折原一也氏が製品の実力に迫る
ソニーの新BDレコーダー最上位機「BDZ-AX2000」を速攻ハンドリングテスト
3Dテレビの発売を機に、BDレコーダーはプラットフォームも含めた大モデルチェンジの時期を迎えている。3D対応レコーダーはパナソニックが4月に先行発売、シャープも7月に製品を投入した。ソニーの製品投入を首を長くして待っていた方も多いだろう。
ソニーから本日発表された最新BDレコーダーラインナップは、期待通りの全機種3D再生対応で、AVCの2番組同時録画にも対応。第3世代のLSIにより、AVCエンコードの画質向上も果たしている。最上位モデルの「BDZ-AX2000」は「CREAS Pro」を搭載し、映像回路でも差別化されている。今回はAX2000を実際にハンドリングしたインプレッションをお届けしよう。
■「CREAS PRO」でさらなる高画質化 - 「アニメ・CGリマスター」なども進化
AX2000が搭載する高画質再生回路「CREAS Pro」は、従来の「CREAS 2 plus」をベースに、様々な新機能を追加している。ポイント別に実機で検証した結果を踏まえながら紹介していこう。なお、本稿で紹介する画像はすべてDeepColorオフの状態で撮影したことを予めお断りしておく。
まず、従来機種を使用したことのない方に向けて解説しておくと、ソニーのBDレコーダーの画質設定は再生中の「画質設定」メニューからカスタマイズでき、「おすすめカスタム値」によってプロジェクター、液晶テレビ、BDアニメなどのプリセットを選んで設定できるようになっている。プリセットは画質の好みに応じて個別にカスタマイズ可能で、今回取り上げる様々な画質設定は、それぞれのカスタマイズ可能な要素だ。
新機能のひとつめは「コントラストリマスター」。一言で説明すると、コントラストを映像解析により拡大して調整するものだ。効果のほどは撮影したサンプル映像を参照してほしいが、暗部方向をしっかりと沈める一方で白色を引き上げることで、画面全体をより鮮明に作り替えてくれる。ソースにもよるが、全体的に白っぽい色調の多い邦画などで実力を発揮する。
エンハンス系の機能では、映像解析で抽出した特徴から「輪郭調整」「精細感調整」、更に新搭載の「超解像」と、3つの機能を個別にカスタマイズできる。
それぞれの位置づけとしては「輪郭調整」は人物やテロップのクッキリ感、「精細感調整」は建物の模様や人の質感というディテール重視の調整、「超解像」はDVDやフォーカスの甘い映像、つまり”ボヤけ”をシャープにするものだ。
実際にそれぞれを有効にしたのが下の検証画像。それぞれアプローチが異なっているので、エンハンス効果は近いものの、効果が顕著な映像は異なる。3系統のエンハンスを使い分けて最適な画質を追求できるという意味で、画質を追い込むユーザーには特に使いこなしがいのある機能と言えるだろう。
「フィルムグレイン調整」も有用な機能だ。HDの微細なグレインノイズを追加することで映画がより映画らしく引き締まり、精細感を高めてくれる。BS-2で放送されたSD画質のソースに本機能を適用してみると、HD画質のグレインを重ねることでHD映像の質感に近づいたような印象も受けるほどだ。ユーザーの手で高品位な映像にカスタマイズする機能として捉えるとなかなか面白い。
そして、従来機の「BDZ-EX200」にも搭載され、評価の高かった「アニメ・CGリマスター」もリニューアルされており、アニメの輪郭やセル画調部分の検出を行う。アニメ特有の平坦部かつディテールの集中した部分のノイズを軽減してくれ、まさに放送アーカイブ派のアニメファン向けの機能と言えるだろう。
そのほか、従来から搭載されていた「クリアブラック」も進化。同機能は従来、漆黒の再現による高品位な映像を目指していたが、新方式では輝度に応じて色補正を行い、より滑らかな処理へと効果の現れ方が変わった。
また、「新スムージング」によって、映像に生まれる階調のバンディング(グラデーションが段のように見える現象)の補正のみならず、低ビットレート映像のバンディングも検出して補正する仕組みを取り入れた。
さらにBD再生機能でも、今やハイエンドBDレコーダーでは必須となった感のある、マルチタップによる「新クロマアップサンプリング」によるディテール処理に加え、「リンギングフリー」機能の搭載により、水平・垂直方法の画素参照の際に生まれる不自然な色を適応的に制御する効果を追加した。
■新エンコーダーはAVC長時間録画の画質を底上げ
