IFA2009レポート
DTSがプライベートセミナーを開催 − PC向け新技術やDTS Neural Surroundを紹介
DTSはIFA2009のイベント開催に合わせ、同社の最新技術を紹介するプライベートセミナーを市内のホテル・Pullman Berlin Schweizerhofのスイートルームで実施した。
セミナーでは同社のPCアプリケーションをターゲットにした新技術「DTS Premium Suite」の紹介、並びに日本国内でも幾度か紹介の機会が設けられたプロフェッショナル向けのマルチチャンネルのエンコード/デコード技術「DTS Neural Surround」を中心に説明が行われた。
ノートPCのBDエンターテインメントをサポートする「DTS Premium Suite」
「DTS Premium Suite」は、来るべきノートPCで楽しむBDエンターテインメントの時代に向けて、ハイクオリティなサウンドを提供し、PCの領域においても“ベスト・イン・クラス”を狙うDTSが開発した最新技術だ。本技術に関する詳細は、DTS Licensing Ltdにおいて企画・マーケティングに携わるDirector of MarketingのAnthony Wilkins氏と、開発に携わったDTS Inc. Product SpecialistのChristopher Lang氏が説明を行った。
本技術は「DTS-HD Master Audio」のデコーダー、PCにおいて汎用の2chスピーカーやヘッドホンで3次元サラウンドを再現できる「DTS Surround Sensation Ultra PC」、PCから出力される様々なオーディオ信号をホームシアター機器でも再生可能にする「DTS Connect」、視聴コンテンツや入力ソースの違いによって生じる音量レベルのばらつきを自動的に補正・最適化する「DTS Symmetry」、独自のアルゴリズムで信号をブースとし、PCの内蔵スピーカーの限界を超えた迫力のあるサウンドが楽しめるようになる「DTS Boost」により構成される。
本技術はノートPC上で、BDエンターテインメントをはじめとしたハイスペックな映像と音声を、ユーザーが楽しむ機会が増えてきた中で、Intel社がモバイルPC向けに開発中の次世代CPUプロセッサーに同期して開発されたもの。本CPUに搭載されるDSPの中に「DTS Premium Suite」が搭載されることにより、先述の5つのキーとなる機能がPC上でBDソフトの視聴などを楽しむ際に利用できるようになる。コンシューマー向けに本技術を搭載したPCが登場する時期の見込みについてWilkins氏は「Intel社が新しいCPUの開発を完了する時期が今年の年末とみている。早ければ来年の初頭にはDTS Premium Suite搭載の商品がでてくるはずだ」と語った。
Wilkins氏は本技術が開発された背景について「BDエンターテインメントの普及が進み、昨今はPC市場もダイナミックに変化し始めている。来年にはBDドライブを搭載するノートPCも大きく増加してくると見ており、このような環境の中でユーザーが最も良いサウンドを、快適に楽しんでいただくために開発した」と説明。さらに「この技術はIntelの最新CPUのオーディオアーキテクチャに組み込まれる予定。メーカーは製品の開発時にDTS Premium Suite採用のDSPチップ搭載モデルを選ぶことができ、それぞれの製品の差別化に活用することができるようになるだろう」と最新技術の持つ可能性をアピールした。
またLang氏は「DTS Symmetry」と「DTS Boost」の実力をプロトタイプのセットによるデモを行って紹介した。それぞれの技術が持つ特徴についてLang氏は「DTS Symmetryは、BDソフトだけでなく、インターネットラジオやYouTube動画、デジタルミュージックなどを一台のノートPCで楽しむ際、コンテンツによって収録されている音声のレベルは皆ばらつきがある。本技術によってユーザーはPCサウンドを楽しむ際のストレスから解放されることになるだろう。またノートPCに搭載されるスピーカーのサイズやパフォーマンスも様々だが、DTS Boostはメーカーが開発する製品のスペックごとに手軽にファインチューンできることも大きな特徴と言えるだろう」と語る。またIntelの次世代CPUのパフォーマンスと、これに最適化された「DTS Premium Suite」の高効率ゆえに、従来よりも低消費電力でBDコンテンツの再生が行えるため、例えば映画を丸ごと一本ほどの再生ボリュームであれば、PCの再生パフォーマンスを犠牲にすることなく快適に楽しめるようになるはずだとWilkins氏は説明を加えた。
「DTS Neural Surround」と「DTS-HD Master Audio」の体験デモも実演
「DTS Neural Surround」、ならびに「DTS-HD Master Audio」の技術紹介とデモンストレーションは、DTS Licensing LtdのManager Pro Audio Europeを担当するAchim Scherner氏が行った。
この日セミナーが行われた会場には、パイオニアのBDプレーヤー、オンキヨーのAVアンプ、ADAMのスピーカー7.1chセットが用意され、はじめにノルウェーの2Lレーベルが発売している高音質BDソフトに収録されているDTS-HD Master Audioフォーマットの「192kHz/24bit 5.1ch」、「96kHz/24bit 7.1ch」コンテンツのサウンドが紹介された。
