<山本敦のAV進化論>第4回
アプリも“One Sony”へ − ソニー「SongPal」開発者インタビュー
「ソニーの機器を複数所有されているユーザーに、この製品ではこのアプリという使い分けを強いて、異なる操作方法を覚えていただくという負担をかけたくないという思いがあった。様々な対応機器と組み合わせた時の使い勝手を共通化しながら、ユーザビリティを向上させることがSongPalの目標だった」(瓜谷氏)
前述したように、SongPalはたんなるリモコンアプリではなく、ペアリングされた機器の“ファーストディスプレイ”であるという考え方がアプリの基本的なコンセプトだ。例えばSRS-X9のように本体にディスプレイを持たない機器と組み合わせた場合、スマートフォン自体がディスプレイの機能を担うことで、サウンド設定などがより手軽に操作できる。
今回の取材で実際に「MAP-S1」との組み合わせでSongPalを試す機会を得たが、その効果は確かに大きいと実感させられた。1〜2行ほどのテキスト情報しか表示できない本体のディスプレイだけでは、ネットワーク経由でNASに保存した楽曲を再生するだけでもひどく手間がかかるが、SongPalを使えばその問題が立ちどころに解決する。
田久氏は「オーディオ機器の筐体をデザインする際、ディスプレイにどれだけの面積を割けるかは悩ましい課題。そこでSRS-X9ではスマートフォンに役割を持たせることで、できることの幅を広げた」と説明を加える。「モバイルアプリの開発自体には2〜3年前から取り組んできたが、ここまで割り切った“スマホがないと操作しづらい製品”を提案したのは初めてだと思う」。
これまでは実験的な意味合いも含め、様々な機能を個別のアプリに持たせてきたが、オーディオ製品のネットワーク機能が洗練されてきたことで、アプリを利用するユーザーが増えてきた。ユーザーの声に耳を傾けることで、どの機能が必要か、あるいは不要なのかが明確になる。スマートフォンの普及が拡大したこともあって、アプリでAV機器を操作する感覚が一般化してきた。個別に存在してきたアプリの機能が今回、自然なかたちでSongPalに集約されたと捉えられる。
■ハードウェアとアプリを一体で開発できる強み
SongPalアプリの設計と開発は、外部委託することなく、すべて一貫してソニー社内のスタッフが行った。SongPalの開発チームのプロジェクトリーダーが湯浅氏であり、アプリの具体的な仕様や企画を取りまとめる役割を瓜谷氏と田久氏が担う。