カー&ホームオーディオ双方に力を入れる実力ショップ
<カーオーディオショップ探訪>カーオーディオは東北が熱い!大盛況のイングラフカップ&一関サウンドフリークスをレポート
カーオーディオの世界では、カーオーディオショップと車両オーナーが音質チューニングの腕を競う「コンテスト」が各地で開催され、活況を呈している。全国規模の大会以外にも、地方のショップが主体となって運営するイベントの数も増えてきている。
ここでは、近年コンテストでの躍進著しい青森の専門店「イングラフ」が開催した“イングラフカップ”と、その開催に協力する岩手県一関市の「サウンドフリークス」のショップを紹介しよう。
イングラフは、カーオーディオのみならず、ホームオーディオ・ホームシアターにも多角的に取り組む専門ショップである。かつてカーオーディオ専門店で働いていた木村智聡さんが2005年に独立し、八戸市で開業した。お店の1F部分の2/3がカーオーディオ用の作業スペース、1/3がB&W等のホームオーディオの試聴スペースとなっている。2Fは趣味のビリヤード台とホームシアターの展示スペース。
イングラフカップは、岩手県一関市のこちらもカー/ホームオーディオの専門店「サウンドフリークス」と協力して開催しているコンテスト。東北勢はここ数年全国規模のコンテストで優秀な成績を収めており、さらなる研鑽を高めるための自主企画として開催しているものだ。
とはいうものの、そこは大型イベントの緊張感とは打って変わって、親しい友人同士で集まっての旅行、情報交換、ランチには皆でBBQを囲むなど “お楽しみ” 要素も多め。
今回の参加台数は全部で24台。チーム戦となっており、1チーム3台で計8チームが参加。土方久明氏、峯岸良行氏、AV KANSAIの岩元秀明氏の3名が審査員となり、チーム3台の音を1台ずつ試聴。音が良かったチームに旗を揚げ、勝った方が勝ち進んでいくトーナメント方式のコンテストとなる。
トーナメントの対決チームはくじ引きで決まるが、どの審査員ならば高評価を狙えるか、という戦略もチーム戦ならではの重要な要素となる。
今回の参加は「チーム須田山」「サウンドフリークスA」「サウンドフリークスB」「白黒学チーム」「チームミックスグリル」「メーカーデモカーA」「メーカーデモカーB」「チームデモカー」の8チーム。午前中に4試合、午後は準決勝と決勝が行われる。
対決後は、審査員がどういったところが高評価につながったのかという簡単な講評と、さらに質を高めるためにはどのような点が課題となるかなどをそれぞれ指摘していく。
近年審査員としての全国引っ張りだこの土方氏は、定位やステージ感などコンテストの重要な要素をひとつひとつ丁寧に解説。審査員デビューとなる峯岸氏は、エンジニアならではの観点から、周波数帯域まで細かく指定して改善点をコメントしていく。
岩元氏は、オーディオとしての「クオリティ」を厳しくチェックし、いくつかの車では「絶対的なクオリティが足りない。コンビニ弁当的な感じ」と厳しい評価を下したものも。またボリュームを上げていくことで立体感を失って横に広がってしまう車もあったことを指摘。だが、上位にくる車のレベルの高さには惜しみない賛辞を贈る。
今回の優勝は「チーム須田山」。カーオーディオ&ホームオーディオに情熱を傾ける「須田山電業」の社長 須田山徹雄さんと、同社の女性社員である佐々木雅子さんと新山さつきさんによるチーム。須田山さんと佐々木さんはBMWで挑むが、新山さんは本人も大のお気に入りのホンダの軽自動車「NBOX」。
カーオーディオのコンテストといえば、BMWやアウディといった車体の強靭な輸入車が強い傾向にあるが、新山さんの「NBOX」は、オーナーの人柄も表れるような自然で淀みない豊かなサウンドで高評価を獲得。まさに「この車でドライブしたい!」と思わせる楽しさに溢れていた。
コンテスト終了後は、審査員も交えてのオーディオ談義。相互に車を試聴して感想を述べ合ったり、次のコンテストに向けた戦略の検討なども行っていく。
主催したイングラフの木村さんも、「審査員の皆さんはもちろん、新潟や関東からも多くの方が青森まで足を運んでくれて、大変活気溢れるイベントになりました。大成功です!」と喜びを見せる。イングラフカップのさらなる発展にも手応えを掴んだようだ。
東北地方でイングラフと並ぶ絶大な存在感を見せるのが、岩手県一関市の「サウンドフリークス」である。1993年、店主の佐藤清人さんが、父親が営業する酒屋のガレージでカーオーディオショップをスタートさせ、来年30周年を迎えるという老舗のオーディオショップである。
両親が亡くなった後はメインの酒屋を改装してホームオーディオの試聴スペースも設置。国内でDYNAUDIOのホーム/カーオーディオの双方を取り扱う店はサウンドフリークスのみであるなど、こだわりの製品展開と、佐藤さんの魅力的なキャラクターで、東北にとどまらず関東からも信頼して車を預けにやってくるオーナーも少なくない。
