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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第49回】“破格”のバランス駆動ポタアン、ラトック「REX-KEB01F」− ケーブル改造も実践!

公開日 2013/06/07 14:18 高橋敦
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いよいよ試聴! ヘッドホンをバランス駆動で楽しむ

まず印象をざっくりとまとめると、全体的なクリアさがこの価格帯のポータブルアンプとしては優秀。また空間表現にも強みを見せる。ベースやドラムスなど中低音がしっかりと制動されて明確な音像を得ていることもポイントだ。

こんな感じで接続して試聴。なおこのアンプにはボリュームがないので音量はつないだ再生機器の側で調整する

なお電源は単4乾電池×3本。参考データとしてPanasonicの充電池EVOLTA HHR-4MWS使用時に約50時間の連続再生

上原ひろみさんのアグレッシプでプログレッシブなピアノトリオ曲「MOVE」。冒頭のピアノのみでの幕開けのその響きが生み出す空間性の豊かさは、このアンプの良さ=バランス駆動の良さが強く発揮されているところだ。まずS/Nに優れることで背景が静かになり、ピアノの響きの細かな成分がより生かされている。そして左右chの分離が確保されていることで、その細かな成分が綺麗に広がる。

次にベースとドラムスが入ってくると感じられるのが、これまたバランス駆動の強みでもある駆動力。ベースの音色はクリアで、アンサンブルに埋もれない抜けの良さも備えている。音色の太さも少し増すが、しかし音色を膨らませてしまうことはなく、タイトさを保っている。このあたりはアンプのいわゆる制動力というやつが発揮されているところだ。ドラムスはやや硬質でハードタッチ。こちらもタイトで抜けが良い。

シンバルの定位の良さや音像のブレの小ささも、バランス駆動の恩恵だろうか。いずれにしてもそれによって、アンサンブル全体の空間性、音場感が高まっている。

ポップスの相対性理論「マイハートハードピンチ」では、ボーカルやギターの空間処理の表現が優れていると感じた。この曲では、演奏した音を遅らせて重ねるディレイ、さらにそのディレイの音をステレオの左右に振るパンといったようなエフェクトとミックスの処理で空間性を表現している場面がある。このアンプを通すとそのエフェクト成分がよりクリアに届いてきて、ミュージシャンやエンジニアが意図したのであろう空間性が(たぶん)より正確に再現される印象だ。これも前述の「MOVE」冒頭の場合と同じく、バランス駆動の効果が大きいものと思われる。

というわけでこのREX-KEB01F。破格の安さであるにも関わらずバランス駆動の「らしさ」を十分に味わえる音だ。もちろんこの価格でまとめた製品なので絶対的に良い音とは言えない。しかし「話題のバランス駆動って実際どんなもんだ?」という興味を持っている方には、(価格的に)手軽にそれを実感できる製品としてチェックしてみてほしい。

ただし価格的には手軽でも、ハードルが高いのがやっぱりケーブル改造。というわけで、今回はその手順を詳しく載せたのでそちらを参照して、自力で改造できそうか否か、各自で判断してほしい。ちょっと無理そうだという方は…手持ちのヘッドホンに対応する改造済みケーブルの発売に期待だ!


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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