ネットオーディオ対応でバイアンプ駆動
小さくてもスゴいヤツ − “全部入り”コンポのニュータイプ、マランツ「M-CR603」レビュー
■スピーカー「LS603」と組み合わせてバイアンプ駆動
というわけで、今回はせっかくなので、バイアンプ駆動で音質をチェックした。メインソースはネットワーク再生。
ジャズのウッドベースは、スピーカー側が小型なので沈み方や量感にはさすがに限界がある。しかし出ている範囲においては音程感も確かだし、アタックの感触も適度に弾み、なかなか悪くない。
シンバルはチャキッと芯の強い、明るい音色。音源本来の感触(粒子感の強い細やかな音色)からは離れる。
ボーカルのフォーカスは良好で、音場の中心にぼやけずにフッと浮かび上がる。手触りも、少しザラつきは残すが悪くない。
ヘンドリクスのギターのファズ(歪み)は、硬質で心地よい抜け方をしてくれる。小型スピーカーにしてはリズム・セクションの圧力も強く、ドラムスのバシバシとキレの良い迫力も十分。ただシンバルはやはり少し目立つ。
ドラムスは音場の奥行きを生かした配置、立体感に納得。こういった音場描写の良さは、小型スピーカーの優位性が発揮されている。LS603はトゥイーターとウーファーが近接配置され、点音源の理想に近いので、その点は特に優秀だ。
一方、低域側のバスドラムとベースはやはり軽め、弱めにはなってしまうが、ドラムのアタックやベースのラインは明瞭で、音楽的には崩さない。
iPodデジタル再生とCD再生もチェックしてみた。もちろんそれぞれの傾向というのは多少は出るが、音調に大きな変化はない。どれも安心して聴ける。
なお音質調整機能として、DBB(Dynamic Bass Boost)、ベースとトレブルのイコライザが用意されている。DBBとベースはかなり派手に効くので、低音の不足をこれで補うこともできる。
■上位機で培ったリソースを上手にパッケージング
正直なところ使ってみるまでは「こういう詰め込み型のシステム、必要かな?」と懐疑的だったのだが、実際に使ってみると、これは「アリ」だと思わせられた。
ネットワークプレーヤーの部分は、チップやソフトウェアなど基本的な部分は本格モデルから流用できるし、操作インターフェースはコントローラーアプリに任せてしまえばよい。
それらを手頃な価格帯で、上手にパッケージングすることで、オーディオをこれから初めてみようという人から、ネットワークオーディオ環境を導入済みで別室にセカンドオーディオがほしいという人まで、幅広い要望に応えられるシステムになっている。
ユニークで、かつ実用的な新システムだ。
高橋敦
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。