オーディオテクニカ「ADシリーズ」連続レビュー - 第1回「ATH-AD2000X」「ATH-AD1000X」
今回、野村ケンジ氏が新ADシリーズ5モデルを一斉試聴。各製品のクオリティはもちろんのこと、シリーズ内での位置付けなどトータルでのレビューを3回連続でお届けする。
オーディオテクニカ製ヘッドホンのなかでも、根強い人気を誇るロングセラーモデルがいくつかある。そのひとつ、ADシリーズは、オープンエアータイプとも呼ばれる、開放型のハウジングと大口径ドライバーとの組み合わせによって、広がり感が良く、自然な音色傾向によって、多くの人から高い評価を得続けている。
そんなADシリーズに、8年ぶりとなるモデルチェンジが施された。人気の定番モデルだけに、その進化の程がいかなるものか、大いに気になるところ。そこで、今回デビューした全5モデルをすべて借用し、その進化の程をじっくり検証してみることにした。
全5モデルが一気にリニューアルされたADシリーズだが、詳細を見ていくと、実は大まかに2つのシリーズ群に分けられることが分かる。それは、ハイエンドシリーズの「ATH-AD2000X」「ATH-AD1000X」と、ミドル~ハイクラスの「ATH-AD900X」「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」だ。これらは外観上ほとんど見分けが付かないが、ケーブルのレイアウト(2000/1000は両出しで900/700/500は片出し)やドライバー固定部の形状など、仕様面で異なるところがいくつか見られる。そこで、まずはハイエンドシリーズ「ATH-AD2000X」「ATH-AD1000X」について詳細を見ていこう。
第1回:「ATH-AD2000X」「ATH-AD1000X」
ADシリーズのフラッグシップとなる「ATH-AD2000X」は、パーメンジュール磁気回路と7Nグレード(純度99.99999%)OFCボイスコイルを採用する、専用設計の53mm口径ドライバーを搭載。振動板も、今回新たな素材へとリニューアルされた。いっぽう、ハウジングにはアルミニウム素材を、フレームやジョイントにはマグネシウム合金をチョイス。アース線を左右独立構造とした両出しケーブルには、芯線に6NグレードのOFCとノーマルOFCとのハイブリッド構成、シースに絡みにくい高弾性エラストマーを採用、音質と扱いやすさを両立させている。また、イヤーパッドも、エクセーヌ素材と低反撥発泡ウレタンのコンビネーションを採用するのは「ATH-AD2000X」だけのスペシャルな仕様だ。
なお、外観上はほとんど先代と変わらないようにも見える「ATH-AD2000X」だが、実は多岐にわたってリニューアルが施されている。先に述べたドライバーまわりはもとより、ハウジング内部にもディフューザーを設け、同時にケーブルの接続位置も変更することで、空気の流れを大幅にスムーズ化している。このほかにも、オーディオテクニカの高級ヘッドホン独特の「3Dウイングサポート」も形状が変更。立体縫製となったイヤーパッドとも相まって、装着感もかなり良好となった。
対して「ATH-AD1000X」は、基本構成は「ATH-AD2000X」とほぼ変わらないものの、磁気回路や振動板素材などが専用タイプとなるほか、フレーム等のデザインも異なっている。
とはいえ、サウンドキャラクターに関しては「ATH-AD2000X」と同傾向。解像度感や音のリアルさについては確実といえるクオリティ差があるものの、広がりの良い立体感に優れたサウンド表現に変わりはない。「ATH-AD2000X」と厳密に比較試聴することがなければ、「ATH-AD1000X」でも十分に満足できる人はいるはずだ。
>>第2回「ATH-AD900X」のレビューはこちら
第3回「ATH-AD700X」「ATH-AD500X」のレビューはこちら
(野村ケンジ)