日本照明工業会、「Lighting Vision 2030」を発表
高付加価値化、グローバル化支援でさらなる拡大へ。照明業界の新たな成長戦略とは
東京ビッグサイトにて3月5日〜8日で開催の「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」内で展開している、日本照明工業会・日本経済新聞社主催の「LIGHTING FAIR 2019」において、日本照明工業会 会長 道浦正治氏による開催記念公演として、照明業界の新たな成長戦略を示す「Lighting Vision 2030」が披露された。本稿ではその内容をお伝えする。
「Lighting Vision 2030」が掲げるビジョンは、「 “Connected Smart Lighting & Human Centric Lighting” (CSL&HCL)の普及により、2030年に照明器具ストック市場 SSL(LEDやOLEDなど次世代半導体照明)化率100%を達成する」、さらに「あかり文化の向上と地球環境への貢献」というもの。道浦氏は「Connected Smart LightingとHuman Centric Lightingは互いに連動したものであり、今後CSL&HCLをひとつのフレーズとして工業会活動のキーワードにする」と語る。
ここで道浦氏は国内照明器具市場について言及。2017年度末時点で、国内における既設の照明器具台数(ストック台数)は、17億2900万台と推定。その内訳は、住宅用照明器具が9億6700万台、非住宅用屋内照明器具が7億2500万台、非住宅用屋外照明器具が3700万台。またストック市場におけるSSL化率は約34%で、「約1/3がLEDなどの照明器具に置き換わっていると認識する。これをベースにすると2018年度末は約40%ほどと推定する」とした。
2030年度までのSSL化へ、LED以外の従来光源の照明器具が減じていき、LED照明器具が伸長すると予測。これまでの「Lighting Vision 2020」で掲げられていた2020年時点でのLED化率50%目標については「ほぼほぼ達成の見込み」とし、「2030年度LED化率は少なくとも98%にもっていきたい。ただ使用時間が非常に少ない部位に使われている器具やランプは、2030年時点でも既存光源が使用されつづけるだろう。しかし放置するつもりはなく、業界挙げて古い照明器具の取替え促進のキャンペーンを進めたい」と語った。2025年頃からはLED照明器具からLED照明器具への更新需要が見込まれている。またLEDランプを使用してのLED照明器具化も一定の需要を見込む。
照明器具ストック市場のSSL化率100%を達成した場合の消費電力量の削減効果についても言及。2020年度末にSSL化率50%とすると、消費電力量は2013年度比で約20%削減。さらに2030年度でSSL化率100%に到達すれば、2013年度比で約50%の削減を実現すると見込む。さらに照明制御システム等の導入によりさらなる省エネ効果が期待でき、一般的なシステムの導入で約10%程度の効果が見込めるという。「政府目標である、2030年度でのCO2量2013年度比26%削減に対して、非常に大きな貢献ができる」。
昨今の国内照明器具市場動向については、「2010年度以降、LED照明器具の出荷台数は急増。2018年度には照明器具の出荷台数におけるSSL化率は98%とほぼオールLED化している。LEDの飛躍的な効率アップにより、各メーカーの品揃えも加速。新規参入業社の増加など激しい競争により販売価格が低下。東日本大震災以降の消費者の省エネ意識の向上など、世界でも類を見ないスピードでLED化が進んだ」と説明。
「2018年度は対前年100%となんとか維持しているが、成長は鈍化しつつある。19年度以降は新設住宅着工戸数の減少なども鑑みると、住宅市場を中心に出荷台数が若干減っていくのではないか」と危惧し、「従来型照明器具からLED照明器具への交換はもとより、LEDからLEDへの交換など、器具のリニューアルを今まで以上に促進させたい。加えてCSL&HCLなど高付加価値商品の普及拡大や、それによる新規ビジネスの創出などにもチャレンジしたい」と強い意気込みを示す。
