最上位モデルは130万円/ペア

DYNAUDIO、新「CONTOUR」シリーズを正式発表 - ドライバー刷新などフルモデルチェンジ

公開日 2016/12/01 15:58 編集部:小澤貴信
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DYNAUDIO JAPANは本日新製品発表会を開催。DYNAUDIOの主力スピーカーである「CONTOUR」(コンター)シリーズの新モデルを正式発表。12月中旬〜下旬から順次発売する。

・「CONTOUR 60」 ¥1,300,000/ペア(税抜)
・「CONTOUR 30」 ¥1,000,000/ペア(税抜)
・「CONTOUR 20」 ¥640,000/ペア(税抜)
・「CONTOUR 25C」 ¥450,000(税抜)

「CONTOUR 30」(左)と「CONTOUR 20」(右)

「CONTOUR 60」と「CONTOUR 25C」

CONTOUR 60とCONTOUR 30はフロアスタンド型、CONTOUR 20はブックシェルフ型、CONTOUR 25Cはセンタースピーカーとなる。

CONTOURシリーズは第一世代が1989年〜2003年まで、第二世代が2004年〜2016年までラインナップ。さらに上位のシリーズも用意されている中で、CONTOURはディナウディオを象徴するスピーカーシリーズとして、長期にわたって支持を集めてきた。第三世代となる新CONTOURでは、ウーファーやトゥイーターなど各ドライバーを新たに開発。デザインやキャビネットなども刷新してフルモデルチェンジが行われた。

各モデルのユニット構成は以下のとおり。CONTOUR 60は28mmトゥイーター×1、150mmミッドレンジ×1、240mmウーファー×2。CONTOUR 30は28mmトゥイーター×1、180mmウーファー×2。CONTOUR 20は28mmトゥイーター×1、180mmウーファー×1。CONTOUR 25Cは28mmトゥイーター×1、180mmウーファー×2となる。

DYNAUDIO GroupのDYNAUDIO ACADEMYシニアマネージャー Roland Hoffmann氏

発表会には、DYNAUDIO GroupのDYNAUDIO ACADEMYシニアマネージャーを務めるRoland Hoffmann氏が登場。同氏は、ディナウディオがユニットからエンクロージャー、クロスオーバーに至るまでを自社開発・製造していることを強調。だからこそ細部にまで踏み込んだ改良が行えることを強調しつつ、新CONTOURの詳細を説明した。以下にその内容を解説する。

発表会ではCONTOUR 30を中心にデモが行われた

ウーファー/ミッドレンジを新規開発。トゥイーターは新たに上位モデルから継承

新CONTOURシリーズの最大の特徴のひとつが、新開発されたミッドレンジ/ウーファーユニットだ。振動板の素材には、ディナウディオが開発したMSP(ケイ酸マグネシウム・ポリマー)を引き続き採用するが、その仕様を大きく改良。CONTOURの開発としては初めて採用されたFEM(有限要素法)によるコンピューター解析を用いることで、振動板の形状を最適化した。

「Vari-MSPコーン」を採用したミッドレンジ/ウーファー

ウーファーの分解図

具体的には、剛性を維持しつつMSP振動板を軽量化するために、振動板のカーブの角度や厚みを最適化。振動板の厚みを一様にするのではなく、内周部から周辺部にかけて厚みを少しずつ変えた「Vari-MSPコーン」を開発(結果、振動板の最薄部は150mmウーファーで0.4mm、240mmウーファーで1.0mになった)。この変更でさらにレスポンスの早いピストンモーションを実現したという。

また、振動板のエッジ部のリングの形状を変更。一般的なユニットではエッジのリング断面が半円形になっているが、FEMの解析結果を用いて、本ユニットではリング断面を楕円形状とした。これにより、ユニット駆動時の伸び縮みの最大時にかかるストレスを大幅に低減、より正確なピストンモーションが可能となった。

Vari-MSPコーン


ボイスコイルを支えてピストンモーションをしやすくするスパイラルサスペンションも、FEM解析で形状を最適化。スパイラル形状の一番内側の幅を小さくすることで、そのパフォーマンスを大幅に向上させた。

スパイラルサスペンションも刷新

ドライバーユニットの中央に見えるのがスパイラルサスペンションだ

このように、新CONTOURではFEMによる解析が大きな役割を果たしたとのこと。Hoffmann氏は「これまでならリスニングテストと試作を何十回と重ねて実現してきたことが、FEM解析を使えば、試作を作るまえにある程度予想を立てることが可能になったのです」と語っていた。

FEM解析の結果。ストレスが大きくかかっているところが色別に示されている

150mmミッドレンジについては、マグネットについてはネオジウムを採用。ポールピースには銅キャップを被せて磁気の不要な回り込みを抑制。ボイスコイルはピュアアルミのショートタイプとして、動作の正確さを高めたという。

