。レコードをいっぱい聴かせてもらってて、トム・ウェイツとかもあって、そのうちにジミヘンを聴かせてもらったんです。そこで「かっこいい!私ブルース・ギターをやりたいわ」と思ったんです。それで滋賀県で有名なブルースのおっさんがいるんです。知ってますよね?
──知りませんよ(笑)。
月子 : マジで有名なんですよ(笑)。その尊敬するブルースのおっさんにリフや曲を教えてもらって、それに日本語で歌詞をつけてみたんです。それが凄い面白くて、そこで味をしめて「自分の気持ちをのせてみたらどうなるんだろう?」と思って、それこそ小学生なので「運動会だ!」とか「テストだ!」とかそういう簡単なことから曲にしていきました。
──小学生の頃から曲を作っていたんですか?
月子 : 作っていました。だから昔は滋賀県の期待の星だったんですけどね(笑)。
高橋 : その頃から人前に立っていたんですか?
月子 : 小学4年生の夏に初めてステージで演奏しました。お父さんのフェスでジミヘンの「リトル・ウィング」を。
──小4で「リトル・ウィング」(笑)。ご自身の曲はどのくらいあるんですか?
月子 : 昔のものも含めたら80曲くらい。愛のことばかり歌いたいと思っています。色んな曲がありますけど、結局は私の曲は愛の歌ですね。
──そこに行き着くのは何故なのでしょうか?
月子 : 愛を信じていたいから。私、人を凄い好きになるんですよ。どんな人でもめっちゃ愛しちゃう。ただその分感情の起伏は大きいので、自分の中に渦巻くものと戦いながら曲を書いてます。感情が動いたときに曲が書けるんですよね。
──なるほど。でもそれくらいな人の方が、人を惹き付ける曲をかけると思います。
月子 : そうだと良いんですけど。頑張ります。
高橋 : いやいや、月子さんは、歌も曲もぜんぜん凄くて、超期待の新星だと思いますよ。
<本記事のインタビュー部はOTOTOY制作記事を転載したものです>
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