特に各地のコンテストには積極的に参加しており、「ハイコン」「ユーロコン」はもとより、イーストジャパンサウンドコンテスト、春秋のまいど大阪「車音祭」など全国各地を飛び回り、多くのコンテストで上位入賞を獲得する実力ショップだ。
イングラフカップには、自社のデモカー2台も含め計8台をエントリー。ひとりひとりのお客さんにじっくりと取り組む丁寧なチューニングが持ち味で、お客さんのスタイルに合わせてさまざまな取り付けをおこなっている。「田舎なので、車とオーディオはとても大切な娯楽なんです。どちらも趣味の世界の深い奥行きがありますよね」とお店のこだわりには自信を見せる。
現在のメインのデモカーはBMWの「X4」。今年の2月に完成した車両で、スピーカーはSTEGとムンドルフの6ウェイで構成。超高域用にリボントゥイーターを取り付けていることが特徴で、より正確な位相のチューニングを狙ったものとのこと。
アンプとDSPはBRAXを採用、またケーブルにはホーム用のWIREWORLDを投入するなど、贅を尽くしたチューニングを実施。ユーロコン2022東日本では優勝、ハイエンドカーオーディオコンテストで4位に入賞する “実力車” である。特に立体感のあるステージ表現や女性ヴォーカルの質感の再現は圧巻のひとこと。
さらにガレージの奥には、「秘密基地」のような12畳ほどのホームオーディオ用の試聴ルームが設けられている。独立した蔵のようなスペースを改装したもので、ひんやりとした空気が心地よい。その中央には、真っ赤なパラダイムのスピーカー「Persona 3F」が鎮座する。SOULNOTEのSACDプレーヤー「S-3」とプリアンプ「P-3」、パワーアンプにはTADの「TAD-M1000」を組み合わせている。
そのサウンドは非常に輪郭線のはっきりした押し出しの強いサウンドで、音楽の奔流に飲み込まれるようなエネルギッシュなパワーを感じさせる。極めて厳密にセッティングされており、試聴位置を少しでもずれるとピントを外したような音になる。ここまでの厳しい追い込みは、カーオーディオで鍛えられたシビアな耳の判断力によるものだろう。
お店のある厳美町は、観光地としても知られる厳美渓にも近く、冬の間は雪に覆われてしまう。佐藤さんも、「冬の間は暖房代もバカにならないし、お客さんも少ないから、時間をかけてホームオーディオにしっかり取り組もうと考えているんです」とこれからの計画に目を輝かせる。
カーオーディオとホームオーディオの双方を取り組んでいるからこそ、音楽をどう聴かせるか、システムのポテンシャルをどう引き出してくるかに多面的に迫ることができるのは、サウンドフリークスならではの強みでもある。コンテストでも認められる高い実力の源泉を垣間見る思いがした。
ここでは、近年コンテストでの躍進著しい青森の専門店「イングラフ」が開催した“イングラフカップ”と、その開催に協力する岩手県一関市の「サウンドフリークス」のショップを紹介しよう。
【青森県八戸市 イングラフ】
イングラフは、カーオーディオのみならず、ホームオーディオ・ホームシアターにも多角的に取り組む専門ショップである。かつてカーオーディオ専門店で働いていた木村智聡さんが2005年に独立し、八戸市で開業した。お店の1F部分の2/3がカーオーディオ用の作業スペース、1/3がB&W等のホームオーディオの試聴スペースとなっている。2Fは趣味のビリヤード台とホームシアターの展示スペース。
イングラフカップは、岩手県一関市のこちらもカー/ホームオーディオの専門店「サウンドフリークス」と協力して開催しているコンテスト。東北勢はここ数年全国規模のコンテストで優秀な成績を収めており、さらなる研鑽を高めるための自主企画として開催しているものだ。
とはいうものの、そこは大型イベントの緊張感とは打って変わって、親しい友人同士で集まっての旅行、情報交換、ランチには皆でBBQを囲むなど “お楽しみ” 要素も多め。
今回の参加台数は全部で24台。チーム戦となっており、1チーム3台で計8チームが参加。土方久明氏、峯岸良行氏、AV KANSAIの岩元秀明氏の3名が審査員となり、チーム3台の音を1台ずつ試聴。音が良かったチームに旗を揚げ、勝った方が勝ち進んでいくトーナメント方式のコンテストとなる。
トーナメントの対決チームはくじ引きで決まるが、どの審査員ならば高評価を狙えるか、という戦略もチーム戦ならではの重要な要素となる。
今回の参加は「チーム須田山」「サウンドフリークスA」「サウンドフリークスB」「白黒学チーム」「チームミックスグリル」「メーカーデモカーA」「メーカーデモカーB」「チームデモカー」の8チーム。午前中に4試合、午後は準決勝と決勝が行われる。
対決後は、審査員がどういったところが高評価につながったのかという簡単な講評と、さらに質を高めるためにはどのような点が課題となるかなどをそれぞれ指摘していく。
近年審査員としての全国引っ張りだこの土方氏は、定位やステージ感などコンテストの重要な要素をひとつひとつ丁寧に解説。審査員デビューとなる峯岸氏は、エンジニアならではの観点から、周波数帯域まで細かく指定して改善点をコメントしていく。