さらに「拡大する海外市場の事業獲得も大きな課題」として、「世界経済の中心は、欧米から中国、インド、東南アジアに移行。世界の照明市場は新興国に牽引され拡大すると考えられる。出荷金額は2030年には36%増(2018年比)の11兆円、SSL化率は64%から96%に達すると推定される。LEDランプは1.7兆円の微減と推定されるが、ランプのSSL化率は88%程度までは行く。国内市場では人口減少に伴う新築着工の減少、照明器具出荷台数の減少が危惧されるが、海外に目を向けると成長の余地は大きい」との見方を示す。
「Lighting Vision 2030」を達成するため掲げる3つの重点方針は「 “Connected Industries” によるパラダイムシフトへの対応」、「あかりの質向上とSDGsへの貢献」、「グローバル化・ボーダーレス化への対応」。
“Connected Industries” によるパラダイムシフトへの対応については、「CSL&HCL普及に関わる制御システムの標準化について、関係部門と連携しながら推進する。照明ハードとソフトを合わせた取り組みが重要。4月からの照明委員会との合併シナジーに期待する。国際規格であるIECシステム関連ワーキンググループへの参画、他分野の機関との連携協調が今後ますます重要になると認識する。IoT、AIなどの先進技術を確保しながら、分野、業種を超えた連携が不可欠。他団体とのアライアンス、内部委員会への参画などを推進し、Connected Industriesの動きに適応できる当工業会の委員会組織、運営体制の整備を行いたい」とした。
あかりの質向上とSDGs(2015年に国連本部で採択された社会課題の解決に向け持続可能な社会を実現するための持続可能な開発目標)への貢献については、「ストック市場のSSL化加速による地球環境への貢献と、あかりの質向上による新たな空間価値の創出を重点課題とする」と語る。2009年から2019年は省エネを目的としてLED照明が飛躍的に普及拡大、あかりの質向上にも貢献したとして「この10年間はまさにLED化のパラダイムシフトだった。しかしその波も終焉を迎えつつある。そこで、さらに大きな波であるConnected Industriesのパラダイムシフトに上手に乗れるかどうかが重要」とする。
「CSL&HCLの普及は、照明制御システムなどによってさらに省エネに貢献するとともに、あかりの質向上による新たな空間価値の創出の可能性も広げる。IoT、AIなど先進技術を活用したCSL&HCLでのより快適な環境や空間の創出を行い、さらに見守り、監視、防犯、防災などの機能を付加して安心、安全、快適な生活環境の提供を図る。同時に新たな技術革新の創出などへの対応も必要である。CSL&HCLの普及によって、 “つながるあかり” と “あかりの質向上” の2軸での価値創出を図る。スマートシティやHEMSなどとの連携、エリア防災制御システムの普及促進が期待でき、調光・調色、波長制御など、あかりの本質制御によるヒューマンセントリックライフの普及に注力する」として、「日本照明委員会のメンバーも加わり、調査研究から標準化まで一気通貫で当会で担いたい」と意気込んだ。
グローバル化・ボーダーレス化への対応については、「海外市場参入を支援するための環境整備をひとつの柱と考える。各国政府、産業界との国際交流を通じた情報収集活動がベースになる。GLA世界照明協会にボードメンバーとして参画しており、国内事業者の代弁者として世界の照明産業界への情報発信には各国工業会との協力関係構築を図る。今後は特に中国、インド、タイ、インドネシア、ベトナムなどASEAN諸国の照明市場への参入企業拡大へ貢献する支援活動に注力する。また日本照明のブランド化として、海外で開催される展示会や各種イベントへの参加やビジネスマッチング活動を通じて、情報収集と人脈作り、日本照明製品のPR活動など日本企業の海外進出の一助となるよう活動を推進する」とした。
そして公正で適正な競争ができる健全な市場の維持として、「製品のグローバル化、ボーダレス化が進む中、国内でのランプ生産が縮小し、海外生産品の輸入増加というトレンドは継続すると考える。日本市場にマッチしない製品利用のリスクも増大する。健全な市場を維持向上させるため、製品の性能規定を定めた標準化、その基準を正確に評価測定できる試験場や制度の充実、チェックする市場監視体制の強化が必要不可欠」とした。
