首脳陣が語る市場動向と販売戦略
「画像漂流時代」到来 - 新“FinePix”発表会詳報 - 佐々木希さんも登場
別項でお伝えしている通り、富士フイルム(株)は“FinePix”の新モデルなどを発表。都内で同社首脳陣が出席した製品発表会を実施した。発表会にはイメージキャラクターに起用されたタレントの佐々木希さんも駆けつけた。
■記録メディアの進化で「画像漂流時代」が到来
同社電子映像事業部長 コンシューマー営業本部FinePixグループ部長の小島正彦氏は、製品の紹介に先立って現在のデジタルカメラ事情を説明。現在は4GBが主流になるなど記録メディアが大容量化していることに触れ、「フィルムカメラの時代、日本人の年間平均枚数はフィルム3本程度、ショット数で年間80ショットだった。4GBメディアでは約1,000枚の写真を記録できる。つまり、単純計算で10年分の画像が1枚のメディアに記録できる時代になった」とコメント。
「同時に、PCに画像を保存するというユーザーが年々減ってきている。今はメディアに保存するユーザーが半数を超えている」と言葉を続け、「これからは、撮った画像をユーザー自身が探せない、カメラの中にある1,000枚以上の画像が海をさまよう“画像漂流時代”に突入する」と語った。
そして、「この画像漂流時代の波を乗りこなすデジタルカメラを提案していく」とコメントし、新モデルに搭載した「ピクチャーサーチ」や「2画面サクサク再生」がこうした問題に対処するためのものであることを説明。
同社のカメラ事業における従来の基本コンセプトである「目で見たままにキレイに撮る」に加えて、「カンタンに画像を探せる、見せたい画像だけを見せられる、こういった機能を搭載していく」と言葉を続けた。
また、デジタルフォトフレームについてはシャープ製の最新液晶を搭載している点をアピール。「他社はPC用の液晶を搭載しているものがほとんどだが、当社の新製品にはテレビ用の液晶を搭載した。上下左右どこからでもキレイに見えるのは富士フイルムだけだ」と、製品の優位性を強調した。
■市場動向と今後の取り組みを首脳陣が語る
2月1日付けで新たに電子映像事業部長 コンシューマー営業本部長に就任した四宮啓司氏は、あいさつの冒頭で「CIPAから発表があった通り、2009年の国内コンパクトデジタルカメラ出荷は前年比88パーセントの870万台という大変厳しい数字だった。今年の予測は前年95パーセントの830万台と、これまた厳しい見通しになっている」とコメント。
「内閣府の発表では、国内のデジカメ世帯普及率は70%まで達している」と言葉を続け、国内のデジタルカメラ市場が成熟期に入っていることを改めて説明。そして「国内需要は買い替え買い増し需要に支えられている。新製品もそうしたニーズを徹底的に追求したもの。買い替え買い増し需要をしっかり取り込んでいきたい」と新製品開発の背景を語った。
また、四宮氏は「デジカメプリントやフォトブックは、デジタル時代にあっても手軽に写真を楽しんでいただけるサービスとしてますます発展していくものと確信している」ともコメント。
特にフォトブックについては、「一昨年春より本格的な市場導入を図ってきたが、昨年末にはカレンダータイプの需要で前年比1.5倍を達成した」と好評であることを明かした。
同社取締役 常務執行役員 電子映像事業部長の樋口武氏は、スーパーCCDハニカムEXRや3Dデジタルカメラ「FinePix REAL 3D W1」など他社との差別化技術が好評である点に触れた後に世界的な販売戦略について説明。
新興国向けのエントリーモデルにも注力した結果「BRICsに関しては前年度1.5倍の販売数を達成できた」と実績を明かし、「世界的なシェアも確実にアップしてきている。台数で言えば、新興国も先進国も順調に伸びて前年度は820万台を達成した。今年度は900万台以上を確実に越えるだろう」と語った。
そして、サプライチェーン改革などで大幅なコストダウンが進んでいることも改めて発表。「事業も黒字化の見込みだ」と今年度の経営が順調に行われていることを説明した。
また、世界戦略では「国別、地域別商品を作っていく」とコメント。国ごとに異なったカラーバリエーションを用意するなどの戦略を引き続き行っていくとした。
なお、こうした戦略については「機種が大幅に増えるが、リードタイムの短縮など様々な改善でやりとげることができている。今後もその地域にあった商品を展開していきたい」と樋口氏は説明した。
■新イメージキャラクターの佐々木希さんが愛犬と登場
同社では、“FinePix”のイメージキャラクターにタレントの佐々木希さんを起用することも併せて発表。発表会の最後には佐々木さんが登場し、製品についての感想などを語った。
発表会には、2月20日からオンエア開始予定のCM中にも登場する、佐々木さんの愛犬マロンちゃんも登場。「Z700EXR」で佐々木さんがマロンちゃんを撮影し「反応がすごく早くてびっくりした」と、製品のレスポンスの速さを実感する一幕も見られた。
■質疑応答
以下、会見で行われた質疑応答の模様をお届けする。
Q.デジカメのスペック競争にも成熟感がでてきているように思う。他社では例えばソニーは動画をキーワードに市場を掘り起こすとのことだったが、今回のデジカメのキーワードを挙げるとすればどうなるのか?
