「人の幸福から離れて生き残る会社はありません」
パナソニックは「くらしアップデート業」を営み、共創する。津賀社長が創業100周年記念講演で語った決意
■中国でのグローバルパートナー
ここで津賀社長は、パナソニックがこうした “アップデート” をいかに展開していくのか、事例を挙げるため、中国でのグローバルパートナーを紹介した。以下、津賀社長のコメントを抜粋する。
中国に『中国企業家倶楽部』という団体があります。アリババのジャック・マー氏が主席を務めていて、売上が1000億元を越えているか、業界トップ3に入っているという条件を満たした、そうそうたる企業だけで構成されています。
この団体は中国を代表する、企業家同士の交流や、企業家精神の継続、イノベーションの創出を目的としています。そして中国企業家倶楽部の傘下には、『中国緑公司連盟』という、業界のナンバー1、ナンバー2の有力なベンチャー企業や、急成長企業が所属している団体もあります。
パナソニックは、この中国企業家倶楽部と中国緑公司連盟の双方において、日本企業で唯一のグローバルパートナーになっています。こうしたネットワークを活用するなどして、パナソニックは中国マーケットにさらなる重点をおいていきますが、この中国緑公司連盟に加盟している、中国の有力企業と新しい取り組みを始めました。
■“くらしアップデート業” 事例その1「快適なプレハブハウス」
たとえば建築現場に数ヶ月間、住み込みで工事をするとき、期間限定とはいえ、人はここで暮らすことになります。このままでいいのだろうか? という思いから、建築現場の “くらしアップデート” を考えているのが、ひとつめの事例になります。
パートナーになっているのは、『GLODON(グロードン)』という中国最大の建築設計ソフトウェア企業と、『リンクデータ』という蓄電池を使ったエネルギーマネージメントを中核事業とする企業の2社になります。リンクデータとは戦略的なパートナーとして、さまざまな蓄電池関連のプロジェクトを進めています。
グロードンが持つプレハブハウスシステムと、リンクデータの創蓄エネルギーと、パナソニックの超薄型・高断熱パネルをはじめとする建材などと組み合わせることで、ハードな環境下にある建築現場においても、快適にくらすことができるプレハブハウスを提供しようと考えています。
実際に西安でモデルハウスを体験してきましたが、話で聞いていたよりも、格段に素晴らしい環境を作りあげることに成功しています。これまでの建築現場のプレハブハウスは使い捨てでしたが、別の現場でも繰り返し利用できるモデルにすることで、これまでとあまり変わらない費用でも、より快適で、より品質の高いものをご提供できるようにしたいと考えています。価格だけではなく、そこで働く方々に向けた食事などのサービス展開も視野に入れて、プレハブハウスでの暮らしの時間をアップデートしていきたいと考えています。
■“くらしアップデート業” 事例その2「快適なコンテナハウス」
さらにもうひとつ、同様の事業構想を練っています。
ドバイなどの中東エリアは高度経済成長にともなって、住居が不足していますが、猛暑で住宅を建設しづらいという問題を抱えています。パナソニックの薄型高断熱パネルや薄型高断熱ガラスは、もともと中東をはじめ、暑い地域において引き合いが多いのですが、こうした住宅不足を解決するために、人が快適に暮らすことができるコンテナハウスを考案いたしました。
ゼロからオリジナルの骨組みを作るのではなく、コンテナを活用しているので、大掛かりな製造施設が不要であり、モジュール化されているので、発注から最短2カ月で建設することができ、増築や移設も容易になります。まずは今年から中東エリアで実証実験を開始し、その後、中東以外の地域も含めて事業化していく予定です。将来的には災害時の復興住宅として活用したり、季節に合わせて移動できる別荘にしてみたりと、いろいろな展開ができるかもしれません。
このコンテナの中に置く家具を選べるようにしたり、BGMといったサービスなども付加していくことで、よりパーソナライズされた空間にしていくこともできると思います。ソフトウェアもハードウェアも必要とされるアップデートができる環境をつくっていきます。
コンテナにお住まいになる方にアップデートされた体験を提供できることが、なによりも大切です。追加するべきサービスが見えたら、そのサービスを提供できる企業ともぜひ組んでいきたいと考えています。プレハブハウス構想もコンテナハウス構想も、 “くらしアップデート” という視点で広くとらえると、地球上にはアップデートを必要としている人や場所、時間はまだまだたくさん存在しています。
■これからは「共創」が大切。自社完結では生き残れない
これらの重要なポイントは、国内はもちろんですが、国境も超えて、様々なノウハウやネットワークを持つ企業と手を組むことによって、アップデートのレベルや、アップデートできる範囲を拡張していくという点にあります。
これからの時代は、自社だけで完結させようという考えでは生き残れません。いかに思いを共有できる仲間を見つけられるか、そして仲間とともに作りあげるべき未来について、議論を重ね、お互いのノウハウを掛け合わせながら、スピードも格段に早めて、これまでにない暮らしのアップデートを実現させるか、ここが極めて重要になると考えています。