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ESS製DAC搭載などで音質がさらに進化

ヤマハAVアンプ“AVENTAGE”最上位「RX-A3030」速攻レビュー

公開日 2013/06/12 13:05 岩井喬
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ヤマハのAVアンプ上位クラスとなるAVENTAGEシリーズも代を重ね、この夏には第三世代目となるRX-A1030/2030/3030が登場する(関連ニュース)。本記事では最上位モデルである「RX-A3030」をレポートしていこう。

RX-A3030

今回のモデルチェンジで大きく変わったのがDAC部である。従来モデルまではバーブラウン製チップを用いていたが、シリーズ3機種ともにESS製チップへと刷新した。最上位機となるRX-A3030は、ESSの中でも上位クラスとなる“SABRE 32 Ultra”のES9016と、A1030/2030でも用いられている “SABRE Premium”クラス・ES9006の2基を搭載している。

さらに大きな進化といえるのがネットワーク、およびUSBメモリーからの192kHz/24bit・WAV&FLACファイル再生が可能となったことだ。加えてフロントHDMI入力はMHLにも対応したほか、HDMI入力以外のデジタル・アナログ音声入力にも対応したHDMIゾーン出力など機能性も増強されている。

8系統のHDMI入力のうち、フロントの1系統はMHLに対応する

基本的なスペックとしては従来モデルのA3020 を踏襲しており、最大11.2ch拡張に対応した左右対称設計フルディスクリート構成の150W×9chパワーアンプや、アンチレゾナンステクノロジーに基づいた5本目のインシュレーター、ダブルボトム構造+H型クロスフレームなど独自の制振技術を投入した高剛性シャーシを採用する。

本体を横から見たところ。5番目の脚も備えている

デジタル回路、アナログ回路、FLディスプレイ回路、それぞれ独立した3回路分離型パワーサプライやオーディオ入力部とDAC部の電位差を解消したD.O.P.G.などのテクノロジーも継承されている。

臨場感にかかわるポイントとしては初期反射音を制御し部屋の音響特性を改善させる独自の視聴環境最適化システム「YPAO-R.S.C.」を引き続き採用。マルチポイント計測、スピーカー角度測定など、より細やかな環境測定にも対応している。

またヤマハならではの立体音場再生テクノロジーの最高峰、シネマDSP HD3も搭載。さらに、7.1ch環境であっても9.1(9.2)ch相当の立体音場を実現することができるVPS(ヴァーチャル・プレゼンス・スピーカー)機能も強化され、新たに仮想のリアプレゼンススピーカーの創出にも対応する。4Kパススルー&アップスケーリング機能も有する映像処理回路には、3次元動き適応型I/P変換をはじめとしたヤマハオリジナルの映像処理技術を取り入れたという。

またサウンド面ではAirPlayにも対応。非圧縮および可逆圧縮ファイルの44.1kHzや48kHzのデジタル信号を最大96kHz/24bitまで拡張するハイレゾリューション・ミュージックエンハンサーも装備している。

3機種それぞれ異なる音質傾向 − 最上位モデルRX-A3030を徹底試聴!

ESS製DACを搭載したAVENTAGE第三世代の3ラインはそれぞれ音質チューニングの担当者が異なり、音質傾向にも、ESS製チップがもたらした変化とはまた異なる違いが感じられる。

A1030は溌剌とした爽快で押し出し良いサウンドであり、A2030は特性感の良い落ち着きと厚みのあるバランス良いサウンドを持っている。そして最上位となる本機は、S/Nや解像感の高さ、濃密でたくましい音像の厚み、雄大な空間表現力を持っており、数段上をいく上質なサウンドを実現している。

まずはSACDプレーヤーをアナログ接続して、基本的なステレオ再生を試したところ、リッチでありながら制動を利かせた絶妙なバランスのオーケストラが展開。奥行きも程よく一つ一つの楽器の分解能も高い。弦楽器の質感は流麗なタッチで非常に抑揚豊かだ。ジャズピアノも伸びやかで密度も高く、ウッドベースはハネ良い弾力感を持つ。肉付き良いボーカルは口元の自然な艶とハリを感じさせ、ウェットに空間へ浮かんでくる。とても音楽的で聴きやすいサウンド傾向だ。

続いて、今回初採用となった192kHz/24bitのファイル再生機能を、USBメモリーとネットワーク経由で試してみた。楽器の描写は非常にしなやかで厚みも自然に感じさせ、ハイレゾならではの解像度の高さとともにバランスに優れたサウンドを聴かせてくれる。音場は奥行き深く立体的で、定位の前後感まで的確に把握できる。伸びやかで非常に有機的な音色であり、音場の空気感を含めてリアリティの高さを実感した。USBメモリーの鮮明で高S/Nなサウンドもハイレゾの解像度と相まって好ましい傾向だ。

最後に、5.1ch環境でのサラウンド再生を試してみた。シネマDSP HD3のムービー・スタンダードモードを選択し、『スカイ・クロラ』の空戦シーンを再生。BGMがふわりと浮きあがり、SEとの分離も見事だ。縦横無尽に移動する戦闘機の動きもスムーズに追随し、エンジン音も締まりがある。リアルな立体感で後ろからの移動も実在感がある。台詞も厚みを持たせながら輪郭はキレもあり、鮮明に定位。BGMの厚み良くしなやかなストリングスと歯切れ良いベース音の両立も理想的だ。

ESS製DACのおかげでこれまで以上に空間情報を濃密に再現してくれる一方、微小なディティールも的確にトレースして、立体的に描写ができるようになった印象を持つ。新DACの採用でより完成度が高まったRX-A3030は、一際深みのある表情豊かなサウンドを多角的に楽しめる一台といえるだろう。


◆岩井喬 プロフィール
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。

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