制約を取り払った規格外モデル
「KANN CUBE」はなぜ常識破りの超重量級DAPになったのか? Astell&Kern幹部を直撃
Astell&Kernからこの6月、強烈な存在感を放つDAP「KANN CUBE」が登場する。フルアルミ製ボディは外形寸法87.75W×140H×31.5Dmm、質量500g弱。マッシブなデザインのなかに、ESSの最上位DAC「ES9038PRO」を2基搭載、最大出力12Vという強力なヘッドホンアンプやMINI XLR端子のライン出力を備えている。
豊富な機能性をコンセプトとした “パフォーマンス・ライン”の製品として、既に発売中の「KANN」についでデビューする「KANN CUBE」。どのような経緯で開発に至ったのか? ESS製DACを採用した理由とは?12VのハイゲインモードやミニXLR端子は何故搭載されたか? など、気になるポイントについて同社デバイスビジネスユニットのTed Baek氏にお話しをうかがった。
従来のAstell&Kernがセダンならば、KANN CUBEはSUV
ーー 初代KANNはAstell&Kernの中でも異色の製品でしたが、初代KANNについて市場反応はいかがでしたか?
TED氏 KANNを開発したのは、Astell&Kernの従来のプレーヤーでは小型化などのために制約が大きかったので、その制約を取り去ったラインナップに挑戦したかったからです。ですから、既存の「コア・ライン」「カジュアル・ライン」とは異なる「パフォーマンス・ライン」という独立したラインを設けました。
我々も市場の反応については心配していたのですが、KANNはヨーロッパと米国からの反応が驚くほど良いものでした。彼らのライフスタイルには見事適合したようです。
ーー この「KANN CUBE」はどのようなユーザーを想定して開発しましたか?
TED氏 初代KANNの評判が予想以上に良かったので、基本的にはKANNのコンセプトを踏襲しました。自動車にセダンやSUVがあるように、従来のAstell&Kernがセダンならば、KANN CUBEはSUVのような特徴のあるモデルにしたかったのです。簡便さは従来のAstell&Kernのラインナップに任せて、重くてもより強力なものがほしいと言う人をターゲットにした感じですね。たとえばESSのプロフェッショナルDAC(ESS9038Pro)をデュアルで搭載するのはコンパクトモデルでは難しいのですが、そこに挑戦できるようなものを作りたかったのです。
ーー KANN CUBEが第一世代KANNよりもさらに大きくなったというのはどういう理由でしょうか?
TED氏 高性能をさらにつきつめてプロフェッショナルDAC(ESS9038Pro)を搭載するためには、バッテリーサイズなどでさらに大きな筐体が必要と考えました。つまり筐体に余裕があるという特色を生かし、さらなる高音質、さらなる高出力をねらった進化系としたわけです。
ーー 外観デザインも変化しましたね。
TED氏 これはCD Ripperのデザインと統一感を持たせました。KANN CUBEの特徴である圧倒的な出力の強さを表現できるように重厚なデザインとしています。また据え置きの時により安定感を持たせた設計とし、細かなところでも指かかりをよくする窪みなど工夫をしています。
またKANN CUBEでは総金属となったため、アンテナ部分はプラスチックとしています。
ーー フルサイズのSDカードスロットがなくなった理由は何ですか?
TED氏 ひとつは、今回採用した新CPUに伴う効率的な設計のためです。もちろん今回もフルサイズSDを搭載することは技術的には可能ですが、MicroSDの容量も上がり内蔵メモリの容量も増やしたため、特にフルサイズSDを採用する必要性はないと考えました。
ESS製DACを選んだ理由とは?
ーー 従来のKANNはAKMのDACチップでしたが、KANN CUBEではESSのDACチップを選んだのはどういう理由からでしょうか?
TED氏 いままでのサイズのAstell&Kernプレーヤーでは採用しにくかったホームオーディオ用のプロフェッショナルDACチップを使いたいという考えがあったのです。そこでSE100で実績のあったESS9038Proをデュアルで使いました。これがKANN CUBEの一番の特徴でもあり、こうした挑戦が可能なのがパフォーマンス・ラインだと考えています。
ーー ESS9038Proをデュアルで採用するときに工夫した点はどこでしょうか?
TED氏 このDACチップはもともとポータブル向けではないので、音質が良いのですが電力消費が大きいのが難点でした。高出力が目的だったこともあり、電力消費を抑えながら高出力を実現するのが難しかったですね。しかし、この優れたバッテリーマネージメントが我々の経験を活かした得意分野のひとつでもあるのです。
ーー 今回12Vのハイゲインモードを追加した理由はなんでしょうか?
TED氏 KANNの目的は外付けのアンプなしでも高出力を得ることだったのですが、高インピーダンスモデルなど鳴らしにくいヘッドホンを使用している人たちの中からは、まだ出力が足りないという声がありました。そこで他では得ることが難しいような高出力を目指そうと考えたわけです。とくに初代KANNを支持してくれたヨーロッパや米国のユーザーではヘッドホンを使用しているユーザーも多いので、そうした声が特に聞かれましたね。
ーー ミニXLR端子出力を設けた理由はなんでしょうか?
TED氏 KANNの実現した128dBのSNRはホームオーディオでも達成するのが難しい値です。そこで、ホームオーディオでよいシステムを持っている人たちにKANN CUBEから良質なアウトプットを提供するために、きちんとグランドの取れるミニXLR端子を採用しようと考えました。これもサイズに余裕のあるKANNならではの利点です。またミニXLR出力を使用した時には、KANN CUBEの内蔵アンプ回路を通りません。
ーー 最後に、中国などの低価格DAPの台頭についてはどう考えていますか?
