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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第57回】USB-DAC/ヘッドホンアンプの基礎知識ナビ<回路/パーツ編>

公開日 2013/08/09 18:52 高橋敦
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<パーツ>

では最後に、回路と共に音質を左右する主要パーツについて見ていこう。

●DACチップ

DACチップは言うまでもなくDACの中核パーツ。音質に大きな影響がある。代表的なブランドとして以下のようなところが挙げられる。

・Burr Brown(バーブラウン。現在はTI傘下のブランド)
・Texas Instruments(TI、テキサス・インストゥルメンツ)
・Wolfson(ウォルフソン)
・Cirrus Logic(シーラスロジック)
・Analog Devices(アナログ・デバイセス)
・旭化成エレクトロニクス
・ESS Technology(イーエスエス)

どのブランドが音が良いとは一概には言えない。例えばある同じブランドのDAC搭載製品でも製品の世代が変わると、搭載されているDACチップのブランドが変わっていたりする。つまりそのDAC製品の開発時期やそのDAC製品で狙う音次第で、それに適したDACチップは変わるのだ。喩えて言うならば季節の食材の「いまが旬」とか「この料理には三陸で水揚げされたものが合う」みたいな感じに近いかもしれない。

そういうわけでどれが良いとは断言できないのだが、近年に採用例が目立ってきていて勢いを感じる「旬」のブランドということで言えばESSだ。メジャーなところでは(ちょっと本筋から外れるが)ヤマハやパイオニアのAVアンプ最新モデルのDAC部分に採用されたりもしている。

iBasso Audio D zero-SE。ESS Technology ES9023搭載

AudioQuest Dragonfly。同じくESS Technology ES9023搭載

DAC搭載ヘッドホンアンプなら、ハイエンドで言うとResonessence LabsのINVICTAやES9018、手頃なところではiBasso AudioのD zero-SEやAudioQuestのDragonflyはES9023搭載だ。実際どれも音が良い。またハイレゾ対応ハイエンドポータブルプレーヤーでもES9018の採用が目立つ。


●USB制御チップ

PCとUSB-DACの間のデータ転送を制御するUSBチップは、音質にも影響はすると思うがそれ以前の問題として、動作の安定性に大きく関わるなど、これも重要なパーツだ。DACチップと一体化されている場合もある。

こちらも様々なブランドがあるのだが、ここでは注目のブランドをひとつだけ挙げておこう。


●XMOS

英国のメーカーによるPLD(プログラマブルロジックデバイス)。PLDは最初からひとつの機能に落とし込んで開発されたチップではなく、ユーザー(このチップを購入して製品に組み込むブランド)がある程度自由にプログラムを行い、用途に合わせてに最適化させることができる汎用性の高いチップだ。特定の製品のために専用のチップを開発し生産するには膨大なコストが必要になるが、PLDであればそれほど大規模なことをせずに、製品に最適化した機能や性能を得られる。

iBasso Audio D55。XMOSの制御チップを採用

JAVS X-DDCplusもXMOSを採用

そのPLDであるところのXMOSがUSBオーディオ用としても高い適正を発揮して、採用例が増えているようだ。今後も注目しておきたい。

またPLDの一種であるFPGA(field-programmable gate array)にも大きな採用例がある。RMEのBabysace・Firefaceシリーズだ。RMEは自社で作りに作り込んだFPGAによって音質と安定性を極限まで磨き上げている。

RME Babyface。自社でプログラミングを行ったFPGAを採用


●オペアンプの定番と最近の流行

電気信号を増幅する素子であるオペアンプは、アンプ回路の心臓部だ。このパーツの選択ももちろん音質に大きく影響する。また一部の製品では基板上のオペアンプがソケット式で差し替え可能となっており、互換性のあるオペアンプであれば差し替えて音質の変化を楽しめる。

代表的なブランドは、

・Burr Brown(バーブラウン。後述のTIの参加のブランド)
・Texas Instruments(TI、テキサス・インストゥルメンツ)
・National Semiconductor(ナショナル・セミコンダクター)
・新日本無線

といったあたり。こちらもDACチップと同じくどれが良いと一概には言えないのだが、近年の注目ブランドをひとつ挙げるとするならば新日本無線だ。

新日本無線はオーディオ専用に開発した「MUSES」シリーズというオペアンプを展開している。オペアンプも含めて半導体というのは普通、安定して動作して測定によって正確な特性数値が出れば良しということで開発されると思うのだがMUSESは、「徹底的に試聴を繰り返し、人の感性に響く音を追求した最高峰の半導体デバイス」を謳っている。

MUSESの初代にしてハイエンド、NJM5720

低価格化を実現したMUSES 8920


ASUS Xonar Essence One MUSES Editionはオペアンプ交換可能なベースモデルのオペアンプをあらかじめMUSESに換装したバージョン

Carot One ERNESTOLO「La Serie Limitata」。こちらもベースモデルのオペアンプをMUSESに換装したモデル

●その他の電子部品

DACやアンプの回路にはほかにもたくさんの電子部品が使われている。ボリュームに用いられるポット(可変抵抗器)や、各所に用いられるコンデンサーや抵抗、端子、そして配線材や基板そのものもそうだ。それらもやはり、トータルでの音質に影響を与える。そういった部分のセレクトにまでこだわった製品は、その点をアピールポイントとして明記している場合が多い。

例えばポットだとALPS社、コンデンサーだとWIMA社、端子だとノイトリック社などの製品は高評価の定番製品であり、採用例が多い。


…というわけで、前回・今回と併せ、本連載にしては珍しい真面目なお勉強回となった。Phile-web読者の方であればどれもおおよそはご存知のところだったとは思うが、情報を頭の中で改めて整理するお手伝いになれば幸いだ。


高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。


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