メッセ・ベルリン、イエンズ・ハイテッカー氏らに訊く
<IFA GPC>IFA NEXTで日本は輝けるのか?4人のキーマンに聞く「IFA2019の見どころ」
――今回はどのような経緯で日本がIFA NEXTのグローバル・イノベーション・パートナーになることが決まったのでしょうか。
西山氏:メッセ・ベルリンからのご提案は昨年秋ごろにいただきました。日本ではCEATEC JAPANがエレクトロニクス関連の技術、サービスの国際化に向けて取り組んでいます。このほかにも日本のイノベーションを世界に届けるための取り組みを強化したいと考えていたところにいただいたオファーだったため、これは良いチャンスであると考えました。
――日本としてどのような内容を訴求しますか。
西山:IFA NEXTの出展内容についてはコンセプトに近い話をするのが良いのか、あるいは具体的なサービス、製品に近い方が良いのかをこれから精査したいと思います。私としてはこれまでの情報社会、インターネット社会と少し違う方向にトレンドが移行して、今後日本が産業競争力を回復できる良いチャンスが訪れていると捉えています。ただ、黙っていても世界が日本に関心を持ってくれる時代ではありません。日本に対する悪い意味での古典的な先入観を壊していきたいと思うし、反対にややもすれば私たち日本人自身が自己暗示のようなものにかかっていて、「日本人はモノヅクリ以外のことを世界にアピールしてはいけないのではないか」と思いがちになってしまいます。私たちの方も意識を改革して、海外の方の日本に対する固定観念を一新しなければならない時期がきていると思っています。IFA NEXTの出展を良い機会として活用したいですね。
――どのような企業に参加を呼びかけますか。
西山:具体的にはIFA NEXTのホールに、日本のスタートアップを集めたコーナーを設けることになろうかと思います。経済産業省が推進するJ-Startupのプログラムに参加する企業にはぜひIFA NEXTにも多く出てほしいと考えていますが、具体的にどんな企業をお呼びして、日本として何を見せるかについてはこれから本番までに固めていくつもりです。
出展内容についてはIFAのポリシーもあろうかと思います。来場者の皆様、出展者どうしのバランスを見てあまり場違いな内容にはしたくないとも思っています。
一般論として昨今のエレクトロニクスは個々のプロダクトについてはもちろん注目されているのですが、それよりも人とデータの関わりを改革する社会の仕組み、新しい仕掛けなどが脚光を浴びている側面もあります。これまでのインターネット社会と違う世界がまもなく訪れそうな予感を誰もが抱いているのではないでしょうか。行政としてはこの未来のコンセプトを「Society 5.0」と名付けて呼びかけているところもありますが、私は新しい社会に変革するときの「インターフェース」をどうつくるかというテーマに向き合いことがとても大事であると考えています。IFA NEXTのグローバル・イノベーション・パートナーとして、日本の出展社が何か一つ共通のテーマを掲げた方がインパクトのある見せ方ができるはずなので、これから参加いただく出展社の皆様と一緒に議論したいと思います。
――出展社の募集方法を教えてください。
西山:パートナーシップが決定したばかりなので、これから呼びかけることになりますが、J-Startupの参加企業とその横のつながり、過去にCEATEC JAPANに出展した企業も含めて様々なチャンネルを活用したいと考えています。今日こうやって皆様に取材していただいたニュースも呼びかけになると期待しています。IFA NEXT出展に関連する問い合わせは経済産業省 商務情報産業局(https://www.meti.go.jp/intro/data/akikou08_1j.html)までいただければと思います。
――大手家電メーカーのイノベーティブな取り組みについても支援する計画はありますか。
西山:はい。多くの家電メーカーにとって変革の時期が訪れています。家電を売ること単体ではなく、新しいことに挑戦を志す大手メーカーのキラリと輝く取り組みがあれば、IFA NEXTグローバル・イノベーション・パートナーの枠組みの中で支援したいと考えています。
■IFA NEXTのプレゼンテーションステージにも要注目