TED氏 必然的に低価格モデルは妥協も増えます。我々としては業界をリードするプレミアムの考え方を貫きたいと思いますし、そのほうがお客様にも良い製品を届けることになると考えています。
豊富な機能性をコンセプトとした “パフォーマンス・ライン”の製品として、既に発売中の「KANN」についでデビューする「KANN CUBE」。どのような経緯で開発に至ったのか? ESS製DACを採用した理由とは?12VのハイゲインモードやミニXLR端子は何故搭載されたか? など、気になるポイントについて同社デバイスビジネスユニットのTed Baek氏にお話しをうかがった。
従来のAstell&Kernがセダンならば、KANN CUBEはSUV
ーー 初代KANNはAstell&Kernの中でも異色の製品でしたが、初代KANNについて市場反応はいかがでしたか?
TED氏 KANNを開発したのは、Astell&Kernの従来のプレーヤーでは小型化などのために制約が大きかったので、その制約を取り去ったラインナップに挑戦したかったからです。ですから、既存の「コア・ライン」「カジュアル・ライン」とは異なる「パフォーマンス・ライン」という独立したラインを設けました。
我々も市場の反応については心配していたのですが、KANNはヨーロッパと米国からの反応が驚くほど良いものでした。彼らのライフスタイルには見事適合したようです。
ーー この「KANN CUBE」はどのようなユーザーを想定して開発しましたか?
TED氏 初代KANNの評判が予想以上に良かったので、基本的にはKANNのコンセプトを踏襲しました。自動車にセダンやSUVがあるように、従来のAstell&Kernがセダンならば、KANN CUBEはSUVのような特徴のあるモデルにしたかったのです。簡便さは従来のAstell&Kernのラインナップに任せて、重くてもより強力なものがほしいと言う人をターゲットにした感じですね。たとえばESSのプロフェッショナルDAC(ESS9038Pro)をデュアルで搭載するのはコンパクトモデルでは難しいのですが、そこに挑戦できるようなものを作りたかったのです。
ーー KANN CUBEが第一世代KANNよりもさらに大きくなったというのはどういう理由でしょうか?
TED氏 高性能をさらにつきつめてプロフェッショナルDAC(ESS9038Pro)を搭載するためには、バッテリーサイズなどでさらに大きな筐体が必要と考えました。つまり筐体に余裕があるという特色を生かし、さらなる高音質、さらなる高出力をねらった進化系としたわけです。
ーー 外観デザインも変化しましたね。
TED氏 これはCD Ripperのデザインと統一感を持たせました。KANN CUBEの特徴である圧倒的な出力の強さを表現できるように重厚なデザインとしています。また据え置きの時により安定感を持たせた設計とし、細かなところでも指かかりをよくする窪みなど工夫をしています。
またKANN CUBEでは総金属となったため、アンテナ部分はプラスチックとしています。
ーー フルサイズのSDカードスロットがなくなった理由は何ですか?
TED氏 ひとつは、今回採用した新CPUに伴う効率的な設計のためです。もちろん今回もフルサイズSDを搭載することは技術的には可能ですが、MicroSDの容量も上がり内蔵メモリの容量も増やしたため、特にフルサイズSDを採用する必要性はないと考えました。
ESS製DACを選んだ理由とは?
ーー 従来のKANNはAKMのDACチップでしたが、KANN CUBEではESSのDACチップを選んだのはどういう理由からでしょうか?
TED氏 いままでのサイズのAstell&Kernプレーヤーでは採用しにくかったホームオーディオ用のプロフェッショナルDACチップを使いたいという考えがあったのです。そこでSE100で実績のあったESS9038Proをデュアルで使いました。これがKANN CUBEの一番の特徴でもあり、こうした挑戦が可能なのがパフォーマンス・ラインだと考えています。
ーー ESS9038Proをデュアルで採用するときに工夫した点はどこでしょうか?
TED氏 このDACチップはもともとポータブル向けではないので、音質が良いのですが電力消費が大きいのが難点でした。高出力が目的だったこともあり、電力消費を抑えながら高出力を実現するのが難しかったですね。しかし、この優れたバッテリーマネージメントが我々の経験を活かした得意分野のひとつでもあるのです。
ーー 今回12Vのハイゲインモードを追加した理由はなんでしょうか?
TED氏 KANNの目的は外付けのアンプなしでも高出力を得ることだったのですが、高インピーダンスモデルなど鳴らしにくいヘッドホンを使用している人たちの中からは、まだ出力が足りないという声がありました。そこで他では得ることが難しいような高出力を目指そうと考えたわけです。とくに初代KANNを支持してくれたヨーロッパや米国のユーザーではヘッドホンを使用しているユーザーも多いので、そうした声が特に聞かれましたね。
ーー ミニXLR端子出力を設けた理由はなんでしょうか?
TED氏 KANNの実現した128dBのSNRはホームオーディオでも達成するのが難しい値です。そこで、ホームオーディオでよいシステムを持っている人たちにKANN CUBEから良質なアウトプットを提供するために、きちんとグランドの取れるミニXLR端子を採用しようと考えました。これもサイズに余裕のあるKANNならではの利点です。またミニXLR出力を使用した時には、KANN CUBEの内蔵アンプ回路を通りません。
ーー 最後に、中国などの低価格DAPの台頭についてはどう考えていますか?
TED氏 必然的に低価格モデルは妥協も増えます。我々としては業界をリードするプレミアムの考え方を貫きたいと思いますし、そのほうがお客様にも良い製品を届けることになると考えています。