AVCエンコーダーについても、第3世代の新AVCエンコーダーを搭載する。特に新機能として「ジャンル別エンコーディング」と「ビジュアルアテンション」機能が搭載されたことに注目したい。
「ジャンル別エンコーディング」はEPGの番組情報に応じてその番組で重視すべき部分を判別するもので、例えばアニメでは輪郭に発生しやすいノイズ、スポーツでは動きの激しいシーンのブロックノイズを軽減する。
そして「ビジュアルアテンション」は、画面に写っている人の顔など、人間が注視しやすい部分を重点的に保護することで、低レートでも画質の印象を向上させるものだ。
実際に、ジャンル別にいくつかの番組を録画してみると、低レートでの画質の安定感は格段に高まっている。特に効果が顕著だったのがアニメで、「アニメ・CGリマスター」を併用したモードでは、録画モードを低ビットレートに変えていっても全体的な画質が大きく損なわれない。SRモードくらいまではDRモードと比較しても、それほど大きな差は感じられなかった。
もう一点、感心したのはスポーツを録画した際の、低ビットレート時の画質の良さだ。甲子園の中継で、カメラをパンした映像を視聴した。DRモード(約16Mbsp)とERモード(約2.4bps)の比較を行ったが、ERモードでもディテールがしっかりと出ており、しかもブロックノイズが見事に抑えられていた。
新機能はエンコーダーの標準機能として組み込まれているため、個別にどの機能がどの程度画質向上に寄与しているかは定かでないが、全体的に低レート時の画質が向上していることは確かだ。
■BDレコーダーの画質に革新をもたらすモデル
約1年ぶりに登場した新フラッグシップ機、BDZ-AX2000は、様々な高画質技術を搭載したモデルである。BD再生画質を向上させる「新クロマアップサンプリング」や「インテリジェントエンコーダー2」といった、録画や再生の画質向上さることながら、オンタイムのデジタル放送の映像も、見違えるほど高品位に見えることに検証しながら気付いた。
BDレコーダーも登場から時間が経ち、世代を重ねることで、高画質化のアプローチも多彩になってきている。BDZ-AX2000では、放送のオリジナル映像を忠実に再現するところから一歩踏み出し、豊富なプリセット設定やユーザーが調整可能な数々の機能で画質向上を図るというアプローチを採った。BDレコーダーの画質に革新をもたらすモデルになったと言って良いだろう。
(折原一也)
ソニーから本日発表された最新BDレコーダーラインナップは、期待通りの全機種3D再生対応で、AVCの2番組同時録画にも対応。第3世代のLSIにより、AVCエンコードの画質向上も果たしている。最上位モデルの「BDZ-AX2000」は「CREAS Pro」を搭載し、映像回路でも差別化されている。今回はAX2000を実際にハンドリングしたインプレッションをお届けしよう。
■「CREAS PRO」でさらなる高画質化 - 「アニメ・CGリマスター」なども進化
AX2000が搭載する高画質再生回路「CREAS Pro」は、従来の「CREAS 2 plus」をベースに、様々な新機能を追加している。ポイント別に実機で検証した結果を踏まえながら紹介していこう。なお、本稿で紹介する画像はすべてDeepColorオフの状態で撮影したことを予めお断りしておく。
まず、従来機種を使用したことのない方に向けて解説しておくと、ソニーのBDレコーダーの画質設定は再生中の「画質設定」メニューからカスタマイズでき、「おすすめカスタム値」によってプロジェクター、液晶テレビ、BDアニメなどのプリセットを選んで設定できるようになっている。プリセットは画質の好みに応じて個別にカスタマイズ可能で、今回取り上げる様々な画質設定は、それぞれのカスタマイズ可能な要素だ。
新機能のひとつめは「コントラストリマスター」。一言で説明すると、コントラストを映像解析により拡大して調整するものだ。効果のほどは撮影したサンプル映像を参照してほしいが、暗部方向をしっかりと沈める一方で白色を引き上げることで、画面全体をより鮮明に作り替えてくれる。ソースにもよるが、全体的に白っぽい色調の多い邦画などで実力を発揮する。
エンハンス系の機能では、映像解析で抽出した特徴から「輪郭調整」「精細感調整」、更に新搭載の「超解像」と、3つの機能を個別にカスタマイズできる。
それぞれの位置づけとしては「輪郭調整」は人物やテロップのクッキリ感、「精細感調整」は建物の模様や人の質感というディテール重視の調整、「超解像」はDVDやフォーカスの甘い映像、つまり”ボヤけ”をシャープにするものだ。
