[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第43回】「人気声優×人気イヤホン」相性が良いのは? 怒濤の28組み合わせ総当たりテスト!
・坂本真綾「モアザンワーズ」
いよいよ登場、坂本真綾さん「モアザンワーズ」。真綾さんのアルバムとしての最新作はご自身の作詞作曲プロデュースによる「シンガーソングライター」なのだが、そのアルバムからはシングルを出していない。のでシングルとしてはその前に出したこの曲が最新。菅野よう子さん作曲、岩里祐穂さん作詞の、何とも独特な曲。
Aメロの歌はエフェクトでローファイにされており、荒い質感が強調されている。Bメロではクリアな声になるのだが、そのコントラストを楽しみたい。そして「自由って切なくないですか?」というサビの頭の印象的なフレーズの、その素晴らしい艶と伸びやかさはまさに坂本真綾さんらしい。そこはもちろん堪能させてほしい。まずは相性表。
SE215SPE|★★★・・|
ERー4S |★★★★・|
XBAー30 |★★★★★|
K3003 |★★★★★|
という感じだ。それぞれについて説明していこう。
「坂本真綾×SE215 SPE」の相性評価は3。悪くはないが不満はある。まずは不満点を最初に述べておくと、真綾さんの声の艶とクリアさがいまひとつなところ。このイヤホン単体で聴くと大きな不満とは感じないのだが、今回並べて比較した他のイヤホンがその点で優秀なので、相対的にちょっと残念な感じだった。
一方でAメロの荒い質感の描写は、ダイナミック型の強みか、ほどよくざらつかせながらも耳障りではなくて好感触。Bメロのクリアさもそれとの対比ということで言えば十分ではある。サビの頭の伸びも悪くはない。
「坂本真綾×ER-4S」の相性評価は4。これはなかなかよい。まずAメロのローファイの声の質感描写がしっかりとしている。荒いのだが荒いなりの柔らかさがあって耳障りも悪くない。そしてこのイヤホンは基本的にクリアなので、Bメロのそのクリアな声との対比も鮮やか。世界観がぱっと切り替わる感じが面白い。サビの頭の伸びやかさも十分。サビでは声の輪郭の明瞭さから、抑揚や声の揺らし方などの表現が鮮明に届いてくるのもポイント。シャープな成分や掠れも強調しすぎずにしかし十分に生かす。
「坂本真綾×XBA-30」の相性評価は5。これは期待通りだ。まずは声の艶やかさと厚み。これはぜひともほしいところだったわけだが、このイヤホンの持ち味と完全に一致している。真綾さんの声との相性は抜群だ。Aメロの荒い質感も柔らかに描き出して聴きやすいし、Bメロのクリアさとの対比もバッチリ。サビの伸びやかさも文句なしで、そこから続く柔らかくしなやかな抑揚がまた素晴らしい。語尾が消えるその瞬間までに耳が引きつけられる。
「坂本真綾×K3003」の相性評価は5。K3003は安定してよい。前述のポイントを全て満たしている上で、このイヤホンの特長はやはり、シャープな成分の生かし方のうまさ。特にサビの頭は何というかシュパッと伸びる。そして、声に対してはあまりしない表現な気もするが、声に鈴鳴り感がある。凛として心地よい金属感というか、まあとにかくよい声だ。
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