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ViXionの“オートフォーカスアイウェア”も体験

<CEATEC>ソニー、“人間の眼を超える”イメージセンサーや3D撮影が可能な水中ドローン、車載用も展示

公開日 2024/10/15 18:21 編集部 : 伴 修二郎
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エレクトロニクス/IoT関連の見本市「CEATEC 2024」が、本日10月15日(火)から18日(金)まで幕張メッセで開催される。本稿では、HALL8にブースを構えるソニーと、HALL4にブースを構えるViXionの展示をレポートする。

「CEATEC 2024」が本日から開幕

■ソニー〈イメージング・センシングテクノロジーに関する展示・体験デモを展開〉



ソニーブースでは、「Hello, Sensing World!」をテーマに、多様な産業と共創し、感動体験の提供や安心して暮らせる社会の実現に貢献する「イメージング・センシングテクノロジー」に関する展示や体験デモを中心に展開している。

ソニーブース

「イメージング・センシングテクノロジー」とは、“電子の眼"と呼ばれる半導体のイメージセンサーによる、人間の眼では見えない現象や一瞬の変化までを捉えるイメージング技術を活用した「人や空間を認識するセンシング技術」と同社は説明している。

同社開発のイメージセンサーでは、人間の眼では認識できない多様な現象をとらえることが可能。さまざまな波長の光を検知したり、高速で移動する物体を歪みなく撮影できることで、現在スマートフォンやデジタルカメラに加えて、車、産業、ロボットなどあらゆるシーンで導入されている。

展示ブース内では、同社カメラ製品への導入例として、イメージセンサー搭載モデルのデジタルシネマカメラ「VENICE 2」、デジタル一眼カメラ「α9 V」、スマートフォン「Xperia 1 VI」などの実機も展示している。

イメージセンサーの肝である「Silicon Wafer」

イメージセンサー搭載モデルの実機も展示

産業用カメラでは、現在可視光だけでなく非可視の光を撮影してその情報を処理することで、これまで実現が困難であった新たなアプリケーションを次々に創出。その1つが、「SWIR光(Short-Wavelength InfraRed(短波長赤外光)」を応用したイメージセンサーだ。

SWIR光イメージセンサーの展示

光はその波長によって物質の反射・吸収の特性を変化させるが、この最新のイメージセンサー技術では、可視光から短波長領域(Short-Wavelength InfraRed/SWIR)領域までの特殊な波長の光を撮像できることで、物の中身を透過して確認したり、逆に透明であるはずの水分を検知できるなど、これまで人間の眼では視認できなかったものが見えるようになる。

本センサーの活用方法として、食品検査や材料選別、異物検査、半導体検査など、人間の目視では識別が難しい検査をサポートできると謳う。展示デモでは、目視では判別できない透明な水と油が入った小びんを用意。水は1450nm付近の波長の光を吸収する性質を備えるため、この性質を利用してSWIRイメージセンサーを通すことで水は黒く映り、どちらが水かを判別できる様子が確認できた。

水は1450nm付近の波長の光を吸収する性質を備えるため黒く映る

ほかにも、裏向きの置かれたトランプカードの絵柄や、ケース内の中身を確認できる活用例を紹介。担当者によれば他にも、りんごの打痕にたまった水分の検出や、黒豆に紛れたプラスチック片や金属片を検出するといった活用例を紹介してくれた。そのほかにも、SWIR帯域の光は特定の物質を透過する性質を備えるため、半導体の透過観察など様々な製造現場でも活用されているのだという。

続いて、目にもとまらぬ速さを確実にとらえると謳う「グローバルシャッター技術」を紹介する。高速で動く被写体を撮影すると歪んで撮影されてしまうイメージセンサーの撮影特性に対して、本技術では全画素を同時に露光・読み出すことで、高速で動く被写体でも動体の歪みが無く見たままの撮影が可能だとしている。

「グローバルシャッター技術」の展示ブース

展示ブース内では、高速回転しているQRコード入りの円盤を被写体として撮影し、撮影画像をモニター上に表示。グローバルシャッター技術で撮影することで、歪みのない撮影が行える様子が確認できる。

