パワフル&リアルな低音再生を実現
新構造「ライブビートシステム」採用のハイエンド・イヤホン ー JVC「HA-FXZ」シリーズを聴く
JVCから独自の新構造「ライブビートシステム」を採用した新たなカナル型イヤホン「HA-FXZシリーズ」が登場する。シリーズにラインナップする「HA-FXZ200」「HA-FXZ100」2モデルのサウンドを、ライターの高橋敦氏がレポートする。
独自技術「ストリームウーファー」「ツインシステムユニット」が生み出す新たなサウンド
近年のJVCのイヤホンは独創的だ。その端緒は2008年発売の「HP-FXC50」であると筆者は考えている。耳に入れるノズルの先端に超小型の「マイクロHDユニット」を搭載。ダイレクト感の強い音を実現した「トップマウント構造」は衝撃的だった。
続いての衝撃は2011年の「HA-FXT90」。マイクロHDユニットを応用。超小型ドライバー2基を並列配置した「ツインシステムユニット」で、密度感のある音を実現した。
その、いわゆる衝撃の系譜を受け継ぐのが「HA-FXZ200」「HA-FXZ100」だ。ツインシステムユニットを中高域再生用として、加えて新開発の重低音再生用ユニット「ストリームウーファー」を搭載。合わせて名付けた「ライブビートシステム」を採用している。ダイナミック型ドライバーを3基搭載という構成はまたもや衝撃的だ。
まず注目すべきは「ストリームウーファー」だ。8.8mm口径のドライバーを真鍮製のユニットベースで覆い、密閉音響構造を形成。そこから細長い筒、ストリームダクトで低音を導き出す。
ストリームダクトは口径0.4mm/長さ30mm。試作を重ねて導き出されたこのサイズのダクトを通過することで、ドライバーから出された音のうち100Hz以上の中高音は減衰され、良質な低音成分だけが抽出される。ネットワーク回路を用いず、アコースティックな処理で低音を抽出するのが面白いところだ。
中高音用の「ツインシステムユニット」は、片方がカーボンナノチューブ振動板、もう片方がカーボン振動板。それらをメタルユニットベースに組み込んで一体化している。メタルユニットベースの素材は、上位機のFXZ200は比重の大きい真鍮、FXZ100はアルミとなる。
なお今回のツインシステムユニットは、ストリームウーファーとのコンビネーションとなるため、改めて本機専用に中高音用に合わせたチューニングが施されている。
他のポイントとしては、上位機のFXZ200はケーブルの芯線を銀コート処理のOFC=無酸素銅として伝送ロスを軽減、解像感の向上などを狙っている。FXZ100の芯線は通常のOFC。どちらもケーブルは柔軟で扱いやすい。デザインはスケルトン素材のハウジングで3つのドライバーを主張し、メカニカルなかっこよさだ。
「HA-FXZ100」を聴く ー シャープな中高域/厚くキレのある低音
最初に上原ひろみ「MOVE」から、ピアノ・トリオでのアグレッシブな演奏を試聴。
まずはエレクトリックベースの描写が秀逸。音色の本体は芯が明確でタイトに太く、制動も確かでスタッカートはぴたっとキレる。そしてそこに低音の豊かな響きが加わることが特長だ。ドラムスもアタックの速さや抜けと、太鼓らしい豊かな響きを兼ね備える。このあたりがストリームウーファーの威力だろう。重厚さ重量感がありながらも鈍重さはないというのがポイントだ。
中高域はシャープネスが効いている。シンバルは薄刃で、特にライドシンバルの鋭利さと透明感は素晴らしい。解像感も高く、細かなハイハットシンバルの細かなフレーズの精密感も引き出す。ピアノの強打の艶やかな硬質さにも感心。
女性ボーカルは何作品か聴いたがどれも、声のシャープな成分を活かしつつも耳に刺さるようにはしない、絶妙のチューニングだ。特に宇多田ヒカルのボーカルは、声の肉厚さや色濃さ、響きの豊かさも良く引き出し、低音を歌う場面での深みにも満足させられる。
厚み重みとキレが両立されており、シリーズでは弟機ながらも十分に高い完成度だ。
「HA-FXZ200」を聴く ー 全域に渡り表現が向上/解像感豊かできめ細かな低音
HA-FXZ100でも満足度の高かったところに、さらにもう一段とクオリティを上乗せしている。
ベースの芯の太さ確かさが向上し、音像が一段と明確だ。例えばピアノとベースのユニゾンの場面でそのブレのなさで精度が高まり、ぴたっと揃うことで迫力も増している。ドラムスもさらに太く、加えて一発一発の分離や抜けも良好。全体の印象としても、よりがっしりとした厚みがある。
低音の響きは量感的に増しているのではなく、解像感が高まりその成分をより豊かに感じられるといった印象だ。ツインシステムユニットのベース素材がより頑強な真鍮となり、余計な響きを出さないことで本来の響きがより活きているからだろう。
中高音の表現も向上している。シンバルの鋭さはさらに無駄のないものとなり、スパッとしたキレの良さを見せる。透明感もさらに高まり、ピアノの音色のそれは特に高まっている。ボーカルもよりクリアな印象だ。HA-FXZ100にコストを投入してチューニングを深めた、まさに上位モデルと言える。
両モデルとも、ツインシステムユニット+ストリームウーファーというキャッチーな技術要素が実際の音にしっかりと反映されている。またもや興味深いイヤホンの登場を歓迎したい。
◆高橋敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。
