【特別企画】短期集中連載
ティアック「Reference 501シリーズ」を聴く(第2回) USB-DAC「UD-501」
■DSDとPCM、それぞれの再生音を検証する
自宅と本誌それぞれの試聴室でUD-501の動作を確認し、DSDとPCMそれぞれの再生音を検証した。
自宅での試聴時には専用ソフトが間に合わなかったのでMacでAudirvanaPlusを使用して試聴したが、DSFファイルを安定した状態で再生することができた。
低音から高音まで付帯音がまとわりつかず、すっきりとした見通しの良い音調が基本で、ディテールを積極的に引き出す情報量のゆとりも垣間見せる。PCM再生ではその音調に低域の厚さと力強さが加わるが、いずれの場合も量感で迫力を演出するサウンドではなく、どちらかというとその対極の傾向を聴き取ることができた。特にスピード感と切れの良さはオーケストラ、ジャズいずれの音源にも共通した持ち味で、その爽快感あふれるサウンドは本機を選ぶ大きな理由になりそうだ。
本誌試聴室ではWindows PCを用意し、「TEAC HR Audio Player」でASIO2.1とDoP両方の再生音を確認することができた。2.8MHzのDSF音源は2Lの弦楽合奏、Cojokのアルバム、《武満徹ソングブック》などをASIO2.1とDoPの2方式で聴き比べてみたが、両者の音の違いは皆無ではないものの、音調や周波数バランスに本質的な違いはなく、基本的にはほぼ同じ志向の音を再現した。どちらの場合も動作は安定し、ノイズが発生することもなかった。「TEAC HR Audio Player」はDoPとASIO 2.1の比較試聴が簡単に行えるなど操作性の良さが際立っている。これからDSD再生に挑戦する音楽ファンにも安心して薦められるソフトと言っていいだろう。
ボーカルは目の前で歌っているような現実感のあるサウンドを引き出し、アコースティックギターはスチール弦の澄んだタッチがこの上なく美しい。音が出る瞬間のエネルギーが鈍らず、ストレートに再現するためか、特に撥弦楽器の発音は驚くほど鮮度が高く、スピードや勢いが乗っている。弦楽器の音色は空気をたっぷり含んだ柔らかさがあり、トゥッティでは和音の厚みを正確に引き出す。同一音源のPCMデータに比べて中低域が充実していることもあり、思いがけず潤い豊かな音色を堪能することができた。コントラバスのピチカートは立ち上がりが速く、高弦とのタイミングがきれいに揃って意外なほどの音圧感を再現している。
UD−501は2.8MHzに加えて5.6MHzのDSFファイルの再生にも対応している。市販音源はほとんど入手できないが、今回は筆者がKORGのレコーダーで収録した音源などをいくつか用意し、再生してみた。
オーケストラは中低域の適度な厚みと高弦の柔らかい質感を引き出し、ステージの楽器配置を立体的に再現、左右方向だけでなく、前後方向の遠近感が自然に浮かび上がってくることに感心させられた。金管楽器のアンサンブルは各楽器の音色の違いを精密に再現し、演奏の起伏の大きさが際立っている。各奏者の息遣いがあまりに生々しく、ステージ直下の至近距離で聴いているようなリアリティを体感することができた。
UD−501の再生音は、DSD音源ならではの臨場感、空気感を忠実に引き出すポテンシャルを秘めている。対応OS、伝送方式、ファイル形式などすべての要素で複数の選択肢を用意しているので、DSD再生の標準機として活用したい音楽ファンに安心して薦めることができる。