通常のシャッター方式で撮影した写真。QRコードもぼやけてるほか、色の境界線が真っ直ぐでないところから歪みが発生してるのが分かる

グローバルシャッター技術で撮影した画像をモニターで表示

本技術は主に産業用のマシンビジョンカメラに搭載されており、担当者によれば活用例として、製造ライン検査や半導体製造装置、物流倉庫内の荷物のバーコードやQRコード認識など高速撮影が求められる現場で多く導入されているとのこと。

エンターテイメント分野における活用例としては、距離情報で指や動作を認識する「ToFイメージセンサー」をアピール。被写体までの距離情報を活用することで人の姿勢や指の細かな動きまでを可視化することができ、バーチャル空間上に3Dアバターをリアルタイムで再現したり、直感的なジェスチャーコントロールでの新しいUIを実現するという。

「ToFイメージセンサー」の展示ブース

細かい指の動きまでも再現する

またソニーフィナンシャルグループでは、ソニーグループのインハウスデザイン組織であるクリエイティブセンターと、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの協力の元、ソニー・ライフケアグループが運営する老人ホームで「リハビリゲーム」のトライアルを実施。「幅広いユーザーが楽しみながらリハビリを行う」というコンセプトの元、新たなセンシング技術を用いたゲームを用意している。

ソニーが有するToFイメージセンサーなどのセンシング技術により、ゲームをプレイする人の手の動きを認識してその「手」自体をコントローラーとして操作することができる。展示ブース内では実際に専用ゲーム「キノコビト」が体験可能。事前設定なくモニターの前に座るだけでゲームがスタートし、上から落下してくるキャラクターを画面上に現れた自身の手で受け止め、画面内のキノコの上に乗せていくといった遊びが楽しめる。

リハビリ・ゲーム「キノコビト」の体験コーナー

担当者によれば、専用のコントローラーを持つ必要がないことで高齢者をはじめ幅広いユーザーにゲームプレイを楽しめるよう、「手や体を動かすリハビリテーションにつなげることを目指して開発した」と語ってくれた。

「AI × センシング技術」が促進する高効率でサステナブルな空間認識ソリューションの紹介ブースでは、イメージセンサーによる撮影画像を、センサー内に搭載されたAIがリアルタイムに解析・処理を行い、把握したい必要情報のみを表示するデモンストレーションを実施している。

本技術は、エッジであるセンサー内でAI処理を完結することで必要情報のみを出力・送信することで、ネットワーク負荷や消費電力を抑制、プライバシーにも配慮した安全で持続可能なデータ活用に貢献するというセンシング技術。ブース内のデモでは、イメージセンサーのロジックチップにAI処理機能を搭載したインテリジェントビジョンセンサー「IMX500」を活用する。

インテリジェントビジョンセンサー「IMX500」

画像をとらえる「眼」であるイメージセンサーに、「頭脳」となるロジックチップを重ね合わせることでセンサー単体で高速なエッジAI処理を可能にし、AI処理結果だけを出力することが可能。これにより、クラウドサービス利用時におけるデータ転送遅延時間の低減や、プライバシーへの配慮、消費電力や通信コストの削減などを実現するとのこと。展示デモでは本センサーを活用して、空間内の人を検知して人数情報のみを出力する様子が確認できる。

空間内の人を検知して人数情報のみを出力できる

同社の高度なセンシング技術は、地上だけではなく海にも展開しており、海洋環境の可視化を目指す研究を北海道大学と(株)FullDepthとの共同で進めている。その研究例の1つとして、ソニーのイメージセンサーと3次元空間センシング技術を搭載した水中ドローンの実験開発を紹介している。

上記で紹介したグローバルシャッター方式のイメージセンサーと、3次元空間マップを生成するセンシング技術により水中ドローンの自律移動と撮影をサポートし、サンゴや藻場の生息分布の把握やセンシングデータを活用した3Dモデルの生成が行えるとのこと。また、カメラと高精度マルチIMU技術により空間をセンシングし、リアルタイムで正確に自己位置や経路を把握できる技術なども用いられている。