独自技術「ストリームウーファー」「ツインシステムユニット」が生み出す新たなサウンド
近年のJVCのイヤホンは独創的だ。その端緒は2008年発売の「HP-FXC50」であると筆者は考えている。耳に入れるノズルの先端に超小型の「マイクロHDユニット」を搭載。ダイレクト感の強い音を実現した「トップマウント構造」は衝撃的だった。
続いての衝撃は2011年の「HA-FXT90」。マイクロHDユニットを応用。超小型ドライバー2基を並列配置した「ツインシステムユニット」で、密度感のある音を実現した。
その、いわゆる衝撃の系譜を受け継ぐのが「HA-FXZ200」「HA-FXZ100」だ。ツインシステムユニットを中高域再生用として、加えて新開発の重低音再生用ユニット「ストリームウーファー」を搭載。合わせて名付けた「ライブビートシステム」を採用している。ダイナミック型ドライバーを3基搭載という構成はまたもや衝撃的だ。
まず注目すべきは「ストリームウーファー」だ。8.8mm口径のドライバーを真鍮製のユニットベースで覆い、密閉音響構造を形成。そこから細長い筒、ストリームダクトで低音を導き出す。
ストリームダクトは口径0.4mm/長さ30mm。試作を重ねて導き出されたこのサイズのダクトを通過することで、ドライバーから出された音のうち100Hz以上の中高音は減衰され、良質な低音成分だけが抽出される。ネットワーク回路を用いず、アコースティックな処理で低音を抽出するのが面白いところだ。
中高音用の「ツインシステムユニット」は、片方がカーボンナノチューブ振動板、もう片方がカーボン振動板。それらをメタルユニットベースに組み込んで一体化している。メタルユニットベースの素材は、上位機のFXZ200は比重の大きい真鍮、FXZ100はアルミとなる。
なお今回のツインシステムユニットは、ストリームウーファーとのコンビネーションとなるため、改めて本機専用に中高音用に合わせたチューニングが施されている。
他のポイントとしては、上位機のFXZ200はケーブルの芯線を銀コート処理のOFC=無酸素銅として伝送ロスを軽減、解像感の向上などを狙っている。FXZ100の芯線は通常のOFC。どちらもケーブルは柔軟で扱いやすい。デザインはスケルトン素材のハウジングで3つのドライバーを主張し、メカニカルなかっこよさだ。
「HA-FXZ100」を聴く ー シャープな中高域/厚くキレのある低音
最初に上原ひろみ「MOVE」から、ピアノ・トリオでのアグレッシブな演奏を試聴。
まずはエレクトリックベースの描写が秀逸。音色の本体は芯が明確でタイトに太く、制動も確かでスタッカートはぴたっとキレる。そしてそこに低音の豊かな響きが加わることが特長だ。ドラムスもアタックの速さや抜けと、太鼓らしい豊かな響きを兼ね備える。このあたりがストリームウーファーの威力だろう。重厚さ重量感がありながらも鈍重さはないというのがポイントだ。
中高域はシャープネスが効いている。シンバルは薄刃で、特にライドシンバルの鋭利さと透明感は素晴らしい。解像感も高く、細かなハイハットシンバルの細かなフレーズの精密感も引き出す。ピアノの強打の艶やかな硬質さにも感心。
女性ボーカルは何作品か聴いたがどれも、声のシャープな成分を活かしつつも耳に刺さるようにはしない、絶妙のチューニングだ。特に宇多田ヒカルのボーカルは、声の肉厚さや色濃さ、響きの豊かさも良く引き出し、低音を歌う場面での深みにも満足させられる。
厚み重みとキレが両立されており、シリーズでは弟機ながらも十分に高い完成度だ。
「HA-FXZ200」を聴く ー 全域に渡り表現が向上/解像感豊かできめ細かな低音
HA-FXZ100でも満足度の高かったところに、さらにもう一段とクオリティを上乗せしている。
ベースの芯の太さ確かさが向上し、音像が一段と明確だ。例えばピアノとベースのユニゾンの場面でそのブレのなさで精度が高まり、ぴたっと揃うことで迫力も増している。ドラムスもさらに太く、加えて一発一発の分離や抜けも良好。全体の印象としても、よりがっしりとした厚みがある。
低音の響きは量感的に増しているのではなく、解像感が高まりその成分をより豊かに感じられるといった印象だ。ツインシステムユニットのベース素材がより頑強な真鍮となり、余計な響きを出さないことで本来の響きがより活きているからだろう。
中高音の表現も向上している。シンバルの鋭さはさらに無駄のないものとなり、スパッとしたキレの良さを見せる。透明感もさらに高まり、ピアノの音色のそれは特に高まっている。ボーカルもよりクリアな印象だ。HA-FXZ100にコストを投入してチューニングを深めた、まさに上位モデルと言える。
両モデルとも、ツインシステムユニット+ストリームウーファーというキャッチーな技術要素が実際の音にしっかりと反映されている。またもや興味深いイヤホンの登場を歓迎したい。
◆高橋敦 プロフィール
埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。東洋大学哲学科中退後、パーソナルコンピュータ系の記事を中心にライターとしての活動を開始。現在はデジタルオーディオ及びビジュアル機器、Apple Macintosh、それらの周辺状況などに関する記事執筆を中心に活動する。また、ロック・ポップスを中心に、年代や国境を問わず様々な音楽を愛聴。その興味は演奏や録音の技術などにまで及び、オーディオ評に独自の視点を与えている。