2021年度電気製品のリコール情報をSCEAが調査
身近な危険“リコール製品”。リコール情報の確認やSマークの有無でリスクを回避
■自宅にある製品、リコールされていませんか?
暑さも和らぎ、押し入れにしまっている季節商品を入れ替える時期になった。ここで気をつけてほしいのは、普段自宅で何気なく使っている製品が、メーカーから発表されているリコール情報に該当していないかということ。気づかずに使用している例も珍しくないが、リコール対象製品による事故が数多く発生しているだけに、気を付けなければならないポイントだ。
欠陥がある製品を製造・販売し、購入者が損害を被った場合には、ユーザー側に原因があったとしても、製造物責任法(PL法)により原則として企業側が損害の賠償責任を負わなければならない。また、欠陥がある製品を製造・販売したことにより企業イメージが低下する恐れもあり、これらのリスクを回避する目的から、製造者・販売者が自主的なリコール(製品の回収・交換・返金など)を行うことも多い。
こうした自主回収のリコール情報は、消費者庁や独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)のホームページで公表されており、誰でも確認することができるが、このたび、電気用品安全法を補完し、電気製品の安全のための第三者認証制度「Sマーク」の普及・運営を担う電気製品認証協議会(SCEA)事務局では、NITEのホームページで公表されているリコール情報の電気製品について、Sマーク製品の有無による事故との関連性をはじめとする調査結果を報告している。
調査対象としたのは2021年度(2021年4月1日から2022年3月31日)におけるリコール。Sマーク認証4機関(「一般財団法人 電気安全環境研究所(JET)」「一般財団法人 日本品質保証機構(JQA)」「株式会社 UL Japan」「テュフ・ラインランド・ジャパン 株式会社」)による調査の結果から、電気製品のリコール報告件数は65件あり、そのうちSマーク表示品は3品(構成比:4.6%)だったという。
さらにその内訳を見ると、2件は「経年劣化」によるもので、使用後10年から15年を経過し、発火・発煙の恐れがあるとされた。残りの1件は運転モードを設定するソフトの不具合によるものだった。
Sマーク認証時のテストに用いられるのは未使用品(新品)であるため、長期にわたる実使用品における「経年劣化」を予想することは難しい。そのため、すべての部品の長期使用における評価を行うことができない。また、試験の評価は安全上の技術基準を中心に行われており、前記のソフトの不具合などは「安全基準対象外」に該当する。さらに、製造事業者が想定していない使い方による「誤使用」など、取扱説明書等で禁止している使用が原因である場合も同様に評価対象外だ。
従って、Sマーク認証された製品においては、実質的に安全上のリコールの問題は発生しておらず、製造事業者の自己確認に基づく丸型PSEマークの限界が指摘されるなか、Sマークがそれを補完する重要な役割を担い、消費者が製品の安全性を見極める上からも、重要な指標となっていることを改めて認識しておきたい。
■過半数37件が重大事故の恐れ。うち20件はSマーク取得で回避可能
それでは、Sマークがなかった62製品の内訳はどのようになっているのか。PSEマークの対象となる電気用品安全法(電安法)の対象品は、第三者による技術基準適合性検査が義務づけられている菱型PSEマークの対象となる特定電気用品が7件、自己確認となる丸型PSEマークの対象となる特定以外電気用品が17件。そして、電安法の非対象品が38件となっていた。また、火災や発煙の事故の報道をよく目にするリチウムイオン蓄電池関連が29件と全体の44.6%を占めている点も見逃せない。すべてSマークは付いていなかった。
SCEA事務局長・平井雄二氏は「公表されている情報で読み解く限りにおいて、延焼・障害等の中程度以上の重大事故につながる可能性がある案件(製品)が37件確認でき、全体の56.9%に及ぶ。その中の20件については、Sマーク認証を受けていれば、事前にリコールに至るリスクを回避できた可能性が高いと推測される」と調査結果の内容について説明する。
“リコール”というとマイナスなイメージを想起させる。しかし、「自主的」に公開している事業者はむしろ再発防止を考慮した“まじめな”事業者と言うこともできる。今、問題視されている電安法を順守しない違反事業者は、自主的にリコールをするとは思えないからだ。そう考えるとこのリコール情報の裏には、本来はリコールすべき製品が告知されないまま、消費者の手元に届いている恐れがある。
平井氏は「リコール内容を見てみると、例えば、明らかに電安法で規定された技術基準に適合していなかった場合等には、Sマークを取得していれば事前に問題点が判明し、対策を講じることができたはず」と歯痒い現状を指摘する。
中古市場やネットショッピングなど、消費者が身の回りで使用する電気製品を手に入れる環境は劇的に変化している。中国をはじめとする海外メーカー製品も台頭するなか、手にする製品の安全性をどう担保していくかは切実な問題だ。製品事故の未然・再発防止を図るため、第三者認証により安全性を担保するSマーク認証は、解決へのひとつの糸口にもなる。
Sマーク認証に対する事業者の認識を高めることはもちろん、消費者自らも関連する色々な知識を高めていくことが必要となっている。