180mmウーファーと240mmウーファーについては、エアフローを最適化したフェライトによるデュアルマグネットを採用。ボイスコイルは、グラスファイバー製のボビンにピュアアルミのコイルを巻いている。また、振幅幅を70%程度高めたロングスロー設計としたことも特徴だという。

またHoffmann氏は、従来からの同社MSP振動板の特徴として、ダストキャップが付いていないことを挙げた。「振動板の中央にダストキャップがのり付けされていると振動板の正確な動きに支障をきたし、特に高域の再生に悪影響を与えます。MSP振動板はワンピース構成とすることで、低域から高域間で良好な特性を発揮できるのです」(Hoffmann氏)

トゥイーターには、上位モデルとなるCONFIDENCEシリーズやEVIDENCEシリーズに採用された特殊コーティング・ソフトドーム・トゥイーター「ESOTAR2」を新たに搭載(従来のCONTOURではS5.4のみESOTAR2を搭載)。これにより、高域特性がこれまでのCONTOURに比べて大幅に改善したという。

トゥイーターユニット

Hoffmann氏は「ディナウディオと言えばソフトドーム・トゥイーターというイメージをお持ちの方が多いでしょう。布地でできたソフトドームトゥイーターは、付帯音や共振を排除できる点で、金属や紙素材を用いたトゥイーターより優位です」と解説。プレスで簡単に製造できる金属製トゥイーターに対して、生地の成型からコーティングとその乾燥までまで半日の行程を必要とするソフトドーム・トゥイーターはコストは高いが、音質についてはそれに代えがたい性能を発揮すると述べた。

一般的な金属トゥイーター(左)とソフトドーム・トゥイーター(右)


クロスオーバー回路も改善し、インピーダンスの“線状化”に注力

クロスオーバーもオーディオグレードの空芯コイルやムンドルフ製コンデンサー、超低許容度を誇る抵抗などを採用。高品質パーツを採用した。これらはもちろん試聴を重ねて最終決定されたという。

また、スピーカーのインピーダンスを“線状化”するすることにも注力したという。スピーカーのインピーダンスは、スペック上は4Ω、8Ωなどと定められているが、実際には周波数によって大きく変動して“波状”になっている。この点がアンプに大きな負担をかけ、音質に悪影響を与えているという。そこでCONTOURでは、インピーダンスを4Ω周辺で極力“線状化”させることでアンプの能力を最大限発揮させ、スピーカーのパフォーマンスも高めることに成功したという。

スピーカーターミナルも刷新。あえてボディをプラスチックとして、ケーブルに触れる部分にだけ金メッキを施した高純度銅プレートを配置した。「金属製の大型ターミナルのほうが音が良さそうに思えるかもしれませんが、信号伝送という観点でみたら、金属塊に接続するというのは純度を下げる要因になります。信号伝送に理想的なのはワイヤー形状であり、今回のスピーカーターミナルでは不要な金属は全て排除しました。この方法は高価なのですが、リスニングテストでは非常に良い効果が得られました」(Hoffmann氏)。

新開発されたスピーカーユニット

キャビネットがラウンドしており、柔らかな雰囲気となっていることも新CONTOURの特徴となる。ラウンド形状はディナウディオとしては初とのことで、多層構造のMDFで構成されている。バッフルはこれまでのスチールに変わって、厚さ14mmのアルミを採用。さらにトゥイーターに対しては厚さ5mmのアルミプレートが加えられている。

CONTOUR 20のアルミ製バッフル

カラーは、通常色がホワイトオーク、ウォールナット、ホワイトピアノラッカー、ブラックアルミラッカーの4色。バッフルの色はホワイトオークとホワイトピアノラッカーがナチュラルアルミ、ウォールナットとブラックアルミラッカーがブラックとなる。

また、オーダー生産の特別色としてローズウッドハイグロス、グレイオークハイグロスも登場予定。価格は、通常色に対して10〜15%程度アップする予定だという。

ユニットから自社開発する強みを改めてアピール

Hoffmann氏は冒頭で「みなさんは何を見て“これはスピーカーだ”と思いますか。私たちにとっては、ユニットを構成する小さな部品のひとつひとつまでが、音をつくり出す“スピーカー”なのです。なぜ私たちがスピーカーの全てを自分たちの手で手がけるのか。こうしたパーツを他から購入するのは簡単ですが、それでは思い通りのサウンドを追求することはできないのです」と、自社開発・自社製造の強みを改めてアピールしていた。

現在のDYNAUDIO本社社屋

建設中の研究開発棟の完成予想図

また、ディナウディオが現在、本社に隣接した土地に大型の研究開発棟を建設中であることも紹介。この中には、部屋のサイズが13m四方の“ヨーロッパ最大級”というスピーカーの計測施設も併設されるという。

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