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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第15回】徹底検証! iBasso「HDP-R10」のハイスペック機能をガッツリ試す

公開日 2012/08/28 11:17 高橋敦
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■オーディオプレーヤーとしての「HDP-R10」

ハードウェア面に目を移してみると、ヘッドホン出力は標準端子とミニ端子の両方が装備されている。余計な変換アダプタは音質的にも取り回し的にもよろしくないので、これはうれしい。両者に目立った音質差は感じられないので、お手持ちのヘッドホンの端子に合わせて選択すればOKだ。

どちらの端子も差し込みの手応えがしっかりとしており、確実な固定・接触を実感できるゲイン切替スイッチも搭載。ゲインをLo、音量は目盛りの2/3程度で、ある程度のドライブ能力を要求するSHURE SRH1840から試聴に十分な音量を確保できた

なおいまの季節にちょっと気になったのは動作中の発熱。室温30度前後での利用だと、筐体がけっこう熱を持つ。ただこの点については、金属筐体が放熱パーツとしての役割をしっかり果たしている(熱を内部に溜めていない)とも考えられる。

さて、本機のライバルは一般的なクラスのポータブルプレーヤー(またはスマートフォン)+ポータブルヘッドホンアンプということになるだろう。

プレーヤー+ポタアンという構成の弱点は、多くの場合で携帯性と使い勝手が大きく損なわれることだ。その点において本機は、本体自体は大柄であるものの、単体で完結する高音質機であることに優位性がある。

ゲイン切替スイッチも搭載。ゲインをLo、音量は目盛りの2/3程度で、ある程度のドライブ能力を要求するSHURE SRH1840から試聴に十分な音量を確保できた

コストパフォーマンスという観点からはどうだろうか。例えばウォークマンの高音質シリーズであるNW-A867(本機と同じく64GBモデル)は3万5,000円程度だ。これにある程度のクラスのポタアンを加えると、合計で6万円ほど。

対して本機は実売8万8,000円程度。その差は3万円ほどだ。単機で完結する本機の使い勝手の良さ、そして本機の音の良さに、それだけの金額を出せるか。思案のしどころだ。

■Android端末としての「HDP-R10」

では視点を変えて、Android端末としての本機はどうだろうか? これは正直に言って、期待すべきではない。本機が採用しているAndroidのバージョンは2.3.1。現在の最新バージョンは4.1、Ver.2系列にしても2.3.3などのより新しいバージョンが存在するというのに(今後のアップデートの提供は未定とのこと)。

「設定」アプリから「端末情報」を確認できる。ちなみに「ビルド番号」がいわゆるファームウェアのバージョン

消費リソース(メモリー使用量など)の少なさ、オーディオ向けチューニングのノウハウの蓄積などを考え、あえて2.3.1を選んだのだろう。それが本機のスタンスを象徴している。汎用的なAndroid端末としての機能性や快適さは考慮されていない。

「マーケット」アプリから新規のアプリを購入・インストールして機能追加するなど、Androidらしい使い方もできるにはできる。本機はWi-Fi対応なので、ネットも利用可能だ。

しかし例えばウェブブラウズの際には小さな文字の読みにくさやタッチ操作への反応の悪さなどが目立つなど、やはり使いにくい。Andorid端末としての側面は、本機においてはオマケと捉えておくのがよいだろう。

プリインストールされているアプリは6個のみ。アプリ満載の端末を見慣れているのでこれは新鮮

なおソフトウェア面では、ファームウェアのアップデートについては期待してよさそうだ。「ファームウェアの改良を繰り返しながら開発をしてきたので、今後もブラッシュアップの可能性はある。音質に関わるところよりは機能性の向上の方が可能性は高い」(ヒビノ)とのことである。

様々な点をチェックしてみたが、それにしてもチェック項目が多い。なんと盛りだくさんなプレーヤーであろうか。

とにかくこの製品は、ハイエンドポータブルプレーヤーというジャンル自体の試金石だ。これがオーディオファンにどのようにどの程度受け入れられるのか、注目せざるを得ない。



高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退。大学中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。 その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。


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