世界各国から1万人以上が来場
<AXPONA>BtoBの場としても活気溢れるアメリカ最大のオーディオイベント。市場開拓の足がかりにも繋がる
4月12日から14日まで開催されていた北米最大級のオーディオショウ、AXPONA(アクスポナ)。会期を終え3週間ほど経ったところで、海外のHiFiオーディオサイトやYouTube等でも各種レビューが出揃ってきた。改めてこのショウの役割について振り返ってみよう。
運営事務局より、今年の来場者数は全世界31か国からのべ10,391人、昨年よりも14%増えたと発表された。代表のリズ・スミス氏のコメントによると、特に増えたのが「アクスポナに初めて来場した人」とのことで、アメリカ国内はもとより、アジアやヨーロッパからの出展社、メディアも含めグローバルな来場者が大きく増加したという。
さらに、Z世代の来場者は昨年より倍増したとのこと。現地で取材してみた記者としても、基本的に男性来場者が圧倒的に多いのはどこのオーディオショウでも変わらないが、特に土曜日は家族連れや若いカップルの来場も目立ち、部屋から部屋へと回りながらさまざまな音を楽しむ様子を見ることができた。
1万人強と言えば、コロナ禍前の東京インターナショナルオーディオショウとほぼ同じくらい。アメリカの国土の広さや人口を考えると、「日本もまだまだオーディオのビッグマーケットであるのだな」という思いも新たにするが、やはりアクスポナならではの面白さとして、200を超える膨大な部屋数、そして国籍・人種を問わずオーディオビジネスに関わる人々が参加するグローバルなイベントであることが挙げられるだろう。
音楽ファン・オーディオファンはもちろんだが、アメリカ市場の開拓を狙うアジアやヨーロッパのハイエンドメーカー、新たな商材を探すディストリビューター、アメリカ各州のディーラーも集結しており、BtoBのビジネスの場としての活気も感じられる。
ブースの多くはアメリカ国内の輸入代理店が展開しており(日本で言えばステラ、アクシス、太陽インターナショナルといった輸入商社ごとに部屋が分かれているイメージ)、その代理店が取り扱う製品の組み合わせによる紹介が多い印象を受けた。だが、中にはシカゴのハイエンドオーディオショップによるシステムプランの提案や、メーカー出展と思われるブースもあり、さまざまなオーディオ製品の組み合わせを味わうことができる。
ホテルのロビーから16Fまでほぼ全てのフロアが使用されており(なお13Fが“そもそも存在しない”のは日本人にとっては新鮮)、3Fから16Fまでは、廊下の左右に設けられた客室がブースとなっている。いずれもスピーカー間をギリギリ2mとれるかどうか、とそれほど広い部屋ではないが、各々工夫を凝らしたブース設営が行われていた。1Fと2Fのカンファレンスルーム、上階フロアのVIP向けラウンジではより大掛かりなシステムが組まれている。
RoonやQobuzを用いたストリーミング再生が主流なことはすでにレポートしたとおりだが、アメリカの出展者によれば「昨年よりレコード再生を扱うブースが大きく増えていますね」という声もあり、アナログブームはアメリカでもますます拡大しているようだ。1Fに設けられた高音質ソフト、中古レコードの販売ブースも賑わいを見せていた。
TADのUS代理店であるPad Hifiの社長、DAVE氏に話を聞くことができた。もともとプロ向けスピーカーユニットの販売にも長く関わっており、TADブランドへの深い思い入れも感じられた。「今は国内ディーラーは4つですが、さらに増やしていきたいと考えています。しかし急激に増やしすぎるのも課題で、やりすぎると価格破壊を招いてしまう可能性があります」。信頼できるディーラーとの密なコミュニケーションが必要というのは、どこの国でも同じようだ。
またエソテリックの代理店であるplayback distributionのKeith氏によると、「エソテリックのここ数年のアンプの進化は目覚ましいものがあります。Grandioso M1Xの開発で培われたスピーカーを強力にコントロールする技術は素晴らしいですし、その製品がしっかり“Fシリーズ”のプリメインアンプにも活用されているのを感じています」と期待を寄せる。
また、日本発の「高音質音源」もアメリカでは注目が高い。平面型スピーカーを進化させたような独特の形状が特徴であるLinkwitzスピーカーのブースでは、昨年発売になった山本 剛の『A SHADE OF BLUE』(EVOSOUND)によるデモンストレーションも実施。