Scherner氏は「ヨーロッパでBDエンターテインメントが急速に広まりつつあり、BDソフトの約85%がDTS-HDを採用している」と語る。また全世界的にも「ハリウッドのメジャースタジオ、レーベルがDTS-HDをBDソフトの差別化を図る上でも有利なフォーマットとして、次々と採用を始めている」とアピールする。
続いて「DTS Neural Surround」の紹介も行われた。本技術の詳細に関しては、直近では日本国内で行われたAES 2009プロダクトセミナーのレポートも参照してほしい。
DTS Neural Surroundはマトリックス方式を採用する音声のエンコード技術。ディスクリート方式でのサラウンドエンコードよりも容易にステレオとサラウンド両方の信号が管理できるメリットを備えながら、オリジナルソースにより正確な音声をダウンミックスでリアルタイムエンコードできる特長を備えている。「エンコーダー自体も操作、ハンドリングがとても簡単に扱えるところもメリット」であるとScherner氏は語る。
この日はDTS Neural Surroundの技術を使ってエンコードされた幾つかのオーディオソースを再生。iPodに保存したAACフォーマットの映像付QuickTimeファイル、インターネットラジオ「KUSC-fm」のリアルタイムブロードキャスト音源、ならびにDTS Neural SurroundをサポートするXbox 360向けゲームソフト「PROTOTYPE」を先述の7.1ch環境でデモンストレーションした。Scherner氏は「従来のマトリックスエンコードによるサラウンド再生よりも、DTS Neural Surroundを用いた方がセンターの定位が非常に優れている」と説明。またブロードキャスティングの場合は2chで制作・送信して、受信側の機器に搭載されたDTS Neural Surroundのデコーダーを利用してサラウンド再生できるメリットも強調する。
現在もヨーロッパでは多くのAVアンプメーカーがDTS Neural Surroundのサポートを始めており、主要ブランドの上位機種の多くがデコーダーを搭載している環境にあるとScherner氏は語る。最後に今後のヨーロッパにおける同技術の展開イメージについてScherner氏に訊ねたところ「例えばベルリンフィルの演奏会配信サイト“デジタルコンサートホール”のコンテンツにも、DTS Neural Surroundの技術は大変マッチしていると思う。今後はDTS Neural Surroundについて、オーディオファンにも満足いただけるクオリティの違いをアピールしていきたい」と意気込みを語ってくれた。
なお、Neuralは同社の技術を使ったオーディオコンテンツが体験できるインターネット・ストリーミングサービス「Neural Music Direct」を公開している。興味のある方はぜひチェックしてみて欲しい。
セミナーでは同社のPCアプリケーションをターゲットにした新技術「DTS Premium Suite」の紹介、並びに日本国内でも幾度か紹介の機会が設けられたプロフェッショナル向けのマルチチャンネルのエンコード/デコード技術「DTS Neural Surround」を中心に説明が行われた。
ノートPCのBDエンターテインメントをサポートする「DTS Premium Suite」
「DTS Premium Suite」は、来るべきノートPCで楽しむBDエンターテインメントの時代に向けて、ハイクオリティなサウンドを提供し、PCの領域においても“ベスト・イン・クラス”を狙うDTSが開発した最新技術だ。本技術に関する詳細は、DTS Licensing Ltdにおいて企画・マーケティングに携わるDirector of MarketingのAnthony Wilkins氏と、開発に携わったDTS Inc. Product SpecialistのChristopher Lang氏が説明を行った。
本技術は「DTS-HD Master Audio」のデコーダー、PCにおいて汎用の2chスピーカーやヘッドホンで3次元サラウンドを再現できる「DTS Surround Sensation Ultra PC」、PCから出力される様々なオーディオ信号をホームシアター機器でも再生可能にする「DTS Connect」、視聴コンテンツや入力ソースの違いによって生じる音量レベルのばらつきを自動的に補正・最適化する「DTS Symmetry」、独自のアルゴリズムで信号をブースとし、PCの内蔵スピーカーの限界を超えた迫力のあるサウンドが楽しめるようになる「DTS Boost」により構成される。
本技術はノートPC上で、BDエンターテインメントをはじめとしたハイスペックな映像と音声を、ユーザーが楽しむ機会が増えてきた中で、Intel社がモバイルPC向けに開発中の次世代CPUプロセッサーに同期して開発されたもの。本CPUに搭載されるDSPの中に「DTS Premium Suite」が搭載されることにより、先述の5つのキーとなる機能がPC上でBDソフトの視聴などを楽しむ際に利用できるようになる。コンシューマー向けに本技術を搭載したPCが登場する時期の見込みについてWilkins氏は「Intel社が新しいCPUの開発を完了する時期が今年の年末とみている。早ければ来年の初頭にはDTS Premium Suite搭載の商品がでてくるはずだ」と語った。
