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様々な映画のBDソフトで実力を徹底チェック

貝山知弘が観たソニー〈ブラビア〉の新高画質回路「X-Reality PRO」の実力 − 高画質ソースの表現力はいかに?

公開日 2011/03/25 19:33 貝山知弘
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一般的に再現が難しいとされるのは肌の色だが、それが様々な肌の色の人物が登場する作品では、基準となる色温度と色あいの設定が難しくなる。よくある例は主人公の肌の色に合わせる手法だが、異なる肌の色の人物が対等に共演する作品ではもっと公平な色温度と色あい調の設定が必要になってくる。こうした作品を正確に再生するためには、テレビ自体も幅広くバランスのいい色表現能力を持つ必要がある。

「X-Reality PRO」の印象を語る貝山氏

このことが端的に判るのがヒラリー・スワンクが女性教師役を演じた『フリーダム・ライターズ』だ。肌の色が異なる様々な生徒たちが集う学校が舞台となっている。この作品では「人種の違いの克服」がテーマとなっているので肌の色の描写も公平そのもの。「X-Reality PRO」は、登場人物の肌の色を違和感のない自然な色温度と色あいで表出している。

ニコール・キッドマンが主演した『ある公爵夫人の生涯』は、貴族の女性たちが白い肌にさらに白い化粧を施した時代の作品。〈ブラビア〉の映像が素晴らしいと思ったのは、抜けるような白と、化粧の粒子の緻密な感触がバランスよく表出されていることだ。正確な色表現と緻密な解像度が共に表現できた時の女性の顔はかけがえのない美しさを生むのだ。

『エル・ノルテ、約束の地』は先住民族の青年と婚約者が危険を逃れてメキシコ経由でアメリカに密入国する物語だ。リアリズムを基本とした撮影だが、耽美的な描写が随所に現れる作品である。同作品を新〈ブラビア〉で観ると、先住民たちの顔色がリアルに描かれ、彼女らが身につけるショールの模様が美しい色彩で浮き彫りになる。

身振り手振りを交えながら「X-Reality PRO」についてコメント

ミュージカルを映画化した『NINE』には“華”といえるシーンが多いが、私が最も好きなのは、主人公の映画監督グイドの妻であるルイザ(マリオン・コティヤール)が『ヒー・メイクス・ムービー』を歌うシーンだ。

ここには、テレビにとって結構意地悪な表現がある。オレンジの照明を基準とした背景の中で歌うルイザに、やがてスポット的にブルーの照明が当てられるシーンだ。温かい色であるオレンジと冷たい色であるブルーが混在した映像には、はっきりした意味合いがある。これはかって愛し合ったグイドとルイザの中に倦怠の危機が忍び込んでくるという表現なのだが、暖色と寒色が混在する映像はディスプレイにとってはかなり難しい表現である。

ここでも大切なのはバランスで、それが崩れると、映像の品位は見る間に落ちてしまう。最も怖いのは顔の暗部に現れやすい影のような色ムラで、これが目に付くディスプレイは過去に随分とあった。しかし「X-Reality PRO」を搭載した新〈ブラビア〉ではこの色ムラが一切なく、歌うコティアールの顔は美しさを保ち続けながら繊細な感情の揺れを表現していた。

白方向の階調表現も特筆していい。『シャネル&ストラヴィンスキー』では、ココ・シャネルが好きだった黒と白の室内装飾やドレスが随所に出てくる。この作品で注目すべきは様々な白の階調と色あいだが、新〈ブラビア〉の画面ではその微妙な階調差が緻密に表現されている。これは「スーパービットマッピング(SBM)」処理によって、階調が足りずに縞模様になる「バンディング」を除去して階調を拡大しているのが効果として出ているのである。

■「元々のソースにあったノイズや偽色さえも軽減している」

映画作品がディスプレイに要求するファクターは限りなく多い。人物やカメラの動きには予想外のものも多く、そうした部分ではあってはいけないノイズが発生したり、動きぼけによる解像度の低下が出たりしやすい。

様々な面で貝山氏は「X-Reality PRO」による映像表現を高く評価

しかし新〈ブラビア〉では、違和感を感じるほどのノイズや動きぼけはほとんど無い。そればかりか、元々のソースにあったノイズや偽色さえも軽減していることが随所で判別できる。

「X-Reality PRO」のデータベース型超解像は数千種類のデータベースを用意しているという。今回のテストでは、異なる性格を持つ映画を複数視聴し、実際に様々な画質向上の効果を実体験できた。新〈ブラビア〉の高画質が、「X-Reality PRO」が蓄えた豊富で正確なデータベースから生まれたものであることが実感できるテストであった。

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