岩元氏は、オーディオとしての「クオリティ」を厳しくチェックし、いくつかの車では「絶対的なクオリティが足りない。コンビニ弁当的な感じ」と厳しい評価を下したものも。またボリュームを上げていくことで立体感を失って横に広がってしまう車もあったことを指摘。だが、上位にくる車のレベルの高さには惜しみない賛辞を贈る。
今回の優勝は「チーム須田山」。カーオーディオ&ホームオーディオに情熱を傾ける「須田山電業」の社長 須田山徹雄さんと、同社の女性社員である佐々木雅子さんと新山さつきさんによるチーム。須田山さんと佐々木さんはBMWで挑むが、新山さんは本人も大のお気に入りのホンダの軽自動車「NBOX」。
カーオーディオのコンテストといえば、BMWやアウディといった車体の強靭な輸入車が強い傾向にあるが、新山さんの「NBOX」は、オーナーの人柄も表れるような自然で淀みない豊かなサウンドで高評価を獲得。まさに「この車でドライブしたい!」と思わせる楽しさに溢れていた。
コンテスト終了後は、審査員も交えてのオーディオ談義。相互に車を試聴して感想を述べ合ったり、次のコンテストに向けた戦略の検討なども行っていく。
主催したイングラフの木村さんも、「審査員の皆さんはもちろん、新潟や関東からも多くの方が青森まで足を運んでくれて、大変活気溢れるイベントになりました。大成功です!」と喜びを見せる。イングラフカップのさらなる発展にも手応えを掴んだようだ。
【岩手県一関市 サウンドフリークス】
東北地方でイングラフと並ぶ絶大な存在感を見せるのが、岩手県一関市の「サウンドフリークス」である。1993年、店主の佐藤清人さんが、父親が営業する酒屋のガレージでカーオーディオショップをスタートさせ、来年30周年を迎えるという老舗のオーディオショップである。
両親が亡くなった後はメインの酒屋を改装してホームオーディオの試聴スペースも設置。国内でDYNAUDIOのホーム/カーオーディオの双方を取り扱う店はサウンドフリークスのみであるなど、こだわりの製品展開と、佐藤さんの魅力的なキャラクターで、東北にとどまらず関東からも信頼して車を預けにやってくるオーナーも少なくない。
特に各地のコンテストには積極的に参加しており、「ハイコン」「ユーロコン」はもとより、イーストジャパンサウンドコンテスト、春秋のまいど大阪「車音祭」など全国各地を飛び回り、多くのコンテストで上位入賞を獲得する実力ショップだ。
イングラフカップには、自社のデモカー2台も含め計8台をエントリー。ひとりひとりのお客さんにじっくりと取り組む丁寧なチューニングが持ち味で、お客さんのスタイルに合わせてさまざまな取り付けをおこなっている。「田舎なので、車とオーディオはとても大切な娯楽なんです。どちらも趣味の世界の深い奥行きがありますよね」とお店のこだわりには自信を見せる。
現在のメインのデモカーはBMWの「X4」。今年の2月に完成した車両で、スピーカーはSTEGとムンドルフの6ウェイで構成。超高域用にリボントゥイーターを取り付けていることが特徴で、より正確な位相のチューニングを狙ったものとのこと。
アンプとDSPはBRAXを採用、またケーブルにはホーム用のWIREWORLDを投入するなど、贅を尽くしたチューニングを実施。ユーロコン2022東日本では優勝、ハイエンドカーオーディオコンテストで4位に入賞する “実力車” である。特に立体感のあるステージ表現や女性ヴォーカルの質感の再現は圧巻のひとこと。
さらにガレージの奥には、「秘密基地」のような12畳ほどのホームオーディオ用の試聴ルームが設けられている。独立した蔵のようなスペースを改装したもので、ひんやりとした空気が心地よい。その中央には、真っ赤なパラダイムのスピーカー「Persona 3F」が鎮座する。SOULNOTEのSACDプレーヤー「S-3」とプリアンプ「P-3」、パワーアンプにはTADの「TAD-M1000」を組み合わせている。
そのサウンドは非常に輪郭線のはっきりした押し出しの強いサウンドで、音楽の奔流に飲み込まれるようなエネルギッシュなパワーを感じさせる。極めて厳密にセッティングされており、試聴位置を少しでもずれるとピントを外したような音になる。ここまでの厳しい追い込みは、カーオーディオで鍛えられたシビアな耳の判断力によるものだろう。
お店のある厳美町は、観光地としても知られる厳美渓にも近く、冬の間は雪に覆われてしまう。佐藤さんも、「冬の間は暖房代もバカにならないし、お客さんも少ないから、時間をかけてホームオーディオにしっかり取り組もうと考えているんです」とこれからの計画に目を輝かせる。
カーオーディオとホームオーディオの双方を取り組んでいるからこそ、音楽をどう聴かせるか、システムのポテンシャルをどう引き出してくるかに多面的に迫ることができるのは、サウンドフリークスならではの強みでもある。コンテストでも認められる高い実力の源泉を垣間見る思いがした。
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