「3社で世界で勝つ」 − 松下・キヤノン・日立の各社長がパネル事業提携で会見
松下電器産業(株)、(株)日立製作所、キヤノン(株)の3社は、液晶・有機ELディスプレイ分野で包括的な提携を行うことで基本合意。本日夕方、3社の社長が記者会見を行った。
提携の内容は、すでに別項のニュースでお伝えしたとおり。日立の100%子会社である(株)日立ディスプレイズの株式を、日立が松下とキヤノンに24.9%ずつ譲渡。譲渡後、日立の日立ディスプレイズへの出資比率は50.2%となる。将来的には、キヤノンが株式の過半を取得し、経営権を握る予定。
さらに松下は、液晶パネル設計・製造・販売会社、(株)IPSアルファテクノロジの事業運営への関与を深めると表明。こちらも日立ディスプレイズと同様、将来的に松下が株式の過半数を取得し、松下主導でIPSアルファの次期工場の建設を行う計画だ。なお、キヤノンと松下がそれぞれ株式の過半を取得するタイミングについては、現在協議中とのこと。
本日行われた会見でキヤノンの内田恒二社長は、「今回の提携により、今後キヤノンでは中小型液晶パネルに力を入れていく」と表明。同社では主要キーパーツの内製化を進めており、デジタル一眼レフカメラなどに採用する中小型液晶ディスプレイを自社で生産することも、その戦略に沿ったもの、と説明した。内田氏は「我々が目指しているのは高画質。IPSは液晶パネルの中で最も高画質であると判断し、今回の出資を決めた」とした。
また内田氏は、同社がまもなく子会社化する、有機ELディスプレイの製造装置メーカーであるトッキも引き合いに出し、「有機ELの共同開発を加速する」と述べた。
内田氏はさらに、「こういう話をすると、必ず『SEDはどうなっているんだ』という声が上がると思うが、現在控訴審中であり、技術開発に邁進している。決してあきらめたわけではない。SEDの発売を中止するということはまったくない」と、SEDの開発をこれまでどおり進める考えを表明。「我々はこれまで動画ディスプレイを持っていなかったが、今回の提携により、中小型液晶、有機EL、そしてSEDと、映像機器向けのディスプレイを強化できる」と、提携の意義を強調した。
続いて挨拶した松下電器産業 社長の大坪文雄氏は、「現在、BRICsやベトナムなどまで含め、グローバルに薄型テレビの普及が進んでいる。大型化も我々の予測を遙かに超えて進んでいる」と、薄型テレビを取り巻く現状について説明。また、「これまでどおり、PDPを基軸に薄型テレビ事業を行っていく方針は変わらない。37V型以上で25%以上のグローバルシェア、という目標はこれまで通り堅持する。ただし、消費者ニーズは多様化しており、液晶テレビへの対応は急務。今回の提携により、中長期かつ安定的にIPSアルファのパネルが調達できるのは大きなメリットだ」と、提携のねらいについて説明。「PDPと同じく、液晶パネルでも垂直統合化を力強く推進していく」とした。
なお現在、東芝はIPSアルファテクノロジーの株式15%を保有しているが、これについて大坪氏は「弊社へ全数を譲渡してもらうことで合意した」と語った。
プラズマと液晶の棲み分けについて聞かれた大坪氏は、「テレビ事業は、大画面に強いPDPで引っ張る、という方針にいささかの変わりもない。これまでどおり37V型以上はPDPでやっていく。ただし、先ほども申し上げたとおりニーズは多様化しており、一部で液晶の大型化も進める」とした。なお、同社が建設を表明していたプラズマパネルの尼崎第5工場については、「先月、予定通り着工した。計画に一切変更はない」と述べた。
また、将来的に計画しているという、松下が主導して建設する予定のIPSアルファの次期工場では、「30V型台のパネルを効率的に生産できる、第7世代、第8世代の生産設備を導入する予定」という。次期工場の稼働時期、投資金額等は未定という。
大坪氏はまた、「有機ELと液晶は技術的な共通点も多い」とし、有機ELテレビへの期待も表明。ただし、実用化には「まだ少し時間がかかる。いつという計画はない」とした。
日立製作所 社長の古川一夫氏は、今回の提携について「我々も長年パネル事業をやってきたが、最終製品とパネルの結びつきが非常に重要になってきている。パネルは純粋なデバイスではなくなってきて、1社だけでは世界で勝てるものではない。こういう状況の中で今回、世界的なテレビメーカーである松下様、世界ナンバーワンのカメラメーカーであるキヤノン様と提携することで、3社で世界で勝つことができると考えた」と説明。提携を提案した会社や時期などについては、「長年、両社様にパネルを供給する中で信頼関係が醸成され、自然に、いつどこでということではなく、こういう場を迎えた」と述べた。
以下、記者会見で行われた主な質疑応答をご紹介する。
Q:SEDと有機EL、液晶ディスプレイのそれぞれの位置づけを教えて欲しい。
A:SEDは当初から55インチクラスの大型パネルを想定している。今回の液晶ディスプレイは主にデジカメ用で、中小型向けとなる。有機ELについては、自発光型なので、屋外での視認性が良い。これもカメラ向けに考えている。(内田氏)
Q:東芝松下ディスプレイテクノロジー(TMD)とIPSアルファの関係はどうなるのか。
A:今後も東芝様とは協業を継続していく。IPSはテレビ向け、TMDは中小型液晶が中心で、特に問題があるわけではないと認識している。(大坪氏)
Q:日立ディスプレイズとIPSアルファはともに赤字会社だが、ここへ新たに出資することに問題はないか。
A:IPSアルファは昨年第2クォーターを迎えたばかりで、最近は収益も改善している。我々のディスプレイのもう一つの柱である液晶パネルの安定調達が可能になり、必ずや利益につながると考えている。(大坪氏)
Q:キヤノンはIPSアルファへ2%出資しているというが、これは今後どうなるのか?
