テレビの「真の力」を発揮できていますか?
タダで画質が“もっと”良くなる! テレビの「画質調整」実践テクニック【中級編】
■タダで好みの画質を作る基礎知識
テレビの映像調整項目の中には、「プロ設定」として区別されている項目がある。ここからは、項目の説明と調整を行うときの方向性について解説する。
調整の方向性としては、制作者の意図に忠実な高画質を引き出す方向に加え、ユーザーの好みを反映する二通りが考えられる。
●黒伸張(黒補正)の調整方法
黒補正と呼ばれる事もある。映画作品に比べ、テレビ番組などではそれ程厳密に管理されていないケースが多い。特に気になるのは、バラエティー番組や生放送などで、暗部が浮いてしまっているケースだ。
また、DVDやVHSなど、ハイビジョン以前の映像ソースも、黒のレベルが高く、黒の再現能力が高くなった最新のデジタルテレビで見ると、暗部が浮いて見えるケースがある。この場合、映像調整項目の「黒伸張」で、映像信号に含まれる黒のレベルを引き下げて、コントラスト感を高める事ができる。この調整で、ピンボケに見えるSD画質の映像も、HD画質と違和感が少なくなるはずだ。調整に際しては、黒伸張の度合いを高め過ぎて、黒潰れを起こさないように注意が必要だ。
●ガンマ設定は難しくない
まず、あまり知られていない「ガンマ」についておさらいしておこう。
ガンマはブラウン管テレビ時代の遺物だ。ブラウン管は入力信号に対する発光特性がガンマ曲線(γ=2.2)を描く特性を持っていて、リニア(直線)な信号を入力すると、ブラウン管ではグラフに示すように、中間にあたる輝度が暗く表現されてしまう。
そこで、映像信号にブラウン管の発光特性と真反対のガンマ(γ=0.45)を掛け、発光特性をリニアに補正しようとするのが「ガンマ補正」だ。アナログ時代のテレビでは、全てのテレビ受像器にガンマ補正回路を搭載すると高価になるため、撮影時にカメラ側で補正するシステムを採用していた。
もちろん、現在主流の液晶やプラズマテレビは、ブラウン管のようなガンマ特性を持たず、高度にデジタル化されているので、リニアな信号を受け取れば難なくリニアに表示できる訳だが、ブラウン管テレビが残存する以上、カメラ撮影時のガンマ補正を止めるわけにも行かない。
よって最新のデジタルテレビは、ブラウン管のガンマカーブをシミュレーションし、正しい映像を映し出しているのだ。
ガンマと聞くと難しく聞こえるかもしれないが、デジタルテレビが普及している現状に照らせば、入力信号に対して画面の輝度が忠実に再現されるかどうかという、単純な話だと考えたら良い。
ではガンマをどう調整すべきだが、一般に”ガンマが強い”と呼ばれるのは、カーブが深く、中間の輝度が標準よりも暗い状態を指す。
逆に”ガンマが弱い”と呼ばれるのは、カーブが浅く、中間の輝度が標準よりも明るい状態を指す。
設定の指針としては、制作者の意図を重視するなら、制作基準の「ガンマ2.2」を選ぼう。制作者の意図した明暗が素直に画面に反映される。高/中/低などの選択肢から選ぶ製品の場合、「中」が2.2に相当するケースが多い。
テレビ放送やゲーム画面などでは、ガンマが弱く中間調が明るめの方が、見やすく好まれるケースも多い。この場合は「ガンマ1.8」や「低」を選ぼう。画面輝度の違いは一目で分かるはずだ。