注目新製品レビュー
デノン“URBAN RAVER”シリーズ ー ヘッドホン「AH-D400」/イヤホン「AH-C300」を聴く
AH-C300:新発想の「ダブルエアコンプレッションドライバー」で高い音楽性を獲得
強力なラインナップを揃えてきたデノンのイヤホン・ヘッドホン新製品の中で、“URBAN RAVER”シリーズに属するイヤホン。シリーズのコンセプトは「体の芯まで伝わるようなパワフルで豊かな重低音」とのことだが、それを見事に実現している製品だ。
鍵となるのは「ダブルエアコンプレッションドライバー」。11.5mmのダイナミックドライバーをハウジング内で向かい合わせに2基搭載。そこから耳に送り込まれる音が強烈なのだ。
ダイナミックドライバーを2基搭載するので、ハウジングはかなり大型。しかし形状を工夫してイヤースタビライザーも搭載することで、装着感や外れにくさも確保。
イヤーピースも特徴的だ。通常のシリコン製イヤーピースの他、ゲル状のシリコンが詰まった2層シリコンイヤーピース、コンプライ製の低反発素材イヤーピースが付属。装着感や音質の好みで選ぶことができる。
ケーブルにはリモコンやマイクは搭載されていないが、実はそれらはハウジングに仕込まれている。右側のハウジングには、中央にコントロールボタン、その周囲に音量ダイヤルを装備。左側のハウジングにはマイクを装備。スマートフォンと合わせての利便性も損なわない。
また本シリーズにはiOS/Androidアプリ「Denon Club」も提供される。基本的な再生機能の他、ネットラジオ、指でドラッグ操作できるグラフィックイコライザー、歌詞のネット検索表示機能がポイントだ。
ミシェル・ンデゲオチェロのクラブ系の試聴曲には、かなり太く深いベースが入っているが、その感触は期待を軽々と超える。ドンッと太く沈むが、制動も効いていて膨らみ過ぎずにぴたっと止まる。素晴らしい重量感なのだが、その重量感に無理がなく、他の帯域を邪魔しない。イヤホンではちょっと聴いたことがないタイプの低音描写だ。
エスペランサ・スポルディングのベースも分厚くて高密度。そしてこの曲では高音側の充実も感じられる。シンバルの音の粒子感の微細さとしなやかさ。シンバルやギターの低音に全く埋もれない抜けの良さも印象的。またシンバルの配置に代表される、音場の広がりもカナル型イヤホンとしては例外的なほどに良い。
宇多田ヒカルの歌声も抜群に良い。声の厚み深み、柔らかさ優しさ、広がり。ミュージシャンの歌を堪能するために、ほしい要素が全て揃っている。
その特殊な技術や大柄な筐体から、聴く前には奇抜なイメージを持っていたが、そのサウンドは期待をはるかに超える高い音楽性を備えていた。低音重視派の方には特に聴いてみてもらいたい。
◆高橋 敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。