「人の幸福から離れて生き残る会社はありません」
パナソニックは「くらしアップデート業」を営み、共創する。津賀社長が創業100周年記念講演で語った決意
パナソニック株式会社の創業100周年を記念した「CROSS-VALUE INNOVATION FORUM2018」では、初日となる10月30日に、同社の代表取締役社長・社長執行役員CEO 津賀一宏氏による基調講演が行われた。ここではその概要をお伝えする。
■基調講演の公式動画
講演は、「次の100年の “くらし” つくる〜パナソニックは家電の会社から、何の会社になるのか」というタイトルで行われた。
■人々の暮らしを良くしたい
津賀社長は100周年を迎えた御礼を述べたのち、開口一番、「実はここしばらくの間、このパナソニックという会社がいったい何者なのか、私自身、自問自答する日々を過ごしました」と発した。以下はすべて、そこから続いた津賀社長の言葉となる。
“家電のパナソニック” という時代は分かりやすかったです。しかし、今では様々な事業を展開し、パナソニックが社会のためにいったい何の役に立てているのか、100周年というタイミングでこのような自問自答に陥ったことは偶然ではありません。
パナソニックという会社は創業以来、テレビをはじめ、さまざまな家電製品を作ってきました。『人々の暮らしを良くしたい』という思いが先にあり、この思いを実現させるために、モノづくりが必要だったのです。
ただ時代が変われば、家電だけで暮らしを良くできることには限界が出てきました。ひとりひとりの求めるものが極めて多様化するようになり、さらにはそれを少しでも早く手に入れたいと思う方も増えてきました。
しかし、ここにこそ、パナソニックが存在している意義があると感じました。そこに生きる人の、今日よりも明日、明日よりも明後日、ひとりひとりの暮らしを少しでもより良くしていくこと、そして少しでもより暮らしやすい社会を作りあげていくこと、これこそがパナソニックの存在意義です。これは創業当時も、いまも、これから先の未来も決して変わることはありません。
■「くらしアップデート業」を営む会社
そして私はこう定義しました。パナソニックという会社は、 “くらしアップデート業” を営んでいる会社であると。このくらしアップデート業という営みこそが、パナソニックの核心に存在する、世の中へのお役立ちの本質なのだといま確信しています。
重要なのは、 “アップグレード” ではないという点です。多様化社会といわれて久しいですが、私は人が多様化したとは捉えていません。人はもともと多様なのです。もともと存在していたひとりひとりの多様性が、テクノロジーの進化とサプライヤー側の革新によって開放されたのです。
これらが開放されるまえの時代は、ひとりひとりに対応するという概念は持ち得なかったので、生活者をマス(mass)と捉え、一様に、より機能性を高めたり、より上級のものを提供して、いわゆるアップグレードを競いあっていました。4つの機能がついた家電よりも、5つの機能がついた家電が良いとされた時代です。
でも、今は違います。ひとりひとりの人が心地いいと感じる瞬間とていねいに向き合う時代です。ひとりの人間の中でも、今日という時間と明日という時間とに、求めるものは異なってきます。今日聴きたかった音楽と、明日聴きたい音楽が違っていたり、寝不足で迎えた朝の気分と、ぐっすりと眠って起きた朝の気分が違ったり、今日という日に合わせて更新し続けることが必要な時代になっています。だから “アップデート” なのです。
“デート”= “日付” に、 “アップ” = “更新しつづける” のです。
さらに人は、環境によってダウングレードが必要なときもあります。若い時には加速が見事なクルマに乗りたかったけれど、老いてからは、スピードを重要視しなくなったり、家族4人で暮らしていたときは3LDKが必要だったけれど、子供が家を出たら1LDKがちょうどよかったり、昨日は高級フレンチが食べたかったけれど、今日はサバ煮定食が食べたかったり。
だから、 “グレード” という軸ではなく、あくまでその時に合わせて更新していくので、 “アップデート” という言葉になります。
