「モノづくり革新センター」メディアツアーレポート
宇都宮の“匠”が支える4K有機ELビエラ。パナソニックが「テレビ生産のマザー工場」内部を公開
例えばパネルのエージングにおいては、レーザー光線による検査でパネル自体に反りがないかをチェックするなどしたのち、その後の工程へ進む前に30分以上間隔を開ける。なお、同じ有機ELモデルでもEZ1000とEZ950ではエージング時間を変えるなど、モデルごとに最適な効果が得られるよう配慮している。
そしてエージングが済んだあとは、暗室で暗部、明部、中間輝度の調整や全輝度領域の色度確認などを実施。こうした調整のためのアルゴリズムを新規開発するなどの工夫で「業務用マスターモニターに近い品質を実現している」(現地説明員)という。
なお製品には、個体ごとに個別番号を付与して製造時の各種情報を管理。何月何日の何時にどこのラインで作られたのかなどといった情報をバーコードで分かるようにし、トレーサビリティを確保している。
■基板実装にも求められる高い技術
パネルからテレビへの組み立てだけでなく、基板の実装も本センター内で実施。有機ELパネルのポテンシャルを引き出すため開発された新映像エンジン「ヘキサクロマドライブPLUS」をはじめとする心臓部が作られる過程も見ることができた。
この基板には、1,582点の大小様々な部品を実装。映像エンジンのチップなど比較的大きなものから、米粒よりも小さいものまで非常に幅広いサイズの部品があり、これらを全部乗せて一度に接合するのだが、この“大小様々な全パーツを同時に接合する”作業も非常に高度なノウハウと技術が必要なのだという。
こうした基板実装や前述の組み立てなど、一連の作業に使われる機械は、基本的にほぼすべてパナソニックグループ製のもの。様々な機械が匠の作業を補助するだけでなく、機械が行った作業を最終的に匠が人の目や手で検査するといった具合に、機械と人との二重体制でのモノづくりが行われている。
■プラズマとの比較視聴やユニークなデモで高画質をアピール
本日の見学会では、こうして完成したEZ1000を、2006年に発売したプラズマモデル「PX600」と並べて比較する視聴デモも実施。説明を担当したスタッフは「明るい環境下でも黒の締まりが全然違っているのがお分かりいただけるかと思う。PX600発売当時もまさに黒の締まりをアピールしていたが、これほどまでに画質は進化した」とEZ1000が実現した画質の高さを誇る。
加えて、65型のTH-65EZ1000を4台組み合わせて夜空の映像を映し出すデモや、花の映像を映したEZ1000を実物の花のなかに埋め込むような形で展示するデモも展開。「夜の黒さ、星空のグラーデーションなどに、ヘキサクロマドライブPLUSによる立体的な階調表現の実力が表れている」とアピールした。
なお有機ELモデルの製造は液晶モデルより2倍くらい時間をかけているとのこと。生産台数はEZ1000で「有機ELはまだ起ち上げたばかりのため、現在およそ日産300台強ほど」(板東所長)だという。
また、前述の通り本センターの“モノづくり道場”システムは世界各地の工場にも広がっており、“匠”も続々と増やしていっている。「地域ごとにユーザーの好みの違いもあるため最終的なチューニングの部分でこそ多少の違いは生まれるが、製造工程においては全世界で同じクオリティのものを仕上げられるよう体制を整えていっている」とのことだった。