サウンドマスター・山内氏と高橋氏のタッグで開発
デノン、孤高の15.4ch一体型AVアンプ「AVC-A1H」。15年ぶりの“A1ネームド”フラグシップ機
■10か月以上かけて音質検討。サウンドマスター・山内氏×高橋氏の“最強タッグ”が作ったモデル
そして音作りは、デノンのサウンドマスター・山内慎一氏が担当。A110を手掛けた高橋氏が基本設計を行い、そのうえで山内氏が10か月以上の期間、音質検討を行った、“デノン最強のタッグ”により作られたAVアンプだとする。
Hi-Fiコンポーネントでも使われるカスタムコンデンサー「SYコンデンサー」をはじめ、随所に最適なパーツを投入。全体のパフォーマンスを上げるため、ワイヤーツイストに至るまでチューニングが行われている。
DSPには、AVR-X3800H/X4800Hでいち早く採用されていたアナログ・デバイセズ社の最上位チップ「Griffin Lite XP」を採用。演算処理能力のアップグレードによって15.4chのプロセッシング出力、17.4chのプリアウト、Auro-3Dの13.1ch出力を実現した。プリアウトモードはch毎にオン/オフ設定が可能なほか、フロントスピーカーのバイアンプ駆動に加え、センター・サラウンド・サラウンドバックを含む7chをバイアンプ駆動する「7chフルバイアンプ」なども搭載する。
サブウーファープリアウトはXLR/RCAで各4系統ずつ装備。全てから同じ音を出す「スタンダード」のほか、“移動する低域”を楽しめる「指向性」モードを選択することができる。また、XLRのプリアウトにはフロントL/Rやセンターchを割り当てることが可能で、バランス接続対応のパワーアンプと繋いでフロントL/R・センターchを送ることもできる。
音声ではDolby Atmos/DTS:X/IMAX Enhanced/Auro-3D/MPEG-4 AAC/360 Reality Audioをサポート。バーチャル3DサラウンドテクノロジーのDolby Atmos Height Virtualizer/DTS Virtual:Xにも対応する。
音響補正機能として「Audyssey MultEQ XT32」を搭載しており、専用アプリ「Audyssey MultEQ Editor」(有料)を使えば、部屋に起因する音響的な問題に対する精密なカスタマイズも可能。さらに、より高クオリティな音響補正が可能な「Dirac Live」(有料)にも、2023年中にアップデート対応する予定となっている。
HDMI端子は7入力/3出力を備えており、うち入力全てと出力2つは8K/60p・4K/120pに対応。HDRはHDR10/Dolny Vision/HLG/HDR10+/Dynamic HDRに対応する。ほか、HDMI2.1の新機能であるALLM/VRR/QFTや、ARC/eARC、8Kアップスケーリングなどにも対応する。
フットには、A1シリーズの伝統である鋳鉄製を採用。スピーカーターミナルもHi-Fiグレードのもので、AVC-A1HDで使っていたものを、ロゴ含め忠実に復刻して採用したとのこと。
外形寸法は434W×259H×498Dmm(アンテナを立てた場合)で、質量は32.0kg。ちなみにX8500HAの質量は23.6kgでA110は25.4kg。高橋氏は「A110でも8500より重くしようと頑張ったが、2kg程度しか増量できなかったのに対し、今回は新規設計したため8500より8.4kgも重くなった」と語っていた。
本体カラーはブラックに加え、「A1のみに許された」プレミアムシルバーを展開する。
■編集部インプレッション
本製品の発表会は福島にある白河オーディオワークスにて行われた。短時間ながら試聴会も行われたため、インプレッションを記したい。
まずは映画『不屈の男 アンブロークン』の冒頭を視聴。スピーカーの存在を感じさせないような広大な空間性を見せつつも、航空機のエンジンや銃撃戦の音を馬力たっぷりに鳴らしてくれる。特筆すべきは低域で、量感たっぷりながらボワつくことは決してなく、体の芯まで響きわたる。AVC-A110を彷彿とさせるような、一言で言えば「格好良さのある低音」だ。
続いて、いきものがかりのライブBDより「コイスルオトメ」を聴く。各パートがしっかり分離しつつ音の移動も手に取るように分かり、Dolby Atmosによる、空間を目一杯使った遊び心たっぷりなミックスが十全に楽しめる印象。楽器隊だけでもかなりの情報量だが、それを保ったままボーカルをドンと中心に据え、その表現力の高さを綺麗に描写してくれた。
Official髭男dismのライブBDより「HELLO」では、さいたまスーパーアリーナの空気感・臨場感をリアルに再現。ライブ特有の全身で音を浴びているような感覚がありつつ、あらゆるパートの音が理想的なバランスで聴こえるため、まさに「1番良い席でライブを見ている」ような感覚を味わえた。
最後に『トップガン マーヴェリック』を視聴。『アンブロークン』でも感じたことだが、山内氏の標榜する「Vivid & Spacious」と、A110や往年のデノンAVアンプが持っていた「格好良い音」が高次元で両立している。言わば新旧デノンの良いとこ取りな、現在のデノンだからこそ作ることができた、デノンでなければ作ることのできないサウンドだと感じた。
発表会の際、田中氏は「山内と高橋のタッグはもちろんのこと、白河オーディオワークスで働いている全ての人がいて初めて製造することのできるモデル」だと語っていた。その発言の通り、仕様や音質などあらゆる面で、今のデノンの集大成と言えるAVアンプだろう。