デビアレ、最新ネットワーク対応プリメイン「ASTRA」発表。アートとテクノロジーを融合したラグジュアリーモデル
完実電気は、フランスのオーディオメーカーのDEVIALET(デビアレ)より、ネットワーク対応プリメインアンプ「ASTRA」を4月中旬より発売する。その新製品発表会が開催され、アジアマネージャーのマーティン・クーさんと、開発責任者であるジャン・ループさんが来日。最新のデビアレ・テクノロジーについてたっぷり解説してくれた。

デビアレは、先進的なデジタル・オーディオ・テクノロジーを有する特異なブランドである。発表会の冒頭、マーティンさんは「デビアレは2010年にD-Premierを発売し、わたしたちの技術を搭載したプリメインアンプを世の中に送り出しました。そこから15年間、技術をさらに発展させ、現在では250以上の特許を取得しています。そして今日、その集大成であるASTRAを日本の皆さんにご紹介できることを非常に光栄に思っています」と挨拶。そしてデビアレの製品は「アートとテクノロジーを融合した製品となっています」と胸を張る。

現在の開発を率いるジャン・ループさんは、もともとゴールドムンドでエンジニアのキャリアをスタート。その後STENHEIMというスピーカーブランドの立ち上げにも関わっていたという。実はデビアレとも縁が深く、エンジニアとしてアクティブスピーカー「Phantom」、そして後述する「SAM」(Speaker Active Matching)テクノロジーの開発にも関わっていたそうだ。その後、正式にデビアレの技術チームに参画したという経緯がある。

「ASTRA」についてジャンさんは、「ネットワーク、DAコンバーター、フォノイコライザー、そしてプリメインアンプまでが一体となったコンパクトかつ多機能な製品です」と強調する。ハイエンドなオーディオを指向するものであるが、省スペースかつラグジュアリーなデザインも大切にしており、ライフスタイルの中に自然に溶け込むような製品開発を目指しているという。

ネットワークとしては、AirPlay、Google Cast、Spotify Connect、Tidal Connect、UPnP、Roon Readyにも対応。本機とスピーカーだけでさまざまなネットワーク再生を実現することができるため、リビングにも設置できるシンプルなオーディオシステムを構築することができるのだ。
ASTRAにも関わる代表的な特許技術は以下の4点。クラスAとクラスDアンプをハイブリッドした「ADH」(Analog Digital Hybrid)、内部配線を最適化して信号の劣化を抑える「MAJIC WIRE」、個別のスピーカーに最適化された出力を送り出す「SAM」(Speaker Active Matching)、アナログ再生のイコライザーカーブをデジタルで調整する「RAM」(Record Active Matching)がある。それぞれについて詳しく説明しよう。

「ADH」はデビアレの核となる技術で、初号機のD-Premierにも搭載されている増幅技術である。クラスAで電圧増幅、クラスDで電流増幅を行うことで、音質的な豊かさと効率の良さを両立。今回のASTRA開発にあたってADHも最新世代に刷新されており、「特に5kHz以上の高域再生において歪みをさらに低減しています」とジャンさん。クラスAとクラスDをコントロールするアルゴリズムが進化しており、より早く、また高い解像度での信号処理を実現しているという。
また「MAJIC WIRE」は、PCB基板を再設計し、DACチップとADHの接続をより最適化した技術となる。DACチップからは電流出力されており、アンプの前の抵抗で電圧に変換され、アンプ部(ADH)に送られる。電流出力ではDCオフセットが紛れ込み信号に歪みをもたらす可能性があるため、高精度なバイアス電流をかけて歪みのない信号のみを出力する技術になるという。
「SAM」は、それぞれのスピーカーに対して最適化された「低域」を送り出す技術で、デビアレには1,200以上のデータベースが用意されている。接続するスピーカーに合わせてアプリ上で設定することで、不要な低域の動きをコントロールし、より正確な位相を実現する。またスピーカーに対する保護機能としても働くという。
また「RAM」はフォノイコライザーの機能で、RIAAやCOLUMBIAなどの各種カーブをデジタルドメインでより「正確」に処理することができる。「もしこれをアナログ回路でやろうとしたら、サイズはもっともっと大きく、またコストもかかってしまうでしょう」とジャンさん。専用アプリもしくはブラウザ上から、MCカートリッジのインピーダンスやMMカートリッジの負荷容量などを調整できるようになっている。
これら4つの技術により、ASTRAではTHD+Nは0.001%(10W/4Ω)という非常に優れた特性を実現。オーディオプレシジョンのアナライザーで測定したグラフによると、高い周波数までほぼフラットな特性を実現していることが分かる。ジャンさんも、「特に高い周波数帯での低い歪みは、最新世代のADHの技術によるものと自負しています」と自信を見せる。
またASTRAでは、入力の設定やSAM、RAMなどを“アプリ経由で設定できる”ことも大きな特徴。これまでの「Expert Pro」ではSDカードに各種設定をインストールして本体に差し込む形式であったが、今回はアプリもしくはPCのブラウザ上から行えるため、よりスムーズなセットアップが可能となる。また手触り感のよい豪奢なリモコンも付属する。