A.個別としては3Dに力を入れたいというのがある。全体としては今年度黒字化していくのが目標。カメラとしてはシェアアップのためのラインナップを強化していく。また、地域別に受け入れられるカメラを開発してシェアを伸ばしていく。トータル的な事業としての強さをさらに構築していきたい。
Q.今年はもうまもなく3Dテレビも登場するだろう。3Dデジカメが若干埋没している印象もあるのだが、これをどう打開していくのか。オープン化、他社との連携の進捗はどうなっているのか教えてほしい。
A.3Dデジカメはかなり画質的にも評判が良かった。価格面などの要望もあったので、今年はそうした点を改善していく。また、テレビやPCと接続できるようにしたり、ビューワーも発展させていきたい。プリントもダイレクトプリント装置を全世界に配備する。テレビ、パソコン、写真が全部つながるようなシステムを、お求めやすい価格で構築していく。埋没しているという話も出たが、宣伝をもっと大幅に展開していく必要もあるだろう。
Q.テレビという話が出たが、それは必然的に他社との連携ということになるという理解で良いのか。
A.はっきりと決めたわけではないが、考えはある。
Q.ピクチャーサーチについて聞きたい。ソフトウェアに基づくものは継続的な進歩が必要だと思う。今後もアップデート計画などはもっているのか。
A.ソフトや機能に関しては、電子事業部とソフト開発部が別部隊であり、内製化でやっている。一部は外部に出すものもあるし、中国にもソフト屋を抱えている。内製化で機能を高めていくのは長所だと思っているのでそれを薦めていきたい。商品企画と「どういう部分が重要なのか」を常に考えている。
Q.サプライチェーンマネジメントについて、例えば技術面もODMにするなどもっと踏み込んだ関係を築くような考えはないのか。
A.ODMについては、相手をかなり絞っている。その代わり、パートナー化していくという考えをもっており、物流やチップなどを含めた様々な部分での共通化を図っている。コストが安くてもしっかりしたカメラを作ろうとすると、当然ながら質問にあったような方向に向かっていくだろう。
■記録メディアの進化で「画像漂流時代」が到来
同社電子映像事業部長 コンシューマー営業本部FinePixグループ部長の小島正彦氏は、製品の紹介に先立って現在のデジタルカメラ事情を説明。現在は4GBが主流になるなど記録メディアが大容量化していることに触れ、「フィルムカメラの時代、日本人の年間平均枚数はフィルム3本程度、ショット数で年間80ショットだった。4GBメディアでは約1,000枚の写真を記録できる。つまり、単純計算で10年分の画像が1枚のメディアに記録できる時代になった」とコメント。
「同時に、PCに画像を保存するというユーザーが年々減ってきている。今はメディアに保存するユーザーが半数を超えている」と言葉を続け、「これからは、撮った画像をユーザー自身が探せない、カメラの中にある1,000枚以上の画像が海をさまよう“画像漂流時代”に突入する」と語った。
そして、「この画像漂流時代の波を乗りこなすデジタルカメラを提案していく」とコメントし、新モデルに搭載した「ピクチャーサーチ」や「2画面サクサク再生」がこうした問題に対処するためのものであることを説明。
同社のカメラ事業における従来の基本コンセプトである「目で見たままにキレイに撮る」に加えて、「カンタンに画像を探せる、見せたい画像だけを見せられる、こういった機能を搭載していく」と言葉を続けた。
また、デジタルフォトフレームについてはシャープ製の最新液晶を搭載している点をアピール。「他社はPC用の液晶を搭載しているものがほとんどだが、当社の新製品にはテレビ用の液晶を搭載した。上下左右どこからでもキレイに見えるのは富士フイルムだけだ」と、製品の優位性を強調した。
■市場動向と今後の取り組みを首脳陣が語る
2月1日付けで新たに電子映像事業部長 コンシューマー営業本部長に就任した四宮啓司氏は、あいさつの冒頭で「CIPAから発表があった通り、2009年の国内コンパクトデジタルカメラ出荷は前年比88パーセントの870万台という大変厳しい数字だった。今年の予測は前年95パーセントの830万台と、これまた厳しい見通しになっている」とコメント。
「内閣府の発表では、国内のデジカメ世帯普及率は70%まで達している」と言葉を続け、国内のデジタルカメラ市場が成熟期に入っていることを改めて説明。そして「国内需要は買い替え買い増し需要に支えられている。新製品もそうしたニーズを徹底的に追求したもの。買い替え買い増し需要をしっかり取り込んでいきたい」と新製品開発の背景を語った。