A:我々が半導体製造装置を納入していることから取得したものであり、必要ならば譲渡することも考えている。(内田氏)
Q:有機ELテレビを作る上での課題を教えて欲しい。
A:我々は研究所での取り組みも含め、有機ELについては隅から隅まで知っている。問題は3つある。1つは量産性で、研究所レベルで試作機を作ることはたやすいが、これを日産何万とか何十万とかにすることは難しく、大きな課題だ。2つめはコストで、液晶などに比べるとまだ差はある。3つめは大型化で、30〜40インチクラスにするにはまだ課題がある。事業として行うにはまだ時間がかかるだろう。(古川氏)
Q:有機ELには低分子型と高分子型があるが、日立ではこれまでどちらを研究していたのか。
A:有機ELについてはすべての研究を行っており、低分子も高分子もやっている。(古川氏)
Q:IPSアルファと日立ディスプレイズの今後のユーザー構成はどうなっていくのか。
A:IPSアルファの、現在の最大顧客は松下様。よく言われているように液晶パネルの需要は逼迫しており、今後すぐに外販が増えることはない。日立ディスプレイズの最大ユーザーは、時期によって色々と入れ替わっているというのが現状だ。(古川氏)
(Phile-web編集部)
提携の内容は、すでに別項のニュースでお伝えしたとおり。日立の100%子会社である(株)日立ディスプレイズの株式を、日立が松下とキヤノンに24.9%ずつ譲渡。譲渡後、日立の日立ディスプレイズへの出資比率は50.2%となる。将来的には、キヤノンが株式の過半を取得し、経営権を握る予定。
さらに松下は、液晶パネル設計・製造・販売会社、(株)IPSアルファテクノロジの事業運営への関与を深めると表明。こちらも日立ディスプレイズと同様、将来的に松下が株式の過半数を取得し、松下主導でIPSアルファの次期工場の建設を行う計画だ。なお、キヤノンと松下がそれぞれ株式の過半を取得するタイミングについては、現在協議中とのこと。
本日行われた会見でキヤノンの内田恒二社長は、「今回の提携により、今後キヤノンでは中小型液晶パネルに力を入れていく」と表明。同社では主要キーパーツの内製化を進めており、デジタル一眼レフカメラなどに採用する中小型液晶ディスプレイを自社で生産することも、その戦略に沿ったもの、と説明した。内田氏は「我々が目指しているのは高画質。IPSは液晶パネルの中で最も高画質であると判断し、今回の出資を決めた」とした。
また内田氏は、同社がまもなく子会社化する、有機ELディスプレイの製造装置メーカーであるトッキも引き合いに出し、「有機ELの共同開発を加速する」と述べた。
内田氏はさらに、「こういう話をすると、必ず『SEDはどうなっているんだ』という声が上がると思うが、現在控訴審中であり、技術開発に邁進している。決してあきらめたわけではない。SEDの発売を中止するということはまったくない」と、SEDの開発をこれまでどおり進める考えを表明。「我々はこれまで動画ディスプレイを持っていなかったが、今回の提携により、中小型液晶、有機EL、そしてSEDと、映像機器向けのディスプレイを強化できる」と、提携の意義を強調した。
続いて挨拶した松下電器産業 社長の大坪文雄氏は、「現在、BRICsやベトナムなどまで含め、グローバルに薄型テレビの普及が進んでいる。大型化も我々の予測を遙かに超えて進んでいる」と、薄型テレビを取り巻く現状について説明。また、「これまでどおり、PDPを基軸に薄型テレビ事業を行っていく方針は変わらない。37V型以上で25%以上のグローバルシェア、という目標はこれまで通り堅持する。ただし、消費者ニーズは多様化しており、液晶テレビへの対応は急務。今回の提携により、中長期かつ安定的にIPSアルファのパネルが調達できるのは大きなメリットだ」と、提携のねらいについて説明。「PDPと同じく、液晶パネルでも垂直統合化を力強く推進していく」とした。
なお現在、東芝はIPSアルファテクノロジーの株式15%を保有しているが、これについて大坪氏は「弊社へ全数を譲渡してもらうことで合意した」と語った。
