注目新製品レビュー
デノン“MUSIC MANIAC”シリーズ ー ヘッドホン「AH-D7100」「AH-D600」/イヤホン「AH-C400」を聴く
デノンのオーディオファイル向けヘッドホン&イヤホンに、新たなリファレンスサウンドを実現した“MUSIC MANIAC”シリーズが登場した。最上位機の「AH-D7100」をはじめ、ヘッドホン「AH-D600」、カナル型イヤホン「AH-C400」のサウンドインプレッションを、ライターの野村ケンジ氏がレポートする。
この夏デノンから、全く新しいコンセプトを持つ4シリーズ8機種のヘッドホンが登場した。その中でも音楽好きにとっての注目株は、音質を重視した「MUSIC MANIAC」シリーズだろう。新しいフラッグシップヘッドホン「AH-D7100」をはじめ、ハイエンドモデルの「AH-D600」、シリーズ唯一のカナル型イヤホンでバランスドアーマチュア型ドライバーを搭載した「AH-C400」など、そのいずれも概要を見ただけでもこだわりの深さがうかがえる、渾身のモデルだ。当然ながら、サウンドの傾向や実力のほどにも大いに興味がわくところ。ということで、早速3モデルを借りて、その実力のほどを体験してみることにした。
AH-D7100:デノン・ヘッドホンサウンドのリファレンスが誕生した
フラッグシップモデルとなるヘッドホン「AH-D7100」は、これまでのデノンのヘッドホンとは全く異なる、現代的なスタイルを与えられた。その内部にもナノファイバー振動板をもつ50mmドライバーや天然マホガニー材のハウジング、耳にフィットしつつ周囲の騒音もシャットアウトする5角形イヤーパッドなど、新技術がふんだんに投入されている。一方で、サウンドマイスターによる徹底的な音質調整など、高音質をとことん追求するデノンらしさは新世代ヘッドホンにおいても変わることなく継承されているようだ。そのほか、ケーブルは着脱式を採用。自宅でのオーディオ再生用(3mの7N-OFC芯線採用ケーブル)と、屋外でのポータブルリスニング用(1.3mのiPhone対応リモコン付ケーブル)に、それぞれ最適となるケーブルを2タイプ付属するなど、先に紹介した5角形イヤーパッドなどを含め、使い勝手の面でも様々な配慮がなされている点もうれしい。
さて、肝心のサウンドはというと、一聴してまず驚くのが、そのダイレクト感の高さと、音色のリアルさだ。解像度が高く、キレの良い、かつ付帯音が皆無な超クリアサウンドのおかげだろう、まるで目の前でミュージシャン本人が演奏しているかのような、とてつもなくリアルなサウンドが楽しめる。なかでも女性ヴォーカルがいい。抑揚がダイナミックで、それでいてニュアンスの表現は細やかな、少しかすれ気味の歌声で、時には勢いよく、時には艶っぽく歌い上げてくれる。
高域は伸びやかでキレが良い傾向、低域は解像度が高いものの柔らかく広がる音色傾向で纏め上げられているため、音楽ジャンル的にはクラシックがベストマッチしてくれる。女性ヴォーカルも艶やかなので、オペラ系もなかなかにいい。続いてジャス系といったところか。思ったほどにジャンルを問わないのも、「AH-D7100」ならではの魅力といえる。新世代フラッグシップの名にふさわしい、素晴らしい製品だ。
AH-D600:キレ味鋭いサウンドが魅力のシリーズ中堅モデル
一方の「AH-D600」も実力としてはかなりのレベルだ。また、ナノファイバー振動板を持つ50mmドライバーなどは同じながら、ハウジングがグラスファイバー配合FRPに変えられているほか、オールジャンルなキャラクターを目指したのか、音色傾向も多少異なっている。