今年のIFA NEXTの開催概要についてはメッセ・ベルリンでイベントを担当するヴォルフガング・トゥンツェ氏にお話をうかがった。
――今年はどのような形でIFA NEXTを開催しますか。
トゥンツェ:ロケーションは同じメッセ・ベルリンの中でも最大規模となる7,000平方メートルのスペースを誇る「ホール26」に、2つのセグメントに分けて展開します。開催日程は9月6日から11日までの6日間。サークル状の展示スペースの中心にある2つのステージでは各社の展示内容やサービスを紹介するプレゼンテーションが定期的に行われます。ステージのプログラムも、ブロックチェーン、5G、ヘルスケア、モビリティ、8Kとコンテンツなどかなり多岐にわたって面白いものになると思います。
――いま欧州のスタートアップのトレンドをどのように捉えていますか。
トゥンツェ:一般的には新たに立ち上がるスタートアップはハードウェアからソフトウェアの方にシフトしつつあると思います。AIとこれを活かしたサービス、スマートホームやスマートシティなど社会インフラのサービスも多く立ち上がっています。コンテンツ関連ではモバイルゲーミング分野関連も注目されています。IFA NEXTのテーマにはオートモーティブやモビリティも含まれていますが、今年はShift Automotiveと連動して、この分野にも多様な展示をお見せしたいと考えています。
――IFA NEXTグローバル・イノベーション・パートナーとして日本に何を期待しますか。
トゥンツェ:日本の皆様にグローバル・イノベーション・パートナーとして参加していただけることをとても嬉しく思っています。私たちにとっても初めての挑戦になるので、メディアからの注目を高めたり、様々なコ・イノベーションがスムーズに生まれるようにプラットフォームを整えたいと考えています。今回のパートナーシップが将来、様々な方向に発展してほしいですね。
■ゼンハイザーはAMBEO Soundbarや新しい製品をIFAに揃える
今年ゼンハイザーは初めての「IFAグローバル・オーディオ・パートナー」としてIFA2019に出展することも決まった。同社のCEOであるアンドレアス・ゼンハイザー氏に、今年のIFAに向けた意気込みを単独でインタビューする機会を得た。
――IFAグローバル・オーディオ・パートナーとして、今年はどのような展示にしたいと考えていますか。
アンドレアス:ゼンハイザーはIFAに古くから出展しているブランドです。今年はメッセ・ベルリンとのコラボレーションの次のレベルに高めたいと考えて、IFAグローバル・オーディオ・パートナーとして新たなチャレンジをともに実現することになりました。
今年、ゼンハイザーは例年と同じように「ホール1.2」に単独のブースを構えます。他にもIFA NEXTにはAMBEOのVR/ARソリューションを出展して、来場者の皆様に体験してもらえるスペースを作ります。さらにプレス関係者の方々が集まるメディアセンターには機材を提供して、ゼンハイザー製品に関するインフォメーションセンターを置くことを計画しています。
――ゼンハイザーは9月に開催されるIFAの姉妹イベント、CE Chinaにも参加することが発表されました。背景についてお聞かせください。
アンドレアス:中国はアメリカの次に大きなコンシューマーエレクトロニクスのマーケットです。中国の有力なリテール関係者にゼンハイザーのブランドと製品を紹介できるCE Chinaは、当社の成長戦略にとって重要なイベントであると考えました。ゼンハイザーは現在、中国市場はオンラインと実店舗の両方で商品を展開していますが、実店舗の方を強化するための方策については以前から模索をしてきました。メッセ・ベルリンとの協業をぜひ成功させたいと考えています。
――今年注力する製品、IFAに出展を考えている製品などがあれば教えてください。
アンドレアス:IFA GPCにも展示した「AMBEO Soundbar」は当社がいまとても注力している新製品です。今後は様々な立体音響コンテンツが増えることも予想されているので、AMBEOについてはスポットを当てていきたいと思っています。特に体験展示は強化します。新しいプロダクトラインも現在開発を進めていますが、それは秋まで楽しみにお待ちください。