ヘッドホンアンプも強化。試聴レポあり
<HIGH END>世界初AK4499EQ搭載。Astell&Kernの新旗艦DAP「A&ultima SP2000」詳細を開発陣に聞いた
世界最大規模のハイエンドオーディオ見本市「HIGH END MUNICH 2019」が現地時間9日(水)に開幕した。例年、本イベントに合わせて大きな発表を行うAstell&Kernは、既報の通り、新フラグシップとなるポータブルオーディオプレーヤー「A&ultima SP2000」、A&ultima SP1000専用ポータブルアンプ「SP1000 AMP」、イヤホン「AK T9iE」を発表。各製品の実機をブース内で世界初披露した。
ブースでは、Astell&Kernでマネージングディレクターを務めるテッド・ベイク氏、A&ultima SP2000(以下、SP2000)の設計を担当した同R&Dセンター ディレクターのチャーリー・ユー氏に、特にSP2000の詳細を伺うことができた。
「A&ultima SP2000」は、海外では2019年7月に3,500ドルで発売予定。Stainless SteelモデルとCopperモデルを用意する。すでに明らかになっているとおり、旭化成エレクトロニクス(AKM)の最新フラグシップDAC「AK4499EQ」をデュアルで(L/Rで1基ずつ、合計2基)搭載したことが大きな特徴だ。AK4499EQを搭載した製品は、DAPに限らず、据え置きオーディオ機器も含めて本機が世界初とのこと。
なお、従来のフラグシップ「A&ultima SP1000」は、AKMの一世代前の最上位DAC「AK4497EQ」をデュアル搭載していた。
AK4499EQはAKM初の電流出力方式DAC。SP2000は同社フラグシップとして初めて、電流出力方式DAC採用し独自のI/V変換回路を備えたモデルとなる(他シリーズでは、電流出力方式DAC「ES9038Pro」をデュアル搭載したKANN CUBEなど先例がある)。
ユー氏は、現時点で最終の値ではないと前置きしつつ、本機の特性も紹介。S/Nは125dB、THD+Nは0.0004%(いずれもバランス/アンバランス時)を実現したという。ちなみにSP1000はS/Nが122dB、THD+Nが0.0008%(いずれもバランス時)だ。
2.5mmバランス/3.5mmアンバランスのヘッドホン出力を備える点は同様だが、ヘッドホンアンプが大幅に強化。SP1000の出力がバランス 3.9Vrms/アンバランス 2.2Vrmsだったのに対して、SP2000の出力はバランス 6Vrms/アンバランス 3Vrmsとなった。なお、このヘッドホンアンプ強化を踏まえ、SP2000では外付けヘッドホンアンプを用意する予定はなく、底面部からアンプ用接続部が省略されている。
既報の通り、PCM 768kHz/32bit と DSD512(22.4MHz/1bit)の再生に対応と再生フォーマットも強化。内蔵メモリーも512GBへとアップした。
これに加えて、Astell&KernのDAPとして初めてデュアルバンドWi-Fi(2.4/5GHz、b/g/n/a/ac)に対応した。SP2000の筐体は、上面部と背面の上部にステンレスおよびカッパーとは異なる素材を用いた新デザインとなったが、これはアンテナの確保も理由のひとつだという。
SDカードスロットは、従来のピンで開けるトレイ式のものから、差し込み式に変更。位置も従来の天面から、底面へ移された。SP1000と同じくオクタコアCPUを搭載し、バッテリー容量は3,700mAh(再生時間は現時点で未発表)。Femtoクロック採用も同様だ。
UIはSP1000と同じ第四世代のものだが、新たに横画面表示(Car mode)に対応。また、自身が作成したEQのパラメーターを他のユーザーへシェアする機能も備えた。これらは他の第4世代UI採用機種もアップデート対応する。
音質はSP1000からどうような点が向上したのか。ユー氏に尋ねると「微細な音まで情報量がさらに増したことで、リアリティが圧倒的に向上した」と答えてくれた。A&Ultimaでは必ずAKM製DACを採用すると決まっているわけではないが、現時点ではこれがベストの選択だったと同氏。また、AK4499EQの初搭載製品ということもあり、旭化成エレクトロニクスとはDACの開発段階から協力してきたという。
なおSP2000は、SP1000の後継モデルという位置付けで、当面は両機が併売になる予定だが、今後切り替わっていく予定とのこと。