最後に道浦氏は、「人口減少による国内建設市場は先行き厳しいと考えるが、CSL&HCLの普及であかり文化の向上と地球環境への貢献をして参りたい。業界発展のために今後とも尽力する」と締めくくった。
「Lighting Vision 2030」が掲げるビジョンは、「 “Connected Smart Lighting & Human Centric Lighting” (CSL&HCL)の普及により、2030年に照明器具ストック市場 SSL(LEDやOLEDなど次世代半導体照明)化率100%を達成する」、さらに「あかり文化の向上と地球環境への貢献」というもの。道浦氏は「Connected Smart LightingとHuman Centric Lightingは互いに連動したものであり、今後CSL&HCLをひとつのフレーズとして工業会活動のキーワードにする」と語る。
ここで道浦氏は国内照明器具市場について言及。2017年度末時点で、国内における既設の照明器具台数(ストック台数)は、17億2900万台と推定。その内訳は、住宅用照明器具が9億6700万台、非住宅用屋内照明器具が7億2500万台、非住宅用屋外照明器具が3700万台。またストック市場におけるSSL化率は約34%で、「約1/3がLEDなどの照明器具に置き換わっていると認識する。これをベースにすると2018年度末は約40%ほどと推定する」とした。
2030年度までのSSL化へ、LED以外の従来光源の照明器具が減じていき、LED照明器具が伸長すると予測。これまでの「Lighting Vision 2020」で掲げられていた2020年時点でのLED化率50%目標については「ほぼほぼ達成の見込み」とし、「2030年度LED化率は少なくとも98%にもっていきたい。ただ使用時間が非常に少ない部位に使われている器具やランプは、2030年時点でも既存光源が使用されつづけるだろう。しかし放置するつもりはなく、業界挙げて古い照明器具の取替え促進のキャンペーンを進めたい」と語った。2025年頃からはLED照明器具からLED照明器具への更新需要が見込まれている。またLEDランプを使用してのLED照明器具化も一定の需要を見込む。
照明器具ストック市場のSSL化率100%を達成した場合の消費電力量の削減効果についても言及。2020年度末にSSL化率50%とすると、消費電力量は2013年度比で約20%削減。さらに2030年度でSSL化率100%に到達すれば、2013年度比で約50%の削減を実現すると見込む。さらに照明制御システム等の導入によりさらなる省エネ効果が期待でき、一般的なシステムの導入で約10%程度の効果が見込めるという。「政府目標である、2030年度でのCO2量2013年度比26%削減に対して、非常に大きな貢献ができる」。
昨今の国内照明器具市場動向については、「2010年度以降、LED照明器具の出荷台数は急増。2018年度には照明器具の出荷台数におけるSSL化率は98%とほぼオールLED化している。LEDの飛躍的な効率アップにより、各メーカーの品揃えも加速。新規参入業社の増加など激しい競争により販売価格が低下。東日本大震災以降の消費者の省エネ意識の向上など、世界でも類を見ないスピードでLED化が進んだ」と説明。
「2018年度は対前年100%となんとか維持しているが、成長は鈍化しつつある。19年度以降は新設住宅着工戸数の減少なども鑑みると、住宅市場を中心に出荷台数が若干減っていくのではないか」と危惧し、「従来型照明器具からLED照明器具への交換はもとより、LEDからLEDへの交換など、器具のリニューアルを今まで以上に促進させたい。加えてCSL&HCLなど高付加価値商品の普及拡大や、それによる新規ビジネスの創出などにもチャレンジしたい」と強い意気込みを示す。
さらに「拡大する海外市場の事業獲得も大きな課題」として、「世界経済の中心は、欧米から中国、インド、東南アジアに移行。世界の照明市場は新興国に牽引され拡大すると考えられる。出荷金額は2030年には36%増(2018年比)の11兆円、SSL化率は64%から96%に達すると推定される。LEDランプは1.7兆円の微減と推定されるが、ランプのSSL化率は88%程度までは行く。国内市場では人口減少に伴う新築着工の減少、照明器具出荷台数の減少が危惧されるが、海外に目を向けると成長の余地は大きい」との見方を示す。