ASTRAのラインナップとしては、1台で完結するステレオアンプと、モノラル構成(2台ペア)を用意。また仕上げはLight Bronzeと、パリのオペラ座とコラボレーションした「Opera de Paris」(オペラ座)をそれぞれ用意。なお外観上の違いのみで、内部技術はいずれも同じとのこと。
Expertは輝く銀色の鏡面仕上げが特徴であったが、今回のASTRAではより大人びたアノダイズ仕上げを採用。また側面にラインがあしらわれているのも今回からのデザイン変更となる。

オペラ座モデルでは、上面にガルニエ宮の黄金装飾をイメージした「ゴールドリーフ」と呼ぶ美しいデザインがあしらわれている。フランスの技術者が、金箔を一枚一枚丹念に手作業で張り込むことで実現できる、非常にラグジュアリーな仕上げとなっている。
入力端子はライン入力のRCAが2系統。これらは設定でフォノ入力(MM/MC)、もしくは同軸デジタル(最大4系統)に設定変更することができる。またデジタル入力としてUSB typeC入力、TOSLINK入力を2系統搭載。スピーカー端子は1系統搭載する。

なおDSD再生にはUSB typeC(DSD128まで)と同軸/光入力(DSD64まで)のみで対応。UPnP再生ならびにRoon再生(RAAT)ではDSD再生に非対応となる。
またASTRAは1台でも非常に優れたネットワーク・プリメインアンプとしても活用できるが、Expert Pro同様マルチアンプとしても活用できる。デジタルドメインで帯域分割を行い、トゥイーター、ミッドレンジ、ウーファーそれぞれに対して、DSPから最適な信号を送り出す、といったさらに高度な使用方法も可能となる。
短時間であるが試聴の時間も設けられた。「ASTRA Dual mono」をソナス・ファベールの「Amati G5」にて試聴。送り出しにはルーミンのネットワークプレーヤーを用いている。低域の制動力の高さと上質な手触り感を持つクールな高域表現が特徴的で、パトリシア・バーバーの声の深みをしっかり引き出してくれる。ケント・ナガノによるサン=サーンス「交響曲第3番 オルガン付き」でも、広大なサウンドステージを雄大に描き出してくれた。

ASTERAの価格は以下の通り(税込)
Light Bronze仕上げ
ステレオ(Solo) 2,796,000円
デュアル・モノ(Dual Mono) 5,592,000円
Opera de Paris仕上げ
ステレオ(Solo) 3,496,000円
デュアル・モノ(Dual Mono) 6,692,000円
サイズは386W×386D×47Hmm、質量は7.2kg。定格出力は、ステレオの場合300W×2(4Ω)、150W×2(8Ω)、モノラルの場合は600W×2(4Ω)、300W×2(8Ω)。周波数特性は20Hz-80kHz(±2.3dB)、S/Nは-117dB。ダンピングファクターは2000(ステレオ)、1400(デュアル・モノ)となっている。
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