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<山本敦のAV進化論>第4回

アプリも“One Sony”へ − ソニー「SongPal」開発者インタビュー

公開日 2014/04/16 11:52 山本 敦
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湯浅氏が所属するネットワークアプリケーション設計部門はソニーのモバイルアプリ開発を中心に担当している部門だが、実際のアプリ開発は各ハードウェアの担当者とアプリの企画担当者がチームを組んで進める。SongPalの場合はSRS-X9の商品企画担当である岡氏をはじめ、対応商品ごとに企画担当者と設計担当者の代表が集まって横断的なチームをつくり、アプリの細かな仕様を練り上げた。このようにハードの仕様を決定する段階から“アプリ込み”でのつくり込みが行えるのはソニーならではだ。

ハードとソフトの開発を同時に展開していくことで生まれたメリットも大きかったと瓜谷氏は振り返る。「このアプリの機能を他の商品にも応用できないか、ハード側で共有できる可能性が見渡せるようになってきた。アプリ自体の設計が効率化できるだけでなく、ソニー社内でのノウハウの循環が生まれている。今ではアプリの経験値をハード側にフィードバックしていく、自然な流れがつくられている」(湯浅氏)という。


■これからはオーディオ製品を買う価値がアプリの出来で決まる?

今回の取材を通じて、SongPalやTV SideViewなどのソニーのアプリが目指す方向性が、まさしく“One Sony”に向けた同社の取り組みの一環であることを実感した。これまで様々なアプリに散らばっていた機能やサービスを、SongPalのような基幹アプリへと一元化していくことで、新しい魅力的な価値がそこに生まれてくる可能性が秘められている。


取材のようす
例えば連載の第1回目でレポートした「TV SideView」アプリは、アップデートによってプレーヤー機能を追加したことで、スマートフォンにBDレコーダーの機能を取り込むことに成功した。スマートフォンを軸として様々なAV機器をつなげていくことで、新しい付加価値を作り出した好例だと言えるだろう。今後SongPalが進化していけば、例えば複数のワイヤレススピーカーとスマートフォンを組み合わせてサラウンド再生が楽しめるようにもなるかもしれない。

湯浅氏は、アプリの開発によって培われたノウハウがソニーの製品全体にうまく循環しはじめたと語る。「SongPal、TV SideViewなど各アプリの機能とサービスは全社で共有されている。SongPalの開発資産をTV SideViewのチームとシェアできているし、スマートフォンのチームとの連携も取れている。ひとつひとつの取り組みがソニーを結束させて、大きな力になると思っている」(湯浅氏)

SongPalアプリの今後の展開を瓜谷氏に訊ねた。「スタートしたばかりのアプリだが、まだまだ完成度が高められると思っている。今後ソニーの対応機器が増えてくれば、アプリのダウンロード数も増えてくるはず。その時にはソニーから情報を発信するためのプラットフォームにもなれると考えている」(瓜谷氏)

瓜谷氏はまた、SongPalを今後、ハードを購入したユーザーが必ず使いたくなるようなアプリにしたいとも語る。今後、リモコンがスマートフォンに置き換わっていくと、アプリはユーザーにとって最初のタッチポイントになる。ユーザーインターフェースのデザイン、シンプルでわかりやすいメニュー構造、スムーズな操作性など、アプリの出来映え次第でオーディオ製品も購後の満足度に大きな差が出てくるはずだ。

SongPalはやや大きめのアイコンなど、デザインの面で荒削りに感じられる部分もあるが、サクサクとしたUIのレスポンスや最適なメニュー配置など、ユーザーの使い勝手をしっかり考えた操作性に好感が持てた。自宅に対応機器が増えていったとしても、アプリのメインメニューは、常にハードとアプリが1対1になる、シンプルな構成が保たれるところも使いやすいと感じる。今後アプリの完成度に磨きがかかり、ユーザー数も増えていけば、SongPalがソニー製品の新しいユーザーを呼び込むきっかけになるかもしれない。

今後オーディオ機器とスマートデバイスの関係はさらに深まるはずで、各メーカーはハードとアプリの両輪で魅力的な製品やサービスを開発できる体制を強化することが求められる。ソニーのハードの進化を評価する際、SongPalをはじめとしたアプリの完成度にも注目していく必要がある。


(山本 敦)

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