Wilkins氏は本技術が開発された背景について「BDエンターテインメントの普及が進み、昨今はPC市場もダイナミックに変化し始めている。来年にはBDドライブを搭載するノートPCも大きく増加してくると見ており、このような環境の中でユーザーが最も良いサウンドを、快適に楽しんでいただくために開発した」と説明。さらに「この技術はIntelの最新CPUのオーディオアーキテクチャに組み込まれる予定。メーカーは製品の開発時にDTS Premium Suite採用のDSPチップ搭載モデルを選ぶことができ、それぞれの製品の差別化に活用することができるようになるだろう」と最新技術の持つ可能性をアピールした。
またLang氏は「DTS Symmetry」と「DTS Boost」の実力をプロトタイプのセットによるデモを行って紹介した。それぞれの技術が持つ特徴についてLang氏は「DTS Symmetryは、BDソフトだけでなく、インターネットラジオやYouTube動画、デジタルミュージックなどを一台のノートPCで楽しむ際、コンテンツによって収録されている音声のレベルは皆ばらつきがある。本技術によってユーザーはPCサウンドを楽しむ際のストレスから解放されることになるだろう。またノートPCに搭載されるスピーカーのサイズやパフォーマンスも様々だが、DTS Boostはメーカーが開発する製品のスペックごとに手軽にファインチューンできることも大きな特徴と言えるだろう」と語る。またIntelの次世代CPUのパフォーマンスと、これに最適化された「DTS Premium Suite」の高効率ゆえに、従来よりも低消費電力でBDコンテンツの再生が行えるため、例えば映画を丸ごと一本ほどの再生ボリュームであれば、PCの再生パフォーマンスを犠牲にすることなく快適に楽しめるようになるはずだとWilkins氏は説明を加えた。
「DTS Neural Surround」と「DTS-HD Master Audio」の体験デモも実演
「DTS Neural Surround」、ならびに「DTS-HD Master Audio」の技術紹介とデモンストレーションは、DTS Licensing LtdのManager Pro Audio Europeを担当するAchim Scherner氏が行った。
この日セミナーが行われた会場には、パイオニアのBDプレーヤー、オンキヨーのAVアンプ、ADAMのスピーカー7.1chセットが用意され、はじめにノルウェーの2Lレーベルが発売している高音質BDソフトに収録されているDTS-HD Master Audioフォーマットの「192kHz/24bit 5.1ch」、「96kHz/24bit 7.1ch」コンテンツのサウンドが紹介された。
Scherner氏は「ヨーロッパでBDエンターテインメントが急速に広まりつつあり、BDソフトの約85%がDTS-HDを採用している」と語る。また全世界的にも「ハリウッドのメジャースタジオ、レーベルがDTS-HDをBDソフトの差別化を図る上でも有利なフォーマットとして、次々と採用を始めている」とアピールする。
続いて「DTS Neural Surround」の紹介も行われた。本技術の詳細に関しては、直近では日本国内で行われたAES 2009プロダクトセミナーのレポートも参照してほしい。
DTS Neural Surroundはマトリックス方式を採用する音声のエンコード技術。ディスクリート方式でのサラウンドエンコードよりも容易にステレオとサラウンド両方の信号が管理できるメリットを備えながら、オリジナルソースにより正確な音声をダウンミックスでリアルタイムエンコードできる特長を備えている。「エンコーダー自体も操作、ハンドリングがとても簡単に扱えるところもメリット」であるとScherner氏は語る。
この日はDTS Neural Surroundの技術を使ってエンコードされた幾つかのオーディオソースを再生。iPodに保存したAACフォーマットの映像付QuickTimeファイル、インターネットラジオ「KUSC-fm」のリアルタイムブロードキャスト音源、ならびにDTS Neural SurroundをサポートするXbox 360向けゲームソフト「PROTOTYPE」を先述の7.1ch環境でデモンストレーションした。Scherner氏は「従来のマトリックスエンコードによるサラウンド再生よりも、DTS Neural Surroundを用いた方がセンターの定位が非常に優れている」と説明。またブロードキャスティングの場合は2chで制作・送信して、受信側の機器に搭載されたDTS Neural Surroundのデコーダーを利用してサラウンド再生できるメリットも強調する。
現在もヨーロッパでは多くのAVアンプメーカーがDTS Neural Surroundのサポートを始めており、主要ブランドの上位機種の多くがデコーダーを搭載している環境にあるとScherner氏は語る。最後に今後のヨーロッパにおける同技術の展開イメージについてScherner氏に訊ねたところ「例えばベルリンフィルの演奏会配信サイト“デジタルコンサートホール”のコンテンツにも、DTS Neural Surroundの技術は大変マッチしていると思う。今後はDTS Neural Surroundについて、オーディオファンにも満足いただけるクオリティの違いをアピールしていきたい」と意気込みを語ってくれた。
なお、Neuralは同社の技術を使ったオーディオコンテンツが体験できるインターネット・ストリーミングサービス「Neural Music Direct」を公開している。興味のある方はぜひチェックしてみて欲しい。