プラズマと液晶の棲み分けについて聞かれた大坪氏は、「テレビ事業は、大画面に強いPDPで引っ張る、という方針にいささかの変わりもない。これまでどおり37V型以上はPDPでやっていく。ただし、先ほども申し上げたとおりニーズは多様化しており、一部で液晶の大型化も進める」とした。なお、同社が建設を表明していたプラズマパネルの尼崎第5工場については、「先月、予定通り着工した。計画に一切変更はない」と述べた。
また、将来的に計画しているという、松下が主導して建設する予定のIPSアルファの次期工場では、「30V型台のパネルを効率的に生産できる、第7世代、第8世代の生産設備を導入する予定」という。次期工場の稼働時期、投資金額等は未定という。
大坪氏はまた、「有機ELと液晶は技術的な共通点も多い」とし、有機ELテレビへの期待も表明。ただし、実用化には「まだ少し時間がかかる。いつという計画はない」とした。
日立製作所 社長の古川一夫氏は、今回の提携について「我々も長年パネル事業をやってきたが、最終製品とパネルの結びつきが非常に重要になってきている。パネルは純粋なデバイスではなくなってきて、1社だけでは世界で勝てるものではない。こういう状況の中で今回、世界的なテレビメーカーである松下様、世界ナンバーワンのカメラメーカーであるキヤノン様と提携することで、3社で世界で勝つことができると考えた」と説明。提携を提案した会社や時期などについては、「長年、両社様にパネルを供給する中で信頼関係が醸成され、自然に、いつどこでということではなく、こういう場を迎えた」と述べた。
以下、記者会見で行われた主な質疑応答をご紹介する。
Q:SEDと有機EL、液晶ディスプレイのそれぞれの位置づけを教えて欲しい。
A:SEDは当初から55インチクラスの大型パネルを想定している。今回の液晶ディスプレイは主にデジカメ用で、中小型向けとなる。有機ELについては、自発光型なので、屋外での視認性が良い。これもカメラ向けに考えている。(内田氏)
Q:東芝松下ディスプレイテクノロジー(TMD)とIPSアルファの関係はどうなるのか。
A:今後も東芝様とは協業を継続していく。IPSはテレビ向け、TMDは中小型液晶が中心で、特に問題があるわけではないと認識している。(大坪氏)
Q:日立ディスプレイズとIPSアルファはともに赤字会社だが、ここへ新たに出資することに問題はないか。
A:IPSアルファは昨年第2クォーターを迎えたばかりで、最近は収益も改善している。我々のディスプレイのもう一つの柱である液晶パネルの安定調達が可能になり、必ずや利益につながると考えている。(大坪氏)
Q:キヤノンはIPSアルファへ2%出資しているというが、これは今後どうなるのか?
A:我々が半導体製造装置を納入していることから取得したものであり、必要ならば譲渡することも考えている。(内田氏)
Q:有機ELテレビを作る上での課題を教えて欲しい。
A:我々は研究所での取り組みも含め、有機ELについては隅から隅まで知っている。問題は3つある。1つは量産性で、研究所レベルで試作機を作ることはたやすいが、これを日産何万とか何十万とかにすることは難しく、大きな課題だ。2つめはコストで、液晶などに比べるとまだ差はある。3つめは大型化で、30〜40インチクラスにするにはまだ課題がある。事業として行うにはまだ時間がかかるだろう。(古川氏)
Q:有機ELには低分子型と高分子型があるが、日立ではこれまでどちらを研究していたのか。
A:有機ELについてはすべての研究を行っており、低分子も高分子もやっている。(古川氏)
Q:IPSアルファと日立ディスプレイズの今後のユーザー構成はどうなっていくのか。
A:IPSアルファの、現在の最大顧客は松下様。よく言われているように液晶パネルの需要は逼迫しており、今後すぐに外販が増えることはない。日立ディスプレイズの最大ユーザーは、時期によって色々と入れ替わっているというのが現状だ。(古川氏)
(Phile-web編集部)