「インストーラー」が主役に躍り出る!?
【年末特別企画】ホームシアターファイル誌編集長・川嶋がゼンブ答える! − 「2011年のホームシアターはどうなりますか?」<第2部>
ネットワーク時代を迎えて…
― お次はネットワークということですが、ぼくもネットオーディオをはじめようと思いまして、マランツのNA7004を予約したんですよ。「ホームシアターグランプリ2011」の金賞受賞モデルですよね。
川嶋 年末年始にはじめるんですか。
― いえ、売れすぎているようで、届くのは年明けだそうです…。
川嶋 あらら(笑)。まあ楽しみに待っていてくださいね(笑)。それはともかく、ここ数年でネット環境が急速に進化を遂げたので、音楽も映像もネット経由で入ってくることが多くなりましたよね。いまは音楽が顕著ですが、映像もこれからネット経由で入ってくることが多いでしょう。時代の流れですね。
同時に、ネットオーディオが流行ってきているように、住まいの中のAVが、今後さらに結ばれていくことになるでしょう。いまはPCに音楽データを貯めて聴くケースが多いと思うけど、ハードディスクに映像を記録し、DLNAを使っていろんな部屋で映像を楽しむケースも増えてくるはずです。
実例訪問でよく見かけるようになったのは、ブルーレイレコーダーをサーバー代わりに使うケース。リビングにブルーレイレコーダーを置いて、寝室で録画したコンテンツを観るというケースをよく見かけますね。
『ホームシアターファイル』では何年も前からマルチゾーンで映像と音楽を楽しむという記事を展開していたんだけど、ようやくそういう時代が本格化してきたと。
― 「時代がようやくおれたちに追いついた」と(笑)。
川嶋 そうなの。だれも言ってくれないから自分で言った(笑)。まあそれはともかく、その場合、問題がひとつ出てくるんです。とても大きな問題だと思うし、実は自分も身にしみてわかっているんだけど。これ、本当に難しい問題なんだよね。あのね、現在という時代の隘路というか、合理を追求したが故に陥った罠というか、分業が進んでいくのって、よくない面が多いよね。
― ………? はあ? 何言っているんですか?
川嶋 あなたはネットオーディオ環境をどのように構築しようとしているの?
― ええと、データをPCにためているんで、これをルーター経由でネットワークプレーヤーにつないで…。
川嶋 あなたの家のLANは無線?
― ええ…。何か問題が…。
川嶋 いや、うちも無線を一部使っているんだけど、別に木造住宅やひとつの部屋で完結するのであれば無線でもかまいませんよ。だけど、無線LANは性能が向上しているとはいえ、不安定なところがあります。それに、情報量が多いと有線の方が有利です。これから情報量の大きい映像が入ってくるのは明らかですよね。
だから、ホームシアターづくりのプロフェッショナルであるインストーラーは有線LANをお薦めするケースが多いんです。ケースバイケースかもしれませんが、総合的にみると有線の方が安定している。
で、ここで問題が出てくる。これ、実はかなりやっかいな問題なんです。家庭内の有線LANの構築ってだれがやります?
― ええと…、だれ? NTTの人?
川嶋 意外に、改めて聞かれるとよくわからんでしょ。おれもようわからんわ(笑)。まあ、電話工事をしてくれる会社とかケーブルテレビの会社が専門業者として工事するケースが多いんです。
― ほー。
川嶋 弱電も同時に扱っている業者ならば問題ないんだけど、両方扱っている業者は少ないんですよね。建築の世界では分業が進んでいて、弱電工事とLAN工事は別物になっている場合が多いんです。LAN専門の業者だと弱電には触らないし、アンテナ線を引くくらいでも嫌がることがある。責任問題になるからね。逆に弱電工事の業者はLANはやりたがらない。これは責任問題もあるけれども、技術的に複雑ということもあるんですよ。
でもホームシアターとなると、弱電とLANは切り離せない関係にありますよね。というか、いま主流のマルチメディアコンセントは弱電とLANが一体化している。でも工事業者は別物という…。しかもAVがからんでくると、皆さんもう逃げ出したくなるようでして。
― それぞれ専門的な知識が必要になりますからね。
川嶋 実はね、わたしも数年前に自分の家を建てるときに、最後の最後の段階でこれに突き当たって、仕事柄、有線LANの方が良いとわかっていたので、空配管を通しておいたのよね。それで、電気屋さんに「LANもひとつよろしこ!」とか言ったら、「いえ、LANは専門外ですので、別の業者にお願いします」と。
で、ケーブルテレビの方にお願いしてみたですよ。そしたら「いや、うちはケーブルテレビの設置屋なので」と。うち、家とホームシアターを同時に作ったから、LANと弱電は密接な関係があるのよ。だから電気屋さんにやってもらうのが合理的なんですけどね。
それで懇意にしているインストーラーに泣きついて(笑)、「Aさん、どうしよう」と。そうしたらAさんはさすがで、「よしよし」という感じで、懇切丁寧に教えてくださって、工具まで貸してくださって、電話越しに指示していただいて…。
― おー。
川嶋 すごいでしょ。自分でやったのよ。まあ、これはちょっとした自慢なんだけどね。
― いや、自慢というより情けないような気がするんですけど…。
川嶋 こういう問題が出てくるなんて、実際に家づくりをするまではわからないじゃない。それで、LAN、弱電、AV、すべてを包括して頼める専門家が必要だなと思ったわけです。
だけど、そういう存在がすぐそばにいた。それがインストーラーなんですね。どれもすべてわかっているでしょ。それこそ照明やカーテンまで何でもできるという。いやあ、改めてインストーラーの偉大さに驚きましたよ。
― 身をもって知った、と。
川嶋 うん、あの人たちってマジですごいなと。そのどれもに精通しているわけですから。Aさん、あんたすげえよ、スーパーマンだよ!
2011年は映像も含めてネットワークAV時代が本格的に立ち上がることは間違いない。でも、たとえばテレビメーカーが進めるはずのクラウドサービスなんて、ネットワークが構築されていることが前提でしょ。だけど、それができる人ってまだまだ限られています。インストーラーしかいない。LANの業者はAVや弱電のことはわからんし。
だから2011年はインストールの重要性、インストーラーに脚光が当たると思うんです。先ほどお話しした内窓や、それに付随する吸音/音響調整についても、インストーラーならば設置できます。実際に内窓を取り扱っているインストーラーさんは、アバックさんやホームシアター工房さんをはじめとして、増えてきていますしね。