また、四宮氏は「デジカメプリントやフォトブックは、デジタル時代にあっても手軽に写真を楽しんでいただけるサービスとしてますます発展していくものと確信している」ともコメント。
特にフォトブックについては、「一昨年春より本格的な市場導入を図ってきたが、昨年末にはカレンダータイプの需要で前年比1.5倍を達成した」と好評であることを明かした。
同社取締役 常務執行役員 電子映像事業部長の樋口武氏は、スーパーCCDハニカムEXRや3Dデジタルカメラ「FinePix REAL 3D W1」など他社との差別化技術が好評である点に触れた後に世界的な販売戦略について説明。
新興国向けのエントリーモデルにも注力した結果「BRICsに関しては前年度1.5倍の販売数を達成できた」と実績を明かし、「世界的なシェアも確実にアップしてきている。台数で言えば、新興国も先進国も順調に伸びて前年度は820万台を達成した。今年度は900万台以上を確実に越えるだろう」と語った。
そして、サプライチェーン改革などで大幅なコストダウンが進んでいることも改めて発表。「事業も黒字化の見込みだ」と今年度の経営が順調に行われていることを説明した。
また、世界戦略では「国別、地域別商品を作っていく」とコメント。国ごとに異なったカラーバリエーションを用意するなどの戦略を引き続き行っていくとした。
なお、こうした戦略については「機種が大幅に増えるが、リードタイムの短縮など様々な改善でやりとげることができている。今後もその地域にあった商品を展開していきたい」と樋口氏は説明した。
■新イメージキャラクターの佐々木希さんが愛犬と登場
同社では、“FinePix”のイメージキャラクターにタレントの佐々木希さんを起用することも併せて発表。発表会の最後には佐々木さんが登場し、製品についての感想などを語った。
発表会には、2月20日からオンエア開始予定のCM中にも登場する、佐々木さんの愛犬マロンちゃんも登場。「Z700EXR」で佐々木さんがマロンちゃんを撮影し「反応がすごく早くてびっくりした」と、製品のレスポンスの速さを実感する一幕も見られた。
■質疑応答
以下、会見で行われた質疑応答の模様をお届けする。
Q.デジカメのスペック競争にも成熟感がでてきているように思う。他社では例えばソニーは動画をキーワードに市場を掘り起こすとのことだったが、今回のデジカメのキーワードを挙げるとすればどうなるのか?
A.個別としては3Dに力を入れたいというのがある。全体としては今年度黒字化していくのが目標。カメラとしてはシェアアップのためのラインナップを強化していく。また、地域別に受け入れられるカメラを開発してシェアを伸ばしていく。トータル的な事業としての強さをさらに構築していきたい。
Q.今年はもうまもなく3Dテレビも登場するだろう。3Dデジカメが若干埋没している印象もあるのだが、これをどう打開していくのか。オープン化、他社との連携の進捗はどうなっているのか教えてほしい。
A.3Dデジカメはかなり画質的にも評判が良かった。価格面などの要望もあったので、今年はそうした点を改善していく。また、テレビやPCと接続できるようにしたり、ビューワーも発展させていきたい。プリントもダイレクトプリント装置を全世界に配備する。テレビ、パソコン、写真が全部つながるようなシステムを、お求めやすい価格で構築していく。埋没しているという話も出たが、宣伝をもっと大幅に展開していく必要もあるだろう。
Q.テレビという話が出たが、それは必然的に他社との連携ということになるという理解で良いのか。
A.はっきりと決めたわけではないが、考えはある。
Q.ピクチャーサーチについて聞きたい。ソフトウェアに基づくものは継続的な進歩が必要だと思う。今後もアップデート計画などはもっているのか。
A.ソフトや機能に関しては、電子事業部とソフト開発部が別部隊であり、内製化でやっている。一部は外部に出すものもあるし、中国にもソフト屋を抱えている。内製化で機能を高めていくのは長所だと思っているのでそれを薦めていきたい。商品企画と「どういう部分が重要なのか」を常に考えている。
Q.サプライチェーンマネジメントについて、例えば技術面もODMにするなどもっと踏み込んだ関係を築くような考えはないのか。
A.ODMについては、相手をかなり絞っている。その代わり、パートナー化していくという考えをもっており、物流やチップなどを含めた様々な部分での共通化を図っている。コストが安くてもしっかりしたカメラを作ろうとすると、当然ながら質問にあったような方向に向かっていくだろう。