コンセプトは「LIVE!」

サントリー白州蒸溜所、10月リニューアルオープン。豊かな森に囲まれた新施設を体験

公開日 2023/09/28 18:40 星川まさる
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サントリーの創業者・鳥井信治郎が1923年に「山崎蒸溜所」の建設に着手し、ウイスキーづくりをはじめて今年で100周年。そして1973年に竣工されたのが「白州蒸溜所」。

白州蒸溜所は50周年にあたる今年、さらなる品質向上や魅力の強化を目指し施設改修によるリニューアルが行われ、10月2日より一般公開されることになった。それに先立ち、9月15日に取材会が行われた。

新しく設置されたビジターセンター。ここが受付となりツアーがスタートする。花崗岩などを外壁などに使用し、外光がふんだんに差し込む室内はシンプルで白州の自然を感じさせてくれる

サントリーの良質なウイスキーづくりは世界に認められており、シングルモルトウイスキー「白州25年」が、世界的なコンペティションISC2022で最高賞の「トロフィー」を受賞。そして今年はISC2023でサントリーが「プロデューサー オブ ザ イヤー」を受賞している。

白州蒸溜所は、豊かな森に囲まれ“森の蒸溜所”とも呼ばれ、南アルプス甲斐駒ケ岳のふもとの広大な自然に囲まれた場所で、水や気候などの自然条件だけでなく、発酵槽や蒸溜釜などの違いから、山崎蒸溜所とは個性の異なる原酒を生み出し続けている。

また、サントリーの理念である「人と自然と響きあう」ことを体現する蒸溜所として、コンセプトを「森林公園工場」として、敷地内に「バードサンクチュアリ」を有し、竣工当時から愛鳥活動などの取り組みを行ってきた。

取材会で説明を行ったサントリー株式会社 常務執行役員・原酒開発生産本部長の栗原勝範氏(右)と白州蒸溜所 工場長の有田哲也氏(左)

新しい白州蒸溜所のコンセプトは「LIVE!」。蒸溜所の全てを五感で味わってほしいとの意味である。施設の主なリニューアルは以下の通り。

●ビジターセンター
蒸溜所と天然水工場の敷地全体を包み込む“白州の森”の魅力を知ってもらえるように新たに設置。建築資材やデザインには、花崗岩・森・水という、白州の自然環境を語る上で欠かせない要素を随所に取り入れ、場内見学や見学ツアーの受付を設けるほか、新たにジオラマを設置し、敷地全体を視覚的に理解できる空間や、オリジナルグッズを購入できるギフトショップも併設されている。

ビジターセンター内に設置された北周の森の全体を体感できるジオラマ。自然に還る素材を使い、鳥などさまざまな生き物が作り込まれているなど、多彩な工夫が凝らせており、じっくり眺めるだけで楽しくなってしまう

●バードサンクチュアリ
白州蒸溜所では、竣工当時より敷地内に野鳥の保護区「バードサンクチュアリ」を設けているが、白州の自然環境をより身近に感じてもらいたいという思いから、新たに「バードサンクチュアリ」でのサントリーの取り組みや、森に住む鳥たちについての展示を行うほか、鳥の声を聴くことができる集音機などの造作物を設置。

●セントラルハウス
「テイスティングラウンジ」では、“白州の森”の魅力を存分に感じられるように壁一面の窓越しに広がる森を見ながらリラックスできる空間を演出。「白州」ブランドをはじめ稀少なウイスキーのテイスティングや、「サントリーシングルモルトウイスキー白州」と合わせたフードペアリングなどを楽しめる。また、併設された「セントラルハウスGift Shop」では、白州蒸溜所ならではのグッズを取り揃えている。

シングルモルトウイスキー「白州」のラインアップとISCで受賞した「プロデューサー オブ ザ イヤー」のグラス

セントラルハウス内にある「テイスティングラウンジ」。壁一面に広がる“白州の森”を観なから試飲ができる

なお、施設の改修は続いており「バードブリッジ」「フォレストテラス(レストラン)」は2024年以降の完成となる。

さらに白州蒸溜所の見学ツアーも大きく刷新され、進化を遂げた。いずれも要予約となっている(20歳未満の方は参加できない)。

(1)「白州蒸溜所 ものづくりツアー」
・所要時間:90分
・参加費:3,000円(税込)
・主な内容:「サントリーシングルモルトウイスキー白州」が生まれるものづくり現場を見学し、香りや温度を五感で体感できるツアー。テイスティングでは「白州」や希少な「モルトウイスキー原酒」、「白州森香るハイボール」を提供。ツアー後には、「白州オリジナルテイスティンググラス」を持ち帰ることができる。

つくりの場の見学の冒頭には、模型に合わせたプロジェクションマッピングによるウイスキー製造工程が説明される。視覚的に見ることができるので、とても分かりやすい


ツアーでは仕込み槽の中も見ることができ、香りも体感できる


白州蒸溜所の発酵槽(左)とポットスチル(右)。白州蒸溜所では発酵槽はすべて木桶にこだわっている点が特徴。今回のツアーでは、発酵槽の中を覗いてみたり、香りを嗅ぐこともできる。なお来年には原料にさらにこだわりを投入し、フロアモルティングと酵母培養プロセス(自製化)がスタートする予定で、さらなる品質向上に取り組む

(2)「白州蒸溜所 ものづくりツアー プレミアム」
・所要時間:130分
・参加費:5,000円(税込)
・主な内容:サントリーシングルモルトウイスキー「白州」ブランドが生まれるものづくり現場を見学。香りや温度を五感で体感。「プレミアム」ツアーでしか立ち寄れないグレーンウイスキーの製造エリア見学や貯蔵庫内での特別なテイスティングを通して、つくり手のこだわりや、自然環境をじっくりと案内。テイスティングでは「白州12年」や希少な「モルトウイスキー原酒」などが提供され、ツアー後には「白州オリジナルテイスティンググラス」と「グラスホルダー」を持ち帰れる。

筆者は『季刊・analog誌』の取材などで何度も白州蒸溜所を訪れたが、今回は実に十数年ぶりの訪問となった。最寄り駅の小淵沢駅が綺麗な駅舎となったのにまず驚き、さらに実際の取材ツアーに参加して、白州蒸溜所の施設が大きな進化を遂げ充実度が増大していたことに感動した。

ウイスキー博物館の内部もリニューアルされており、見ごたえ抜群だ

自然を満喫しながら、こだわりのウイスキーづくりを知ることができる白州蒸溜所は、今回のリニューアルによって、より魅力あふれる特別な場所となったといえるだろう。また、つくりの現場で味わうフレッシュでややスモーキーなシングルモルト「白州」の味も格別である。

貯蔵庫ではウイスキー原酒がさまざまな樽の中で長い時間をかけて熟成されている

未体験の方も、以前行ったことのある方も、ぜひ訪れてツアーに参加し、体験型の蒸溜所を楽しんでいただきたい。

見学の後、試飲も行われた。説明はサントリー株式会社 ブレンダー室 室長の野口雄志氏が行った

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