特に印象的なのは、高域のキレの良さと鋭さだ。「AH-D7100」も素晴らしいレベルだが、「AH-D600」ではさらに立ち上がりが鋭く、まるでナイフのような切れ味を持つ。付帯音も皆無といって良いほどで、音のダイレクトさはフラグシップの「AH-D7100」に勝るとも劣らないレベルに達している。また、低域のソリッドさもいい。制動のよく効いた、芯のある低音がボトムエンドまでしっかり伸びきっているので、バスドラやタムなどがリズミカルなサウンドを奏でてくれる。音色の傾向的にはこちらの方が好みという人がいるかもしれない。
AH-C400:とてつもない広帯域をカバー、しかもグルーブ感の高いサウンド
「AH-C400」は、バランスドアーマチュア型ドライバーを搭載したカナル型イヤホン。ドライバーは2基、加えて亜鉛ダイキャストハウジングを採用することで、再生周波数帯域が幅広く表現力が豊かだ。それでいてクオリティの高いサウンドを実現しているという。ちなみにケーブルは直出しタイプを採用、iPod/iPhone/iPad専用のコントローラー+マイクが付属している。
そのサウンドは、帯域の幅広さがとてつもなく秀逸。このあたりはヘッドホンと共通するキャラクターで、「MUSIC MANIAC」シリーズのメインコンセプトなのかもしれないが、とてもバランスドアーマチュア型ドライバー2基のみとは思えない、素晴らしいクオリティだ。屋外の使用が前提となるカナル型イヤホンらしく、低域は敢えてボリューム感を与えられているが、解像度感が高いうえ、中域がしっかりと存在感を主張しているため邪魔にはならない。そればかりか、リズム感の良さ、グルーブ感の高さは「AH-D600」に対して勝るとも劣らないレベルに達している。相性が良いのはウォーミーなヴォーカル系で、ダイアナ・クラールとの相性は絶品だった。
いずれもクォリティが高く、共通のキャラクターを持ちながらも、それぞれに魅力的な個性を発揮してくれる「MUSIC MANIAC」シリーズ。この夏、話題の中心となることは間違いない。
◆野村ケンジ プロフィール
ホームシアターやヘッドホン、音楽関連、カーAVなどの記事を中心に執筆活動を展開している。100インチスクリーン+TADスピーカーで6畳間極小ホームシアターを実践。さらに現在はステレオと7.1chの同居計画が進行中。好きなクルマはアルファ・ロメオなどのイタフラ系。
◆本製品の詳しいレビューは8月17日発売の「AVレビュー 2012年9月号」に掲載されます。
この夏デノンから、全く新しいコンセプトを持つ4シリーズ8機種のヘッドホンが登場した。その中でも音楽好きにとっての注目株は、音質を重視した「MUSIC MANIAC」シリーズだろう。新しいフラッグシップヘッドホン「AH-D7100」をはじめ、ハイエンドモデルの「AH-D600」、シリーズ唯一のカナル型イヤホンでバランスドアーマチュア型ドライバーを搭載した「AH-C400」など、そのいずれも概要を見ただけでもこだわりの深さがうかがえる、渾身のモデルだ。当然ながら、サウンドの傾向や実力のほどにも大いに興味がわくところ。ということで、早速3モデルを借りて、その実力のほどを体験してみることにした。
AH-D7100:デノン・ヘッドホンサウンドのリファレンスが誕生した
フラッグシップモデルとなるヘッドホン「AH-D7100」は、これまでのデノンのヘッドホンとは全く異なる、現代的なスタイルを与えられた。その内部にもナノファイバー振動板をもつ50mmドライバーや天然マホガニー材のハウジング、耳にフィットしつつ周囲の騒音もシャットアウトする5角形イヤーパッドなど、新技術がふんだんに投入されている。一方で、サウンドマイスターによる徹底的な音質調整など、高音質をとことん追求するデノンらしさは新世代ヘッドホンにおいても変わることなく継承されているようだ。そのほか、ケーブルは着脱式を採用。自宅でのオーディオ再生用(3mの7N-OFC芯線採用ケーブル)と、屋外でのポータブルリスニング用(1.3mのiPhone対応リモコン付ケーブル)に、それぞれ最適となるケーブルを2タイプ付属するなど、先に紹介した5角形イヤーパッドなどを含め、使い勝手の面でも様々な配慮がなされている点もうれしい。
