エソテリック×2つの注目スピーカーで音楽を高品位に楽しめるシステムを組む！

＜音質レポート1＞
ESOTERIC×TANNOYの組み合わせを検証

硬派なトラッド調のサウンドである。男子のファッションにたとえれば、ロンドンのサヴィルロウで仕立てたスーツといったところか。昨今流行のイタリアのクラシコ調スーツのような柔らかさとは正反対の硬い着心地ではあるのだが、身体になじむにしたがって、えもいわれぬ心地よさが感じられてくるのと同様、耳になじむにしたがって、ワン＆オンリー的な聴き味になる。かつてはこの質感を「いぶし銀のような」などと評したものだが、それよりははるかにワイドレンジで解像度も高い。

この高性能を支えているのは、プリッと引き締まったコントローラブルな低音だ。昔のタンノイの家具調のスピーカーの音は非常に魅力的であったが、時として低音が消失したり膨張したりするので、オーナーは低音の制御に腐心したものだが、本機を手に入れたリスナーはそのような手間をかけることなく、タンノイならではのカッチリとしたサウンドを楽しめる。ピアノの青味がかった透明感のある質感などは、タンノイらしさの最たるものであろう。音像定位の圧倒的な良さもタンノイらしい。

■音の背後にある気配さえ伝えてくれる

ジャズは爽快でノリが良く、上品で、しかもエネルギッシュ。質感や音像表現は古典的なのだが、音場の聴感上のSN比の高さや、音像の解像度の高さは現代最先端だ。ピアノトリオからビッグバンドまでオールマイティに鳴らすことが可能だが、ブラス入りのカルテットやクインテットのようなモダンジャズの王道を行くような編成との相性がいい。

ヴォーカルは、かつてのスピーカーが持っていたのと同じハリのある表現が印象的だ。これに比べると現代のスピーカーの大半は声の表現がヤワで、実体感に乏しい。この実存リアリティが清潔な音場に浮かび上がるのは、オーディオ的な快感の最たるものの一つだ。

クラシックは最近エソテリックがリマスターしたカラヤン＆ベルリン・フィルによるバルトークの「弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽」を聴いたのだが、テクニカル的には完璧であった。この曲は奏者が2つのグループに分かれてステージの左右で演奏するのだが、ステレオイメージの正確さは抜群である。だが、それだけではない。カラヤンのバルトークに対する尊敬の念や、東西冷戦下のベルリンの緊張感が伝わってくるのだ。こういう音の背後にある気配を伝えられるのが、真の高級スピーカーではないだろうか。