アメリカのウェブメディア「Audiophile Style」のChris Connaker氏がこの音源に惚れ込んでこの企画を実現したということで、「音楽家と録音のレベルがここまで高い音源はなかなかありません!」と大絶賛。「山本 剛さんは80歳を超えているのに、まるでティーンエイジャーみたいなピアノの弾き方をするんです」と笑いを誘うが、確かにLinkwitzのスピーカーから引き出される「ミッドナイトシュガー」のエネルギッシュなパワーには圧倒される。精緻だが甘やかなLinkwitzのスピーカーの魅力もしっかり感じられた。
アメリカ本土での販路拡大に力を注ぐのは日本メーカーだけではない。アジアのメーカーも虎視眈々と市場拡大を目指す。
台湾のオーディオメーカー4社は共同ブースを展開。スピーカーを中心とする鹿港音響(Lu Kang Audio)、ケーブルやイヤホンなどを展開しているRanko Acoustics、強化電源を展開するEAhibrid、真空管アンプなどを展開するJOLIDAの4社である。
鹿港音響は、「Spoey 230」というシンプルな2ウェイスピーカーをメインで展開。ウッドキャビネットにフロントバスレフとシンプルな構成だが、非常に品の良く透明感の高いサウンドを聴かせてくれる。ユニットはデンマークのAudio Technology製を採用、ネットワークパーツにもこだわった丁寧な作りがポイントで台湾国内でも評価が高いという。代表のRoxさんは先日来日し、日本のディーラーにもスピーカーを紹介し手応えを得ているということで、今後国内での展開も非常に楽しみだ。
EAhibridは、静電型トゥイーターなどで知られるEnigmaAcousticのメンバーが立ち上げた新しいブランド。バッテリー搭載のリニア電源「PureDC-B1H」はなかなか興味深く、「ルーターやハブなどの電源強化を想定した製品です」。19Vと24Vの選択が可能とのこと。ルーター等の電源を良質なものとすることで音質向上が見られるというのは、にわかには信じ難いことだが(!)、どうも効果のほどは世界的にも認められているようだ。今後のネットワークオーディオの音質向上の可能性として期待したい。
2019年にOTOTENに出展、昨年のミュンヘン・ハイエンドでも会場を沸かせた巨大ホーンメーカーESD Acousticもアクスポナに出展。ネットワークオーディオメーカーとしても知られるAURALiCと組んでブースを展開、アメリカ市場に向けても大きく存在をアピールしていた。
運営事務局より、今年の来場者数は全世界31か国からのべ10,391人、昨年よりも14%増えたと発表された。代表のリズ・スミス氏のコメントによると、特に増えたのが「アクスポナに初めて来場した人」とのことで、アメリカ国内はもとより、アジアやヨーロッパからの出展社、メディアも含めグローバルな来場者が大きく増加したという。
さらに、Z世代の来場者は昨年より倍増したとのこと。現地で取材してみた記者としても、基本的に男性来場者が圧倒的に多いのはどこのオーディオショウでも変わらないが、特に土曜日は家族連れや若いカップルの来場も目立ち、部屋から部屋へと回りながらさまざまな音を楽しむ様子を見ることができた。
1万人強と言えば、コロナ禍前の東京インターナショナルオーディオショウとほぼ同じくらい。アメリカの国土の広さや人口を考えると、「日本もまだまだオーディオのビッグマーケットであるのだな」という思いも新たにするが、やはりアクスポナならではの面白さとして、200を超える膨大な部屋数、そして国籍・人種を問わずオーディオビジネスに関わる人々が参加するグローバルなイベントであることが挙げられるだろう。
音楽ファン・オーディオファンはもちろんだが、アメリカ市場の開拓を狙うアジアやヨーロッパのハイエンドメーカー、新たな商材を探すディストリビューター、アメリカ各州のディーラーも集結しており、BtoBのビジネスの場としての活気も感じられる。
ブースの多くはアメリカ国内の輸入代理店が展開しており(日本で言えばステラ、アクシス、太陽インターナショナルといった輸入商社ごとに部屋が分かれているイメージ)、その代理店が取り扱う製品の組み合わせによる紹介が多い印象を受けた。だが、中にはシカゴのハイエンドオーディオショップによるシステムプランの提案や、メーカー出展と思われるブースもあり、さまざまなオーディオ製品の組み合わせを味わうことができる。
