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日立「P50-GP08」で3Dの良作『サンクタム』を観る
■3Dの完成度と効果が両立
P50-GP08の3Dセットアップは極めて容易、というよりユーザーがやることがほとんどない。3Dを選択すると画質も対応したパラメーターが適用され、コントラスト、黒レベル等を除いて詳細調整の大半が固定になる。
3Dアクティブシャッターメガネ「TP-AE3D200」(別売)は軽量で長時間の装着で疲れない。電池式でON/OFFはマニュアル。アクティブ方式の場合、自動認識だとしばしば視聴時外に動作に入ってしまいバッテリーの消耗が早いから、マニュアルが正解だ。
『サンクタム』の序盤はジャングルの実写シーンが続く。これまでの3D映画の大半がCGとの合成、あるいはアニメ映像だった。だから、3D慣れした筆者にも新鮮である。
近作に珍しく、手前への飛び出し効果が多用されている。前方への飛び出しは輻輳角がオフセット(視線が外側に向かって開く)になるため、視聴者の生理的負担への配慮でハリウッドの長時間映画では控えられることが多いが、本作はそうでない。このあたり、3Dの経験の積み重ねで得た自信による「次の一歩」なのだろう。
一般ユーザーにとって、3Dは<引っ込む>ものでなくあくまで<飛び出す>ものである。現在主流の奥行き主体の立体表現は、スクリーン上の映像が視野の大部分を占有する劇場では仮想現実への没入感、一体感を生み出すが、せいぜい50インチ止まりの家庭用テレビでは、効果は半減する。このあたりのシフトに『アバター』の劇場公開とパッケージビデオの落差から得た、教訓とバランス感覚が伺える。
P50-GP08で驚いたのは、この前方への飛び出しが非常にくっきり鮮明で力強く、二重像等の妨害要因が見られないことである。
筆者の場合、LCOS方式の3Dプロジェクターで本作を一度視聴済みだ。立体効果は画面の大きさと深い相関があるはずだが、P50-GP08の方が、明らかに飛び出しの度合いが大きい。これは、3Dに対応した超解像技術「ピクセルマネージャーEX」が適切に効果を上げていて、エッジ表現など鮮鋭感が本作の3D映像に適用され、先鋭な立体効果を生んでいるのである。
しかも3D映像が非常に明るく、色彩バランスの変化が少ない。P50-GP08で『サンクタム』の3D映像を見たら、3Dを「食わず嫌い」している方でも、これを2Dで見ようとは思わないだろう。
立体表現が特に印象的なシーンを挙げておこう。ブルーレイディスクのチャプター8、16の水滴が降り注ぐシーンは前後の奥行き表現が素晴らしい。水滴に思わず手をかざしたくなるリアリティがある。
ラスト近く、ジョシュアが闇の中で光に導かれていくチャプター19もいい。P50-GP08で通して見た『サンクタム』には<聖域>の闇、光、冷たさ、恐怖、希望、そして尊厳がたしかにあった。
『サンクタム』をテーマに、P50-GP08が3D映像の完成度で先行した製品を凌ぐことが確認できた。3Dにやや冷めかけている経験者も身を乗り出さずにいられない、確かな表現力を備えていた。その意味で3Dに食わず嫌いのユーザー<必見>の製品である。これから2D高画質ソフトでの実力を含め、P50-GP08を検証していきたい。
(大橋伸太郎)