「Lighting Vision 2030」を達成するため掲げる3つの重点方針は「 “Connected Industries” によるパラダイムシフトへの対応」、「あかりの質向上とSDGsへの貢献」、「グローバル化・ボーダーレス化への対応」。
“Connected Industries” によるパラダイムシフトへの対応については、「CSL&HCL普及に関わる制御システムの標準化について、関係部門と連携しながら推進する。照明ハードとソフトを合わせた取り組みが重要。4月からの照明委員会との合併シナジーに期待する。国際規格であるIECシステム関連ワーキンググループへの参画、他分野の機関との連携協調が今後ますます重要になると認識する。IoT、AIなどの先進技術を確保しながら、分野、業種を超えた連携が不可欠。他団体とのアライアンス、内部委員会への参画などを推進し、Connected Industriesの動きに適応できる当工業会の委員会組織、運営体制の整備を行いたい」とした。
あかりの質向上とSDGs(2015年に国連本部で採択された社会課題の解決に向け持続可能な社会を実現するための持続可能な開発目標)への貢献については、「ストック市場のSSL化加速による地球環境への貢献と、あかりの質向上による新たな空間価値の創出を重点課題とする」と語る。2009年から2019年は省エネを目的としてLED照明が飛躍的に普及拡大、あかりの質向上にも貢献したとして「この10年間はまさにLED化のパラダイムシフトだった。しかしその波も終焉を迎えつつある。そこで、さらに大きな波であるConnected Industriesのパラダイムシフトに上手に乗れるかどうかが重要」とする。
「CSL&HCLの普及は、照明制御システムなどによってさらに省エネに貢献するとともに、あかりの質向上による新たな空間価値の創出の可能性も広げる。IoT、AIなど先進技術を活用したCSL&HCLでのより快適な環境や空間の創出を行い、さらに見守り、監視、防犯、防災などの機能を付加して安心、安全、快適な生活環境の提供を図る。同時に新たな技術革新の創出などへの対応も必要である。CSL&HCLの普及によって、 “つながるあかり” と “あかりの質向上” の2軸での価値創出を図る。スマートシティやHEMSなどとの連携、エリア防災制御システムの普及促進が期待でき、調光・調色、波長制御など、あかりの本質制御によるヒューマンセントリックライフの普及に注力する」として、「日本照明委員会のメンバーも加わり、調査研究から標準化まで一気通貫で当会で担いたい」と意気込んだ。
グローバル化・ボーダーレス化への対応については、「海外市場参入を支援するための環境整備をひとつの柱と考える。各国政府、産業界との国際交流を通じた情報収集活動がベースになる。GLA世界照明協会にボードメンバーとして参画しており、国内事業者の代弁者として世界の照明産業界への情報発信には各国工業会との協力関係構築を図る。今後は特に中国、インド、タイ、インドネシア、ベトナムなどASEAN諸国の照明市場への参入企業拡大へ貢献する支援活動に注力する。また日本照明のブランド化として、海外で開催される展示会や各種イベントへの参加やビジネスマッチング活動を通じて、情報収集と人脈作り、日本照明製品のPR活動など日本企業の海外進出の一助となるよう活動を推進する」とした。
そして公正で適正な競争ができる健全な市場の維持として、「製品のグローバル化、ボーダレス化が進む中、国内でのランプ生産が縮小し、海外生産品の輸入増加というトレンドは継続すると考える。日本市場にマッチしない製品利用のリスクも増大する。健全な市場を維持向上させるため、製品の性能規定を定めた標準化、その基準を正確に評価測定できる試験場や制度の充実、チェックする市場監視体制の強化が必要不可欠」とした。
最後に道浦氏は、「人口減少による国内建設市場は先行き厳しいと考えるが、CSL&HCLの普及であかり文化の向上と地球環境への貢献をして参りたい。業界発展のために今後とも尽力する」と締めくくった。