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約7万円の192kHz/32bitDACの実力はいかに?

高スペック&低価格なオンキヨーのUSB対応DAC「DAC-1000」のクオリティを山之内 正が検証!

公開日 2010/12/17 11:14 山之内 正
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12月24日に発売されるオンキヨーのUSB対応DAC「DAC-1000」は、70,000円前後という価格ながら192kHz/32bit対応、こだわりの内部回路設計、USB接続時のアシンクロナス転送対応などさまざまなフィーチャーが詰まった注目の製品だ。本機の実力を検証すべく、山之内 正氏が試聴を行った。

ピュア機にも採用された新フィーチャーを
多数詰めこんだUSB対応DAC


オンキヨーはこの12月に、本格的なセパレートアンプ「P-3000R」と「M-5000R」を15年ぶりに世に送り出す。これと共に、両機の開発過程で生まれた2つの重要な技術を投入し、USBオーディオの高音質インターフェースとしても活用できるD/Aコンバーター「DAC-1000」が完成した。

オンキヨー
USB対応DAC DAC-1000
オンキヨーの製品情報ページ
192kHz/32bitのデジタルオーディオ入力に対応したUSB対応DAC。プリアンプ「P-3000R」のDAC部をベースにしており、バーブラウン製の「PCM1795」をL/R独立で搭載するほか、新開発の「DIDRC回路」によりデジタル信号特有の混変調歪を抑える。入力端子として光2、同軸2、AES/EBU1、USB(Type B)1、出力端子として光デジタル1、アナログ(RCA)1、バランス(XLR)1を備える。対応OSはWindows 7/Vista/XP SP3以降。


DAC-1000

DAC-1000の接続端子

2つの技術とは、音楽信号と相関を持つデジタル信号特有の混変調歪を抑える「DIDRC」(動的混変調歪低減回路)と、非同期伝送を実現したUSBオーディオ技術で、いずれもコントロールアンプのP-3000Rとほぼ同等の音質改善効果が期待できる。DACにバーブラウンのPCM1795をL/R独立で積む点もP-3000Rと共通だ。


中央にあるチップがバーブラウンの「PCM1795」
独立したD/Aコンバーターとしての再設計にも妥協はない。アルミとスチールを巧みに組み合わせた堅固なシャーシ、トロイダルトランスを投入した余裕のある電源部、左右対称設計のアナログオーディオ基板など、一歩踏み込んだ作り込みによって、1クラス上のクオリティを狙っている。


デジタルとアナログ回路を分離してレイアウトすることで、内部での干渉を抑えている。電源はトロイダルトランス。

高音質パーツがふんだんに用いられている

【音質レビュー】
クリアで質感高い音再生に感嘆
際だった価格帯性能比の高さを実感


【今回使用したリファレンス機器】
iPod/iPhone対応デジタルトランスポート ONKYO ND-S1000
プリメインアンプ:ACCUPHASE E-450
スピーカー:MONITOR AUDIO GS60


まず、新登場のトランスポート「ND-S1000」と組み合わせ、iPhone 4に保存したロスレス音源(ALAC)を再生する。今回はあえて上位のアンプとスピーカーを組み合わせて聴いているが、ソース機器が見劣りすることなく、十分にレンジの広いサウンドを引き出している。ダイアナ・クラールのボディ感豊かなボーカル、揺らぎのないベースと透明感の高いピアノなど、音色の質感の高さに感嘆した。レイチェル・ポッジャーが弾くモーツァルトのバイオリンソナタは、楽器の形が目に浮かぶような引き締まった音像が浮かび、空間再現力の高さを実感。ちなみに本機内蔵のSRC(サンプリングレートコンバート)機能を併用すると、遠近感となめらかさを引き出すことができる。


入力(I)/出力中(O)のサンプリング周波数を表示することが可能

SRC機能では2倍/4倍のアップサンプリングにも対応(USB入力でFS×4は非対応)
次にパソコンを接続してUSBオーディオの再生音を聴く。Windows Vista Home PremiumをインストールしたVAIO TZと、OS X 10.6が動いているMacBook Airの両方で192kHz/24bitを含む高音質音源を再生。Windowsパソコンには専用ドライバソフトをインストールしていたので、本機の認識、動作は問題はない(公式発表されている対応OSはWindows 7/Vista/XP SP3以降だが、Mac OS X 10.6でも使うことができた)。


WIndows側の出力設定を192kHzまで再生できる設定にしておかないと、PC内でダウンコンバートされてしまうので注意

サンプルレートも192kHzまでチェックを入れる。
e-onkyo musicからダウンロードしたタリス・スコラーズの合唱(96kHz/24bit)は、CDでは容易に引き出せないほどの深い音場のなかに澄んだハーモニーが響き、部屋の空気を一変させた。またピーター・ハーヴェイが歌う《冬の旅》(192kHz/24bit)では、ハッとするほどの静寂のなかからフォルテピアノとバリトンがなめらかに立ち上がり、そのリアルな感触に息を呑む。録音現場でしか聴けない臨場感が家に居ながらにして味わえることがハイレゾリューション音源の醍醐味だが、本機の音は、そのメリットをはっきり聴き取ることができる。

ND-S1000と組み合わせて試聴を行う山之内氏

今回は、本機とは倍以上の開きがあるUSB-DACでも同一音源を聴いてみたが、両者の差は価格差に比べるとはるかに小さく、本機の価格対性能比の高さが際立つ結果となった。非同期伝送に対応した製品がこの価格で登場すると、ライバル機に与える影響は小さくないはずだ。

<筆者プロフィール>
山之内 正 Tadashi Yamanouchi
神奈川県横浜市出身。東京都立大学理学部卒。在学時は原子物理学を専攻する。出版社勤務を経て、音楽の勉強のためドイツで1年間過ごす。帰国後より、デジタルAVやホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。近著に『図解インタ−ネットで変わる音楽産業』(アスキー刊/2000年)がある。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、東京フィルハーモニー交響楽団の吉川英幸氏に師事。現在もアマチュアオーケストラに所属し、定期演奏会も開催する。また年に数回、オペラ鑑賞のためドイツ、オーストリアへ渡航。趣味の枠を越えてクラシック音楽の知識も深く、その視点はオーディオ機器の評論にも反映されている。

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