ホテルのロビーから16Fまでほぼ全てのフロアが使用されており(なお13Fが“そもそも存在しない”のは日本人にとっては新鮮)、3Fから16Fまでは、廊下の左右に設けられた客室がブースとなっている。いずれもスピーカー間をギリギリ2mとれるかどうか、とそれほど広い部屋ではないが、各々工夫を凝らしたブース設営が行われていた。1Fと2Fのカンファレンスルーム、上階フロアのVIP向けラウンジではより大掛かりなシステムが組まれている。
RoonやQobuzを用いたストリーミング再生が主流なことはすでにレポートしたとおりだが、アメリカの出展者によれば「昨年よりレコード再生を扱うブースが大きく増えていますね」という声もあり、アナログブームはアメリカでもますます拡大しているようだ。1Fに設けられた高音質ソフト、中古レコードの販売ブースも賑わいを見せていた。
TADのUS代理店であるPad Hifiの社長、DAVE氏に話を聞くことができた。もともとプロ向けスピーカーユニットの販売にも長く関わっており、TADブランドへの深い思い入れも感じられた。「今は国内ディーラーは4つですが、さらに増やしていきたいと考えています。しかし急激に増やしすぎるのも課題で、やりすぎると価格破壊を招いてしまう可能性があります」。信頼できるディーラーとの密なコミュニケーションが必要というのは、どこの国でも同じようだ。
またエソテリックの代理店であるplayback distributionのKeith氏によると、「エソテリックのここ数年のアンプの進化は目覚ましいものがあります。Grandioso M1Xの開発で培われたスピーカーを強力にコントロールする技術は素晴らしいですし、その製品がしっかり“Fシリーズ”のプリメインアンプにも活用されているのを感じています」と期待を寄せる。
また、日本発の「高音質音源」もアメリカでは注目が高い。平面型スピーカーを進化させたような独特の形状が特徴であるLinkwitzスピーカーのブースでは、昨年発売になった山本 剛の『A SHADE OF BLUE』(EVOSOUND)によるデモンストレーションも実施。
アメリカのウェブメディア「Audiophile Style」のChris Connaker氏がこの音源に惚れ込んでこの企画を実現したということで、「音楽家と録音のレベルがここまで高い音源はなかなかありません!」と大絶賛。「山本 剛さんは80歳を超えているのに、まるでティーンエイジャーみたいなピアノの弾き方をするんです」と笑いを誘うが、確かにLinkwitzのスピーカーから引き出される「ミッドナイトシュガー」のエネルギッシュなパワーには圧倒される。精緻だが甘やかなLinkwitzのスピーカーの魅力もしっかり感じられた。
アメリカ本土での販路拡大に力を注ぐのは日本メーカーだけではない。アジアのメーカーも虎視眈々と市場拡大を目指す。
台湾のオーディオメーカー4社は共同ブースを展開。スピーカーを中心とする鹿港音響(Lu Kang Audio)、ケーブルやイヤホンなどを展開しているRanko Acoustics、強化電源を展開するEAhibrid、真空管アンプなどを展開するJOLIDAの4社である。
鹿港音響は、「Spoey 230」というシンプルな2ウェイスピーカーをメインで展開。ウッドキャビネットにフロントバスレフとシンプルな構成だが、非常に品の良く透明感の高いサウンドを聴かせてくれる。ユニットはデンマークのAudio Technology製を採用、ネットワークパーツにもこだわった丁寧な作りがポイントで台湾国内でも評価が高いという。代表のRoxさんは先日来日し、日本のディーラーにもスピーカーを紹介し手応えを得ているということで、今後国内での展開も非常に楽しみだ。
EAhibridは、静電型トゥイーターなどで知られるEnigmaAcousticのメンバーが立ち上げた新しいブランド。バッテリー搭載のリニア電源「PureDC-B1H」はなかなか興味深く、「ルーターやハブなどの電源強化を想定した製品です」。19Vと24Vの選択が可能とのこと。ルーター等の電源を良質なものとすることで音質向上が見られるというのは、にわかには信じ難いことだが(!)、どうも効果のほどは世界的にも認められているようだ。今後のネットワークオーディオの音質向上の可能性として期待したい。
2019年にOTOTENに出展、昨年のミュンヘン・ハイエンドでも会場を沸かせた巨大ホーンメーカーESD Acousticもアクスポナに出展。ネットワークオーディオメーカーとしても知られるAURALiCと組んでブースを展開、アメリカ市場に向けても大きく存在をアピールしていた。
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