私は“アップグレード”を否定してはいるわけではありません。当然のことながら、人や環境によっては、“アップグレード”すること自体が、そのときにも求められている“アップデート”であることも多々あります。そうした“アップグレード”ニーズも含めて、“アップデート”という言葉にしています。
■基調講演の公式動画
講演は、「次の100年の “くらし” つくる〜パナソニックは家電の会社から、何の会社になるのか」というタイトルで行われた。
■人々の暮らしを良くしたい
津賀社長は100周年を迎えた御礼を述べたのち、開口一番、「実はここしばらくの間、このパナソニックという会社がいったい何者なのか、私自身、自問自答する日々を過ごしました」と発した。以下はすべて、そこから続いた津賀社長の言葉となる。
“家電のパナソニック” という時代は分かりやすかったです。しかし、今では様々な事業を展開し、パナソニックが社会のためにいったい何の役に立てているのか、100周年というタイミングでこのような自問自答に陥ったことは偶然ではありません。
パナソニックという会社は創業以来、テレビをはじめ、さまざまな家電製品を作ってきました。『人々の暮らしを良くしたい』という思いが先にあり、この思いを実現させるために、モノづくりが必要だったのです。
ただ時代が変われば、家電だけで暮らしを良くできることには限界が出てきました。ひとりひとりの求めるものが極めて多様化するようになり、さらにはそれを少しでも早く手に入れたいと思う方も増えてきました。
しかし、ここにこそ、パナソニックが存在している意義があると感じました。そこに生きる人の、今日よりも明日、明日よりも明後日、ひとりひとりの暮らしを少しでもより良くしていくこと、そして少しでもより暮らしやすい社会を作りあげていくこと、これこそがパナソニックの存在意義です。これは創業当時も、いまも、これから先の未来も決して変わることはありません。
■「くらしアップデート業」を営む会社
そして私はこう定義しました。パナソニックという会社は、 “くらしアップデート業” を営んでいる会社であると。このくらしアップデート業という営みこそが、パナソニックの核心に存在する、世の中へのお役立ちの本質なのだといま確信しています。
重要なのは、 “アップグレード” ではないという点です。多様化社会といわれて久しいですが、私は人が多様化したとは捉えていません。人はもともと多様なのです。もともと存在していたひとりひとりの多様性が、テクノロジーの進化とサプライヤー側の革新によって開放されたのです。
これらが開放されるまえの時代は、ひとりひとりに対応するという概念は持ち得なかったので、生活者をマス(mass)と捉え、一様に、より機能性を高めたり、より上級のものを提供して、いわゆるアップグレードを競いあっていました。4つの機能がついた家電よりも、5つの機能がついた家電が良いとされた時代です。
でも、今は違います。ひとりひとりの人が心地いいと感じる瞬間とていねいに向き合う時代です。ひとりの人間の中でも、今日という時間と明日という時間とに、求めるものは異なってきます。今日聴きたかった音楽と、明日聴きたい音楽が違っていたり、寝不足で迎えた朝の気分と、ぐっすりと眠って起きた朝の気分が違ったり、今日という日に合わせて更新し続けることが必要な時代になっています。だから “アップデート” なのです。
“デート”= “日付” に、 “アップ” = “更新しつづける” のです。
さらに人は、環境によってダウングレードが必要なときもあります。若い時には加速が見事なクルマに乗りたかったけれど、老いてからは、スピードを重要視しなくなったり、家族4人で暮らしていたときは3LDKが必要だったけれど、子供が家を出たら1LDKがちょうどよかったり、昨日は高級フレンチが食べたかったけれど、今日はサバ煮定食が食べたかったり。
だから、 “グレード” という軸ではなく、あくまでその時に合わせて更新していくので、 “アップデート” という言葉になります。
私は“アップグレード”を否定してはいるわけではありません。当然のことながら、人や環境によっては、“アップグレード”すること自体が、そのときにも求められている“アップデート”であることも多々あります。そうした“アップグレード”ニーズも含めて、“アップデート”という言葉にしています。