変化と革新こそがシャープの遺伝子
シャープが創業111周年記念イベント。11/11には革新的製品群を体感できる「Sharp Technology Day」開催を発表
■創業111周年は特筆すべき歴史を振り返る好機
シャープは、幕張事業所にて「創業111周年記念イベント」を開催した。国内外からの来賓をはじめ約500名が来場し、創業家の早川住江氏(社会福祉法人 育徳園 顧問)、ポーランドやインドネシアの大使からのゲストスピーチをはじめ、技術開発の方向性をテーマにしたパネルディスカッション、Technology関連の外部表彰の紹介などが盛大に行われた。
会場ロビーには、社名の由来となったシャープペンシル「早川式繰出鉛筆」(1915年)、国産第1号鉱石ラジオ受信機(1925年)、“一家に一台” を目指してテレビ時代の幕を開いた国産第1号14型テレビ(1953年)、日本初の量産電子レンジ(1962年)など、111年の歴史を物語る数々のエポックメイキングな商品も展示された。
ゲストスピーチを行った創業家の早川住江氏は「111年、1が3つ重なる。常に一番であることを望んでいた会社が、ついに1を3つ重ねる年を迎えることができた。世界の平和と発展、そして人々の幸せのため、これからもずっとずっと貢献し続けていける会社でありたいと願っている」とメッセージを送った。
登壇してあいさつしたシャープ(株)代表取締役社長 執行役員 CEO 呉柏勲(Robert Wu)氏は「シャープは数多くの世界初の商品を世に送り出してきた。創業111周年は特筆すべき歴史を振り返る機会。数々の催しを行っていく」と記念イベントの意義を語り、その一環として、2023年11月11日に「Sharp Technology Day」を開催することが発表された。
「Sharp Technology Day」では、今後の技術戦略を紹介するとともに、独自技術を採用した革新的な製品やソリューションの展示を予定する。「シャープでは過去にこうしたイベントを行ってこなかった。シャープがブランド事業としてトランスフォーメーションをきちっと行っていく決心を示すものでもある。技術革新のマイルストーンとなる商品をご紹介できることを楽しみにしている」と意気込みを示した。
「変化と革新こそがシャープの遺伝子。これからも変化し続けていく。幹部社員のみならず、全社員が一丸となり、2023年はこのイベントをきっかけにモチベーションをあげていきたい」とさらなる躍進へ気を引き締めた。
続いて登壇したシャープ(株)専務執行役員 CFO 陳信旭(Branden Chen)氏は「次の10年は新しい力によって定義されることは明らか。それはAIだ。シャープは技術の最先端にいることを目指し、競争を勝ち抜き、新たな機会を掴み取る。そのためにも社員には起業家精神を持って臨んで欲しい。強固な基盤があるからこそ、111年にわたり事業を続けてくることができた」とAIの重要性を訴えかけた。
■世界的イノベーションはシャープの強みを生かせる場
「シャープ技術開発の方向性」と題したパネルディスカッションでは、モデレーターをつとめたシャープ(株)常務 研究開発本部長 種谷元隆氏が「世界的に大きなイノベーションが起きている。そこはシャープの強みを生かせる場でもある」と4つのテーマをとりあげ、それぞれ担当者が最新の取り組みについて説明を行った。
まずは「AI」。シャープでは日本語チャットエンジンの展開を十数年前から進めている。シャープ(株)Platform事業推進部長 中田尋経氏は「シャープは2016年に “つながるAIoT家電” を発売。すでに12品目835種類の家電をリリースし、累計400万台以上の家電が日本市場のなかだけでもお客様の手元で使われている。AIを利用することでAIoT家電はさらに進化していく。今後、重要な取り組みになる」と新しいAIの世界が、AIoT家電の利用価値をさらに拡げるチャンスになるとアピールした。
2つ目のテーマは「カーボンニュートラル」。グリーンイノベーションの取り組みとして、約60年前から太陽電池を提供してきたシャープが力を入れるのが、ペロブスカイト太陽電池による新しい世界。シャープエネルギーソリューション(株)エネルギーマネジメント事業統轄部PV技術部 参事 宮西晋太郎氏は「最近、ペロブスカイト太陽電池が大きく注目を集めているのはなぜか。それは、塗って乾かすだけ。今までの太陽電池にはなかった分野へ応用が可能になるから。新たな市場を開拓できる」と力を込めた。
3つ目は「ディスプレイ」。シャープディスプレイテクノロジー(株)開発本部長 伊藤康尚氏は「ePaperの開発を進めていく。電源が不要、低消費電力なので使い捨ての電池を使う必要がなくなる。このようなディスプレイが街中にあふれてくると、災害が起きたときにも的確な情報をいろいろなところで伝えることができ、情報の混乱が起こらないということも可能になる。電力をほとんど使わないディスプレイがクリーンイノベーションの鍵になる」と強調した。
最後は「ネットワーク」。シャープ(株)Universal Network 新規事業開発統轄部長 今村公彦氏は「AIもグリーンイノベーションもネットワークがなければ誰にも使っていただくことができない。プレ6G通信の早期の事業化を目指す」とConnectivityがあらゆるものへ提供していけると説明した。
種谷氏は「今日は4つのテーマで紹介したが、これは我々のイノベーションや111周年を迎える今年の新商品のほんの一部に過ぎない。こうしたものを中心に、11月11日のSharp Technology Dayは、皆さんが多くのイノベーションに触れて、感じていただけるイベントにしていきたい」と開催に向けた抱負を述べた。
続いてTechnologyに関連する外部表彰が紹介され、代表者へ呉社長から記念品が授与された。「VGP2023 特別大賞」では、テレビシステム事業本部 TV技術開発センター 統轄部長 高倉英一氏へ、そのほかにも「家電大賞2022-2023」「CEATEC AWARD 2022 経済産業大臣賞」など合わせて5つが紹介された。
閉会のあいさつを行ったシャープ(株)代表取締役副社長 執行役員 沖津雅浩氏は「創業者・早川徳次は当社の経営の根幹を成す心構えとして、『信用』『資本』『奉仕』『人材』『取引先』の5つの蓄積を社是として掲げた。当社は次の100年に向けた転換点を迎えているが、これからも5つの蓄積を大切に、グローバルに日々誠意と創意の仕事をひとつひとつ積み重ねることで、さらなる発展を目指して参りたい」と締めくくった。