実際にそれぞれを有効にしたのが下の検証画像。それぞれアプローチが異なっているので、エンハンス効果は近いものの、効果が顕著な映像は異なる。3系統のエンハンスを使い分けて最適な画質を追求できるという意味で、画質を追い込むユーザーには特に使いこなしがいのある機能と言えるだろう。
「フィルムグレイン調整」も有用な機能だ。HDの微細なグレインノイズを追加することで映画がより映画らしく引き締まり、精細感を高めてくれる。BS-2で放送されたSD画質のソースに本機能を適用してみると、HD画質のグレインを重ねることでHD映像の質感に近づいたような印象も受けるほどだ。ユーザーの手で高品位な映像にカスタマイズする機能として捉えるとなかなか面白い。
そして、従来機の「BDZ-EX200」にも搭載され、評価の高かった「アニメ・CGリマスター」もリニューアルされており、アニメの輪郭やセル画調部分の検出を行う。アニメ特有の平坦部かつディテールの集中した部分のノイズを軽減してくれ、まさに放送アーカイブ派のアニメファン向けの機能と言えるだろう。
そのほか、従来から搭載されていた「クリアブラック」も進化。同機能は従来、漆黒の再現による高品位な映像を目指していたが、新方式では輝度に応じて色補正を行い、より滑らかな処理へと効果の現れ方が変わった。
また、「新スムージング」によって、映像に生まれる階調のバンディング(グラデーションが段のように見える現象)の補正のみならず、低ビットレート映像のバンディングも検出して補正する仕組みを取り入れた。
さらにBD再生機能でも、今やハイエンドBDレコーダーでは必須となった感のある、マルチタップによる「新クロマアップサンプリング」によるディテール処理に加え、「リンギングフリー」機能の搭載により、水平・垂直方法の画素参照の際に生まれる不自然な色を適応的に制御する効果を追加した。
■新エンコーダーはAVC長時間録画の画質を底上げ
AVCエンコーダーについても、第3世代の新AVCエンコーダーを搭載する。特に新機能として「ジャンル別エンコーディング」と「ビジュアルアテンション」機能が搭載されたことに注目したい。
「ジャンル別エンコーディング」はEPGの番組情報に応じてその番組で重視すべき部分を判別するもので、例えばアニメでは輪郭に発生しやすいノイズ、スポーツでは動きの激しいシーンのブロックノイズを軽減する。
そして「ビジュアルアテンション」は、画面に写っている人の顔など、人間が注視しやすい部分を重点的に保護することで、低レートでも画質の印象を向上させるものだ。
実際に、ジャンル別にいくつかの番組を録画してみると、低レートでの画質の安定感は格段に高まっている。特に効果が顕著だったのがアニメで、「アニメ・CGリマスター」を併用したモードでは、録画モードを低ビットレートに変えていっても全体的な画質が大きく損なわれない。SRモードくらいまではDRモードと比較しても、それほど大きな差は感じられなかった。
もう一点、感心したのはスポーツを録画した際の、低ビットレート時の画質の良さだ。甲子園の中継で、カメラをパンした映像を視聴した。DRモード(約16Mbsp)とERモード(約2.4bps)の比較を行ったが、ERモードでもディテールがしっかりと出ており、しかもブロックノイズが見事に抑えられていた。
新機能はエンコーダーの標準機能として組み込まれているため、個別にどの機能がどの程度画質向上に寄与しているかは定かでないが、全体的に低レート時の画質が向上していることは確かだ。
■BDレコーダーの画質に革新をもたらすモデル
約1年ぶりに登場した新フラッグシップ機、BDZ-AX2000は、様々な高画質技術を搭載したモデルである。BD再生画質を向上させる「新クロマアップサンプリング」や「インテリジェントエンコーダー2」といった、録画や再生の画質向上さることながら、オンタイムのデジタル放送の映像も、見違えるほど高品位に見えることに検証しながら気付いた。
BDレコーダーも登場から時間が経ち、世代を重ねることで、高画質化のアプローチも多彩になってきている。BDZ-AX2000では、放送のオリジナル映像を忠実に再現するところから一歩踏み出し、豊富なプリセット設定やユーザーが調整可能な数々の機能で画質向上を図るというアプローチを採った。BDレコーダーの画質に革新をもたらすモデルになったと言って良いだろう。
(折原一也)