さて、肝心のサウンドはというと、一聴してまず驚くのが、そのダイレクト感の高さと、音色のリアルさだ。解像度が高く、キレの良い、かつ付帯音が皆無な超クリアサウンドのおかげだろう、まるで目の前でミュージシャン本人が演奏しているかのような、とてつもなくリアルなサウンドが楽しめる。なかでも女性ヴォーカルがいい。抑揚がダイナミックで、それでいてニュアンスの表現は細やかな、少しかすれ気味の歌声で、時には勢いよく、時には艶っぽく歌い上げてくれる。
高域は伸びやかでキレが良い傾向、低域は解像度が高いものの柔らかく広がる音色傾向で纏め上げられているため、音楽ジャンル的にはクラシックがベストマッチしてくれる。女性ヴォーカルも艶やかなので、オペラ系もなかなかにいい。続いてジャス系といったところか。思ったほどにジャンルを問わないのも、「AH-D7100」ならではの魅力といえる。新世代フラッグシップの名にふさわしい、素晴らしい製品だ。
AH-D600:キレ味鋭いサウンドが魅力のシリーズ中堅モデル
一方の「AH-D600」も実力としてはかなりのレベルだ。また、ナノファイバー振動板を持つ50mmドライバーなどは同じながら、ハウジングがグラスファイバー配合FRPに変えられているほか、オールジャンルなキャラクターを目指したのか、音色傾向も多少異なっている。
特に印象的なのは、高域のキレの良さと鋭さだ。「AH-D7100」も素晴らしいレベルだが、「AH-D600」ではさらに立ち上がりが鋭く、まるでナイフのような切れ味を持つ。付帯音も皆無といって良いほどで、音のダイレクトさはフラグシップの「AH-D7100」に勝るとも劣らないレベルに達している。また、低域のソリッドさもいい。制動のよく効いた、芯のある低音がボトムエンドまでしっかり伸びきっているので、バスドラやタムなどがリズミカルなサウンドを奏でてくれる。音色の傾向的にはこちらの方が好みという人がいるかもしれない。
AH-C400:とてつもない広帯域をカバー、しかもグルーブ感の高いサウンド
「AH-C400」は、バランスドアーマチュア型ドライバーを搭載したカナル型イヤホン。ドライバーは2基、加えて亜鉛ダイキャストハウジングを採用することで、再生周波数帯域が幅広く表現力が豊かだ。それでいてクオリティの高いサウンドを実現しているという。ちなみにケーブルは直出しタイプを採用、iPod/iPhone/iPad専用のコントローラー+マイクが付属している。
そのサウンドは、帯域の幅広さがとてつもなく秀逸。このあたりはヘッドホンと共通するキャラクターで、「MUSIC MANIAC」シリーズのメインコンセプトなのかもしれないが、とてもバランスドアーマチュア型ドライバー2基のみとは思えない、素晴らしいクオリティだ。屋外の使用が前提となるカナル型イヤホンらしく、低域は敢えてボリューム感を与えられているが、解像度感が高いうえ、中域がしっかりと存在感を主張しているため邪魔にはならない。そればかりか、リズム感の良さ、グルーブ感の高さは「AH-D600」に対して勝るとも劣らないレベルに達している。相性が良いのはウォーミーなヴォーカル系で、ダイアナ・クラールとの相性は絶品だった。
いずれもクォリティが高く、共通のキャラクターを持ちながらも、それぞれに魅力的な個性を発揮してくれる「MUSIC MANIAC」シリーズ。この夏、話題の中心となることは間違いない。
◆野村ケンジ プロフィール
ホームシアターやヘッドホン、音楽関連、カーAVなどの記事を中心に執筆活動を展開している。100インチスクリーン+TADスピーカーで6畳間極小ホームシアターを実践。さらに現在はステレオと7.1chの同居計画が進行中。好きなクルマはアルファ・ロメオなどのイタフラ系。
◆本製品の詳しいレビューは8月17日発売の「AVレビュー 2012年9月号」に掲載されます。