会場では、短時間ながら「A&ultima SP2000」を試聴することができたので、ファーストインプレッションをお伝えしたい。主に「A&ultima SP1000」と比較しつつ、アンバランス出力の音を、Unique MelodyのカスタムIEM「MAVERICK II」で確認した。
基本的な音調はSP1000と同傾向で、豊かな情報量と分解能の高さに加えて、繊細な弱音や陰影感まで描き出す優れた表現力を備えている。その表現力のベースとなるのが圧倒的なS/N感なのだが、SP1000と聴き比べると、明らかにS/N感が一段上だ。マイケル・ジャクソン「スリラー」冒頭、ドアを開ける音が、よりいっそうの静寂を背景にして生々しく聴こえる。SP1000の分解能も十分優れているが、SP2000の分解能はさらに高い。サウンドステージもよりクリアで、各楽器が明瞭に分離していく。
SP1000とやや印象が異なったのが、バスドラムなど低音で、より太く、力強さが加わる。ボーカルはSP1000と比べると、よりスッキリ浮かび上がってくる。これらの傾向もあって、よりメリハリの効いた表現に感じた。最新DAC採用によるS/Nの向上や歪み低減はもちろん、電流出力方式、ヘッドホンアンプ強化などもこうした音質傾向に寄与しているはずだ。
■SP1000 AMPとAK T9iEも世界初披露
SP1000 AMPについても話を聞くことができた。SP1000 AMPは、その名の通りA&Ultima SP1000専用の外付けアンプモジュール。SP1000の仕様に合わせて、Stainless Steel、Copper、Onyx Blackの3色を用意する。いずれもボディはアルミとステンレススチールで構成されている。
出力はローゲイン設定時でバランス 6.2Vrms/アンバランス 2.9Vrms、ハイゲイン設定時でバランス 10Vrms/アンバランス 6.2Vrmsとなる。専用ケースが付属する予定だ。
SP2000にフラグシップが切り替わるタイミングでSP1000 AMPが登場した理由については「SP1000の発売時に、外付けアンプの発売はお客様に約束した。すでにSP1000は多くのユーザーに愛用いただいており、私たちは約束を果たした」(ユー氏)と説明してくれた。
会場にはもうひとつの新製品、ベイヤーダイナミックとコラボによる新イヤホン「AK T9iE」も披露された。本機はドイツ国内の工場からHigh Endの当日に直送されてきたとのこと。本機は「AK T8iE」のアップデートモデル。新開発のアコースティックベントポートとフィルターを搭載したことが特徴となっている。
ブースでは、Astell&Kernでマネージングディレクターを務めるテッド・ベイク氏、A&ultima SP2000(以下、SP2000)の設計を担当した同R&Dセンター ディレクターのチャーリー・ユー氏に、特にSP2000の詳細を伺うことができた。
「A&ultima SP2000」は、海外では2019年7月に3,500ドルで発売予定。Stainless SteelモデルとCopperモデルを用意する。すでに明らかになっているとおり、旭化成エレクトロニクス(AKM)の最新フラグシップDAC「AK4499EQ」をデュアルで(L/Rで1基ずつ、合計2基)搭載したことが大きな特徴だ。AK4499EQを搭載した製品は、DAPに限らず、据え置きオーディオ機器も含めて本機が世界初とのこと。
なお、従来のフラグシップ「A&ultima SP1000」は、AKMの一世代前の最上位DAC「AK4497EQ」をデュアル搭載していた。
AK4499EQはAKM初の電流出力方式DAC。SP2000は同社フラグシップとして初めて、電流出力方式DAC採用し独自のI/V変換回路を備えたモデルとなる(他シリーズでは、電流出力方式DAC「ES9038Pro」をデュアル搭載したKANN CUBEなど先例がある)。
ユー氏は、現時点で最終の値ではないと前置きしつつ、本機の特性も紹介。S/Nは125dB、THD+Nは0.0004%(いずれもバランス/アンバランス時)を実現したという。ちなみにSP1000はS/Nが122dB、THD+Nが0.0008%(いずれもバランス時)だ。
2.5mmバランス/3.5mmアンバランスのヘッドホン出力を備える点は同様だが、ヘッドホンアンプが大幅に強化。SP1000の出力がバランス 3.9Vrms/アンバランス 2.2Vrmsだったのに対して、SP2000の出力はバランス 6Vrms/アンバランス 3Vrmsとなった。なお、このヘッドホンアンプ強化を踏まえ、SP2000では外付けヘッドホンアンプを用意する予定はなく、底面部からアンプ用接続部が省略されている。
