折原一也氏が徹底レビュー
ソニー〈ブラビア〉の新高画質回路「X-Reality PRO」はネット動画にどう効くのか!?
一般的に、ネット動画など低解像度ソースを大画面に映そうとすると、もともとデータを間引いた映像を拡大することになるため、様々な問題が発生する。「X-Reality PRO」にはそうした弊害を抑える働きもあり、例えば、斜め線の解像感が格段に高まっているのは特に好印象だった。
ネット動画の視聴で特に違いが分かりやすかったのは、人物のフェイスラインやボディーラインなどの曲線的な部分だ。これらが鮮明な映像になり、かつ違和感を感じさせないことに驚かされた。これは、前後フレームから輪郭線をクリアに補間できている証拠だ。複数枚フレームを参照して超解像を行う効果が現れているのである。
また、ノイズ低減効果も高い。前後フレームから確実にノイズを検出するため、ノイズ感がなくなり、映像がより滑らかになるのだ。
さらに、テロップなどの文字に代表される、細部ディテールの解像度の向上も凄まじい。モスキートノイズなどで文字そのものが欠落してしまったり、もともとの解像感が甘いといった状態からでも、十分読めるレベルにまで鮮明さを取り戻すことができるのだ。
このように、データベース型複数枚超解像技術によって、もともと低画質なネット動画を、55V型の大画面でも視聴に耐えうるレベルにまで引き上げている点を高く評価したい。
■もちろん地上デジタル放送や110度CSの映像も高画質化
これまで述べたように、ネット動画に対する高画質化はデータベース型複数枚超解像の効果をもっとも端的に実感できるケースと言える。しかし、もちろん「X-Reality PRO」ではネット動画だけでなく、地上デジタル放送のような映像ソースに対しても個別のデータベースを持って高画質化を行えるようになっている。
地上デジタル放送はMPEG-2形式で圧縮されており、細部にはモスキートノイズ、ブロックノイズといった微少ノイズを含んでいることはご存知の通りだが、「X-Reality PRO」のデータベース型複数枚超解像ではこれらのノイズを確実に検出して低ノイズ化できる。
そしてここに、HD映像をターゲットとしたデータベースからの信号処理による効果も加わる。「HDカメラで撮影した映像の、本来あるべき信号」を参照して超解像処理を施すのである。
加えて、複数フレーム処理のためI/P変換による弊害を正しく補間できている点も重要だ。連続ドラマやバラエティ番組といった、さほど作り込まれていない映像ソースを視聴しても段違いにクリアで、立体感までも際立つ映像を映し出せている。
そのほかにも、よりディテール成分が失われやすい110度CS放送で放映されたサッカーも視聴してみたが、こちらでも「X-Reality PRO」の効果を実感できた。
同映像の再生においては選手のプレーはもちろんのこと、観客席で発生していたノイズ成分も除去。看板やピッチ上のラインといった、会場を構成する様々な要素を、本来の姿でよりハッキリと確認できるようになる。
この点については、サブピクセル単位での動きの制御を可能にしたことが大きく寄与している。1画素未満の動きも制御することによって、元々情報量のあるHDソースに対してもより効果的な形でのパターン検出が行えているのである。
また、例えばバラエティー番組で「懐かしの名場面を振り返る」といった際に挿入される過去の映像などのように、放送波では「SD解像度をアップコンバートしたHD映像」というものも見受けられる。もちろん「X-Reality PRO」のデータベースはこうした映像にも対応しており、放送局の信号そのままよりも明瞭に描写できていたのも驚きだった。
なお、最後に付け加えておくと、「X-Reality PRO」ではSD信号であるDVDに対してももちろんデータベースを持っている。つまり、最高位のアップコンバート機能として利用できるのである。
■「すべてのオーディオ・ビジュアルファンにとって、まさに理想的な高画質回路」
冒頭で紹介したように、低画質であることが多いネット動画を始めとした多種多様なソースへの適応性が「X-Reality PRO」の大きな特長だ。実際にいくつかの映像を視聴してみて、筆者もその能力の高さを大いに実感した。
また、こちらもこれまで述べてきたように、データベース型複数枚超解像はHD画質のデジタル放送などをより高品位にするという目的に対しても非常に有効に働く。低画質な視聴ソースを大画面テレビにも耐えられるほどのレベルへと引き上げるだけでなく、高画質なソースはより高画質にしてくれるのだ。こうしたことを考えると、「X-Reality PRO」はすべてのオーディオ・ビジュアルファンにとって、まさに理想的な高画質回路と言えるだろう。