海底や海の生息物とドローンの距離を測っている様子

北海道大学と(株)FullDepthとの共同研究開発プロジェクト

波や浮遊物などの障害がある海の中でもドローンが自己位置を見失うことなく正確に移動し、動いている海藻などの生態系を高精細に撮影が可能。これにより環境調査の効率化を図るとともに、地球温暖化問題の解決に向けたブルーカーボン保全への貢献も目指すという。

当展示ブース内では、開発品である水中3Dセンシングシステムも展示。そのほかにも、同社の空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」を用いて、撮影された映像から生成した3Dモデルを実際に3D視聴することもできる。

開発品の水中3Dセンシングシステム

空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」

さらに、車載用イメージセンサーの展示では、モビリティの安全性を高めて感動空間の拡張に貢献するセンシングテクノロジーを紹介。日常のさまざまなドライブシーンにおいて自動車の周囲360度を検知し、早期に危険回避行動を支援することで車の安全性を高めるセーフティ領域のコンセプト「Safety Cocoon」を元にしたセンシング技術をアピールしている。

車の型を模したモックアップを展示

ブース内には約10基以上の同社センサーを搭載した車の型を模したモックアップを展示。前方を検知するフロント部分の車載用イメージセンサーや、サラウンドセンサー、車載LiDAR用SPAD ToF方式距離センサー、ToF方式距離画像センサーなどを搭載したカメラが設置され、その効果を体感できるデモンストレーションを行っている。

約10基以上のセンサーを搭載する

前方を検知するフロント部分の車載用イメージセンサーでは、業界最多と謳う1,742万画素により、道路状況や車両、歩行者などの対象物の認識範囲をより遠距離まで広げて認識することが可能。担当者は「繭で守っているかのような安全性を提供したい」と説明していた。

また、車載LiDAR用SPAD ToF方式距離センサーにより、周囲の車両、歩行者などの位置や形状を高精度に検知・認識できるほか、サラウンドカメラ向けのイメージセンサーでは、広い視野角により車から近距離の人や物体を高精度に検知・認識することが可能で、自動車の事故防止を図れるとしている。

より遠距離まで道路状況や車両、歩行者などの対象物の認識できる

車内の挙動や状態を検出して分析するインキャビンセンシング用には、ToF方式距離画像センサーを用いることで、ドライバーや同乗者の顔の向きや姿勢だけでなく頭や手足の動きなどを細かくトラッキングし、車内やドライバーの状況を精度高く認識することができると謳う。

インキャビンセンシング向けのToF方式距離画像センサーも搭載

活用例について担当者によれば、より高精細な車内状況の把握に加えてエアコンの向きの自動調整などにも活用できるほか、衝突時のエアバッグの精度向上にも寄与すると説明。同社技術を用いることで、大人や子ども、チャイルドシートなどを識別してそれぞれに応じたエアバッグを展開できることで「より安全な車内空間の提供を可能にする」と語ってくれた。

■ViXion〈自動でピント調節を行う“オートフォーカスアイウェア” 新モデルを体験〉



ViXionのブースでは、現在KibidangoおよびGREEN FUNDINGにてクラウドファンディングを実施している “オートフォーカスアイウェア” の新製品「ViXion01S」の体験デモを行っている。

「ViXion01S」

ViXion01Sは、見ようとする距離に応じてレンズ形状を瞬時に変化させることで、自動でピントを合わせてくれるデバイス。装着時にテンプル部分のダイヤルでピント調整を行えば、あとはセンサーで対象との距離を測定して瞬時にピント調節を行い、「 “近くも遠くもはっきりみえる” 視覚体験を提供する」と謳っている。なお、ViXion01Sは昨年クラウドファンディングを行った「ViXion01」の後継モデルとなっている。

搭載センサーのイメージ

ワンタッチで取り外し可能なアウターフレームのレンズは着脱してカスタマイズすることも可能で、標準では度なしレンズが挿入されているが、好みのレンズに入れ替えて乱視などの個々の人の目の課題にも対応できるとのことだ。

アウターフレームを外した状態

さらに、前モデルと比べて約40%の軽量化も図っていることで、ブース内では前モデルの実機も合わせて展示し、実際に装着して比較することもできる。クラウドファンディングの実施期間は11月21日まで。

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