既報の通り、PCM 768kHz/32bit と DSD512(22.4MHz/1bit)の再生に対応と再生フォーマットも強化。内蔵メモリーも512GBへとアップした。
これに加えて、Astell&KernのDAPとして初めてデュアルバンドWi-Fi(2.4/5GHz、b/g/n/a/ac)に対応した。SP2000の筐体は、上面部と背面の上部にステンレスおよびカッパーとは異なる素材を用いた新デザインとなったが、これはアンテナの確保も理由のひとつだという。
SDカードスロットは、従来のピンで開けるトレイ式のものから、差し込み式に変更。位置も従来の天面から、底面へ移された。SP1000と同じくオクタコアCPUを搭載し、バッテリー容量は3,700mAh(再生時間は現時点で未発表)。Femtoクロック採用も同様だ。
UIはSP1000と同じ第四世代のものだが、新たに横画面表示(Car mode)に対応。また、自身が作成したEQのパラメーターを他のユーザーへシェアする機能も備えた。これらは他の第4世代UI採用機種もアップデート対応する。
音質はSP1000からどうような点が向上したのか。ユー氏に尋ねると「微細な音まで情報量がさらに増したことで、リアリティが圧倒的に向上した」と答えてくれた。A&Ultimaでは必ずAKM製DACを採用すると決まっているわけではないが、現時点ではこれがベストの選択だったと同氏。また、AK4499EQの初搭載製品ということもあり、旭化成エレクトロニクスとはDACの開発段階から協力してきたという。
なおSP2000は、SP1000の後継モデルという位置付けで、当面は両機が併売になる予定だが、今後切り替わっていく予定とのこと。
会場では、短時間ながら「A&ultima SP2000」を試聴することができたので、ファーストインプレッションをお伝えしたい。主に「A&ultima SP1000」と比較しつつ、アンバランス出力の音を、Unique MelodyのカスタムIEM「MAVERICK II」で確認した。
基本的な音調はSP1000と同傾向で、豊かな情報量と分解能の高さに加えて、繊細な弱音や陰影感まで描き出す優れた表現力を備えている。その表現力のベースとなるのが圧倒的なS/N感なのだが、SP1000と聴き比べると、明らかにS/N感が一段上だ。マイケル・ジャクソン「スリラー」冒頭、ドアを開ける音が、よりいっそうの静寂を背景にして生々しく聴こえる。SP1000の分解能も十分優れているが、SP2000の分解能はさらに高い。サウンドステージもよりクリアで、各楽器が明瞭に分離していく。
SP1000とやや印象が異なったのが、バスドラムなど低音で、より太く、力強さが加わる。ボーカルはSP1000と比べると、よりスッキリ浮かび上がってくる。これらの傾向もあって、よりメリハリの効いた表現に感じた。最新DAC採用によるS/Nの向上や歪み低減はもちろん、電流出力方式、ヘッドホンアンプ強化などもこうした音質傾向に寄与しているはずだ。
■SP1000 AMPとAK T9iEも世界初披露
SP1000 AMPについても話を聞くことができた。SP1000 AMPは、その名の通りA&Ultima SP1000専用の外付けアンプモジュール。SP1000の仕様に合わせて、Stainless Steel、Copper、Onyx Blackの3色を用意する。いずれもボディはアルミとステンレススチールで構成されている。
出力はローゲイン設定時でバランス 6.2Vrms/アンバランス 2.9Vrms、ハイゲイン設定時でバランス 10Vrms/アンバランス 6.2Vrmsとなる。専用ケースが付属する予定だ。
SP2000にフラグシップが切り替わるタイミングでSP1000 AMPが登場した理由については「SP1000の発売時に、外付けアンプの発売はお客様に約束した。すでにSP1000は多くのユーザーに愛用いただいており、私たちは約束を果たした」(ユー氏)と説明してくれた。
会場にはもうひとつの新製品、ベイヤーダイナミックとコラボによる新イヤホン「AK T9iE」も披露された。本機はドイツ国内の工場からHigh Endの当日に直送されてきたとのこと。本機は「AK T8iE」のアップデートモデル。新開発のアコースティックベントポートとフィルターを搭載したことが特徴となっている。