ピュアオーディオの基準で音を語れる希有なBDレコーダー・パナソニック「DMR-BZT9000」
ビジュアルグランプリ2012 特別金賞及び総合金賞のダブル受賞に輝いた稀有な商品、それがパナソニック・DIGAのフラグシップ「DMR-BZT9000」だ。あくなき進化を続けるDIGAの到達点を今すぐ体験すべきだ。BDレコーダーという枠を越えて、ピュアオーディオの枠にまで入り込んだこのモデルを体験しない手は、もはやない。
入念なノイズ対策に加え、振動対策に気を配った
広帯域の映像信号と繊細な音楽信号を同時に扱うBDレコーダーのクオリティを高めるためには、信号同士の干渉を抑えるなど、入念なノイズ対策が不可欠だ。さらに、筐体に光学ドライブやHDDなどの振動源を内蔵するため、振動対策にも十分に気を配る必要がある。また、大音圧でサラウンド再生を楽しむホームシアター環境では、外部からの振動の影響も無視することができない。
DIGAの2011年秋モデルのラインナップは、そうした難しい課題に正面から取り組んだ力作を上位に用意し、陣容を強化した。その頂点に位置するのが、パナソニックがプレミアム機種と位置付けるDMR-BZT9000である。
これまでDIGAのラインナップは最上位900番台の製品に最新技術をフル投入し、その技術の一部を取捨選択して下位モデルに導入するという関係で構築してきた。一方、2011年はその階層構造をあえて超越してさらに上位機種を用意し、4桁の型番を与えている。その狙いはどこにあるのか。
まず、飛び抜けた存在の最上位機種を導入すればラインナップ全体の性能は確実に向上する。今回もそうだが、フラグシップ機に投入される技術の一部は姉妹機にも搭載されるケースが多く、全体の評価アップにもつながる。
実際に、BZT9000に導入された新しいデジタル技術はすべて準フラグシップ機のBZT910にも採用されており、このカテゴリでも前作との性能差はかなり大きい。具体的には、プレミアムモデルにのみ搭載されるディテールクラリティプロセッサに、新たに色信号のエンハンス処理が加えられており、圧縮音声の質感を改善するリ・マスター処理についても中低域の厚みを蘇らせる処理を追加。真空管サウンドのさらなる音質向上とともに、BZT9000とBZT910のアドバンテージとみなすことができる。
不要な回路を遮断した際の効果の大きさは「一目瞭然」
冒頭で触れたノイズ対策については、まずデジタルベースで実現可能な干渉対策「インテリジェント・ローノイズシステム」を2つのプレミアム機種に共通して投入した。
この技術はUniPhier(ユニフィエ)の洗練された回路構成を生かし、セットの動作状態に応じて不要な回路を選択的に遮断するもので、BD再生時にチューナー/HDD/冷却ファンを停止する「シアターモード2」や、HDMI出力時に映像DACとアナログ映像出力回路を両方とも停止する「ハイクラリティサウンド2」などが基本の動作だ。
これらの対策は複合動作に対応しているので、BD視聴時はデジタルの映像・音声処理系以外はほぼ完全にオフにできるし、音楽CDをアナログ出力経由で楽しむ場合は、デジタル映像処理回路やHDMI出力までオフにすることもできる。チューナーやHDDをオフにするシアターモードはDIGA流のピュア再生モードとして定着したが、最新モデルではその内容がさらに大きな進化を遂げているのだ。
デジタル基板のノイズ輻射を計測したデータによると、不要な回路を遮断したときの効果の大きさは一目瞭然だ。特にCD再生時にデジタル映像回路とHDMI出力を停止したときの改善効果は顕著で、ノイズフロアがグッと下がり、ステージの遠近感など、音場の見通しが開けて爽快だ。ボーカルやアコースティックギターの音色が本来の柔らかさを取り戻すことにも注目したい。
BZT9000はそうした緻密なノイズ対策に加えて、筐体や内部構造を大幅に強化し、徹底した振動のコントロールに取り組んでいる。やはり冒頭で触れたようにBDレコーダーは振動源を内蔵し、ディスク再生時には外来振動の影響も無視することができないので、振動対策の成否が音質を大きく左右するのだ。
筐体強化を貫く基本思想は、ずばり剛性の向上と低重心化の徹底に重点を置いている。これまでスリム化と軽量化を徹底してきたパナソニックが方向転換をしたように見えるかもしれないが、少なくとも小型化を進める方向については従来の方針をそのまま受け継いでいる。むしろ、筐体の容積を小さく抑えることは剛性の強化に直結するし、信号経路の最短化という視点から見ても、筐体は小さい方がアドバンテージが大きいのだ。
姉妹機との大きな違いは、まず筐体そのものの剛性強化に見出すことができる。アルミ押し出し材をトップパネルとサイドパネルに採用し、前者は厚みが3.5mmと突出して分厚い素材だ。しかもトップパネルはフロント部でL字型に仕上げているため、正面から見るとかなり迫力がある。3本のラインでアクセントを付けたサイドパネルは底板及びトップパネルと連結され、強固なシェル構造を形成する。
底板は厚みを変えた鋼板を3枚重ねて重心を下げるとともに、共振モードを徹底的に解析して不要共振を抑え込んでいる。本体を裏返して指で叩いてみると、固有の鳴きのない鈍い音が返ってくるが、ここまで共振を抑えた製品はハイエンドのオーディオプレーヤーぐらいしか見当たらない。フットはおなじみのセラミックインシュレーターにソフト系素材を組み合わせたハイブリッド構造で、すべりにくく安定した設置ができる。
筐体内部に目を向けると、光学ドライブを完全に遮蔽するシェルターの存在が目を引く。シェルター上にはプレミアムモデルであることをうたう銘板が見えるが、このプレートは異種素材の組み合わせによる共振対策も兼ねているというのが興味深い。そのほか、振動対策を施したAV機器仕様の静音HDDユニットや音響コンデンサーなど、こだわりのパーツや振動対策の数々が目に入ってきた。さらに背面パネル近傍に注目すると、入出力端子を基板に直結し、信号が通る経路を最短に抑える工夫を凝らしていることに気付く。
電源まわりの強化は、オーディオファンならすぐに納得のいく対策が並んでいる。電源回路のコンデンサーは低インピーダンス設計の音響仕様で、容量にも余裕がある。3芯タイプのACインレットの採用はパナソニックのBDレコーダーでは本機が初めてだし、導体にOFCを採用した10o径の太い電源ケーブルが付属するのも本機だけ。市販製品のなかから好みの電源ケーブルを組み合わせる楽しみもある。